専門家(士業)コラム

ビジネスサミットOnline » 専門家(士業)コラム » 副業・兼業者の労働時間管理 現行の「通算ルール」が見直しの方向へ

労務
副業・兼業者の労働時間管理 現行の「通算ルール」が見直しの方向へ

丸山 博美 (HM人事労務コンサルティング) 2019-08-08

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
副業・兼業者の「労働時間通算ルール」とは?

現状、副業・兼業者の労働時間通算ルールとしてどのような方法が適用されているのでしょうか? ポイントをまとめておきましょう。

◎ 事業場(事業者)が異なっても労働時間関連の諸規定は通算して適用(労働基準法第38条) 労働時間を通算した結果、労働基準法第 32条又は第40条に定める法定労働時間を超えて労働させる場合には、使用者は、自社で発生した法定外労働時間について、

●同法第 36 条に定める時間外及び休日の労働に関する協定(いわゆる 36(サブロク)協定)を締結
●同法第 37 条に定める割増賃金を支払う

◎ 労働基準法上の義務を負うのは、当該労働者を使用することにより、法定労働時間を超えて当該労働者を労働させるに至った使用者
= 通算により法定労働時間を超えることとなる所定労働時間を定めた労働契約を時間的に後から締結した使用者
※ 通算した所定労働時間が既に法定労働時間に達していることを知りながら労働時間を延長するときは、先に契約を結んでいた使用者も含め、延長させた各使用者

現行の副業・兼業者の労働時間通算ルールについては、以下の記事で解説しています。

参考:SHARES LAB「副業・兼業の解禁と併せて検討すべき、副業・兼業者を雇い入れる際の勤怠管理」

副業・兼業者の労働時間管理に関わる今後の方向性

上記の現行ルールを踏まえ、副業・兼業者の労働時間通算ルールの運用について、事業者には下記の方針が示される見通しです。以下、第8回「副業・兼業の場合の労働時間管理の在り方に関する検討会」の報告書より抜粋します。 

労働者の自己申告を前提に、通算して管理することが容易となる方法を設ける

(例:日々ではなく、月単位などの長い期間で、副業・兼業の上限時間を設定し、各事業主の下での労働時間をあらかじめ設定した時間内で収めること。)
※ 実務的には、各企業において、自社と副業・兼業先の労働時間を通算した上限時間を就業規則に盛り込むなどの対応をとることが望ましい

労働者自身が月の総労働時間をカウントし、上限時間に近くなったときに各事業主に申告すること

出典:厚生労働省「第8回「副業・兼業の場合の労働時間管理の在り方に関する検討会」資料」

上記は主に労働時間の上限規制への対応に関わる記述となります。同報告書では、その他「健康確保措置」や「割増賃金支払」といった事業者責任に関わる方向性についても言及しているので、ご一読いただくことをお勧めします。 

求められるのは「副業・兼業者自身の自己管理」と「事業者としての適切な対応」

「副業・兼業の場合の労働時間管理の在り方に関する検討会」では、既存の通算ルールを基本としながらも、
・ 事業者ごとに運用しやすい柔軟な制度設計
・ 副業・兼業に従事する労働者自身の自己管理の徹底

を主軸とし、より実効性のあるルール作りについての検討が進められています。その上では、現行の通算ルールの厳格な適用は趣旨に合っているものとは言い難く、必然的に新たな形での制度実現が目指されていくと予想されます。今後の最終報告、労働政策審議会での審議の行方に注目が集まります。 

まとめ

副業・兼業者の労働時間管理については、現場において対応に頭を悩ませる事業者様も多いのではないでしょうか?法の定めを重視すればきっちりとやっていきたいところですが、複雑な管理による業務負担、労働者のプライバシー問題等、副業・兼業への対応上の課題を挙げればきりがありません。
また、ルールの厳格な運用にこだわり過ぎるあまり、副業・兼業の非雇用化が進み、かえって労働法制の保護が及ばない事態となっては本末転倒でしょう。現場においては、報告書に掲げられた今後の見通しを踏まえた対応を取りつつ、正式な法整備を待つことになりそうです。

 
 HM人事労務コンサルティング
 丸山 博美 (社会保険労務士)