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労務
「育児時間」制度とは?会社として知っておくべきポイントを解説

丸山 博美 (HM人事労務コンサルティング) 2018-09-13

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「育児時間」とは?

「育児時間」に関する定めは、労働基準法第67条に下記の通り記載があります。

‘(育児時間)
1.生後満1年に達しない生児を育てる女性は、第34条の休憩時間のほか、1日2回各々少なくとも 30分、その生児を育てるための時間を請求することができる。
2.使用者は、前項の育児時間中は、その女性を使用してはならない。’



「育児時間」を取得できるのは、「1歳未満の子ども(実子・養子問わず)を育てる女性労働者」です。よく「子育て中の男性は対象外なのか?」というご質問を受けますが、育児時間の趣旨が本来、授乳や母体保護にあったため、男性労働者は対象外となっています。対象となる女性労働者から請求されたら、使用者はこれを拒むことは出来ません。ただし、対象者がいても、本人から特段請求がなければ、取得させずとも法違反に問われることはありません。

「育児時間」は「1日2回」「少なくとも30分ずつ」の取得が可能とされていますが、これはフルタイム(8時間)勤務を想定した場合の設定です。仮にパートなどで1日の勤務時間が4時間以内(フルタイム勤務の半分以下)の労働者については、「1日30分」の育児時間を与えれば良いとされています。

実は多様な、「育児時間」の使い方

「育児時間」は、育児休暇や子の看護休暇と異なり、実務において申請を受けるケースはさほど多くないかもしれません。しかしながら、この制度を正しく理解すれば、実際には様々な使い方が想定でき、女性労働者の両立支援に大いに役立てることのできる制度であることが分かります。

≪「育児時間」活用事例≫
●始業と終業の時間に30分ずつ接続させ、「30分遅れの出社・30分早くの退社」を可能にする
●始業または終業の時間に1時間分をまとめて接続させ、「1時間遅れの出社」または「1時間早くの退社」を可能にする
●事後申請ができる場合、朝の授乳や保育園の登園などで遅刻してしまった時間に育児時間をあてる

このように、育児時間を柔軟に活用することによって、育児と仕事の両立はぐんと実現しやすくなります。職場に対象者がいれば、育児時間制度に関するアナウンスをしてあげると良いでしょう。もちろん、使用者側は請求を受けたら拒むことは出来ず、育児時間の取得を認めなければなりませんから、ここに挙げた育児時間の使い方について十分に理解・想定しておきましょう。

「育児時間」は就業規則にどう規定する?

ところで、御社の就業規則には、「育児時間」に関わる規定があるでしょうか?就業規則の絶対的記載事項には「休憩時間に関する事項」が定められており、これに準ずる「育児時間」についても本来は規定されているべきです。中小企業を中心に、育児時間に関わる記載のない就業規則を散見しますが、女性従業員が在籍する(もしくは今後在籍する可能性のある)会社においては定めておいた方が安心といえましょう。

例えば、育児時間を無給とするのか有給とするのか、申請手順はどうするのか等は、会社ごとのルールに委ねられています。申請を受けてから慌てて対応するのでは混乱を招きますから、事前にしっかりと決めておきましょう。

ちなみに、就業規則に「育児時間」の記載がないからといって、取得させないという扱いは違法であり、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金に処されます。たとえ就業規則に定めがなくとも、対象労働者から申請を受けたら必ず取得させなければなりません。

まとめ

今号でご紹介した「育児時間」制度の対象者は本来育児休業中であることが多いため、これまで育児時間の取得実績のない会社も少なくないかもしれません。しかしながら、一向に解決しない保育園待機児童問題を背景に、1歳のお誕生日を待たず、保育園に入園できるタイミングで職場復帰する女性(つまり、育児時間制度の対象者)は増加の一途を辿ります。こうした状況を踏まえ、会社は労働者からいつ育児時間制度の申請を受けても良い様に、制度運用の体制を整えておくことが肝心であるといえます。


 HM人事労務コンサルティング
 丸山 博美 (社会保険労務士)