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公正証書活用講座 ~契約トラブルを避けるために公正証書でできること~

公正証書の意義とその活用法

松下 愛 (行政書士) 2018-06-27

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公正証書とは

公正証書とは、公証人法に基づき公証人が作成する公文書です。公証人は、裁判官・検察官などを長年務めた法律の専門家で、法務大臣によって任命された準公務員です。
公正証書の目的は、私的法律関係の明確化・安定化を図り、国民の私的な法律紛争を未然に防ぐことにあります。裁判所が事後救済という役割を担っているのに対し、公正人は事前に紛争を予防するという予防司法の役割を担っているといえます。
公正証書の原本は1部のみ作成され、公証役場で保管されます。原本と同一の内容が記載されたものを謄本といい、当事者にはこの謄本が交付されます

 

公正証書を作成する意義

公正証書には、次のような効力があります。

1.証明力
公正証書は法律に精通した公証人が記載内容について法令に違反していないかを確かめ、また作成当事者の身元についても印鑑証明書などで確認してから作成しますので、その内容が裁判において無効とされる可能性はほとんどありません。遺言公正証書においては家庭裁判所の検認手続きが不要とされます(自筆遺言証書の場合は検認が必要です)。

2.安全性
公正証書の原本は、公証役場において20年間保管されます。そのため、万が一交付された謄本が紛失しても再交付を受けることが可能です。また第三者による改ざんの心配もありません。

3.執行力
さらに公正証書には強制執行認諾条項を付けることができます。公正証書に「〇〇は、本証書記載の金銭債務を履行しないときは、直ちに強制執行に服する旨陳述した。」という一文を入れることにより金銭債務の強制執行の申し立てが直ちに行えるのです。
本来強制執行をするためには、裁判所に訴えを提起し、勝訴しなければなりません。裁判となると、相応の時間や費用がかかりますし、精神的な負担も小さくありません。また訴訟の係属中に相手が破産してしまう可能性もあります。 公正証書の強制執行認諾条項はこのようなリスクを回避するのに大変有効な手段といえます。

 

公正証書におすすめの契約書

公正証書で作成できる文書には遺言、任意後見契約書、売買契約書、金銭消費貸借契約書、賃貸借契約書、離婚協議書等多々ありますが、経営者の皆様に特にご紹介したいのは、売買契約の公正証書です。

売買契約は、売主がある財産を買主に引渡すことを約束し、買主がその代金の支払いを約束することで成立する契約ですが、公正証書にすることにより、先にご紹介した執行力を持たせることができます。つまり何等かの理由により買主が代金を支払わない場合は強制執行により代金を回収できるのです。売買以外にも、金銭消費貸借、営業譲渡・事業譲渡、特許権譲渡、請負・委任・業務委託など代金の支払いを必要とする様々な契約は公正証書にすることで同じく執行力をもたせることができます。特に代金の支払いが分割払いになっている場合や長期契約の場合には有意義と言えるでしょう。

また不動産賃貸借契約で契約期間を更新したくない場合にも、公正証書で契約書を作成しておくと安心です。契約を定期賃貸借とし、契約書に更新排除特約を付けることで解約のトラブルを避けることができます。更新排除特約は口頭では無効となりますので公正証書で作成することをお勧めします。なお事業用の定期借地契約は必ず公正証書によってしなければなりません。

一方公正証書は公証人がその内容が法令に違反していないか確認したうえで作成するものですから、法令に反する内容の文書は当然公正証書にすることはできません。また未成年者や成年被後見人による契約など、取り消すことができる内容のものはやはり公正証書にすることはできません。愛人契約など公序良俗に反する文書も公正証書にはできません。

 

まとめ

業務を進めるにあたり契約書を作成する機会は多々あると思いますが、私文書である契約書を公正証書にすることで、契約内容を明確にし、合法性を確認し、またトラブルを回避することが可能となります。
このように様々なメリットのある公正証書を、日々のビジネスの中で上手に取り入れ活用していただければと思います。


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 行政書士松下あい事務所
 松下 愛 (行政書士)