役員を引退するときに税務上でリスクなこと
田中 雅明 (田中雅明税理士事務所) 2017-12-13
退職金は毎月受け取る給料(役員報酬)と違い、かなり高額になります。また、「退職金で老後の生活等を考えるべき」となっているため、税務上の課税が優遇されています。つまり、給料よりも退職金の方が税金が安いのです。
POINT:退職金は税務上の課税が優遇され、給料よりも税金が安い
ここで問題になるのは、退職金の金額設定です。役員報酬と同じで退職金も、自分で決めることができないのです。
さらに高い金額を支給してしまうと、税務調査で「この退職金は高いです ! 」と言われてしまいます。では、役員退職金はどのように決めればいいのでしょうか。次の項目で確認していきましょう。
さてここでまず、退職金の金額設定に関して知っていただきたいことがあります。役員の退職金は、通常このように計算されます。
適正な退職金 = (1)在任年数×(2)功績倍率×(3)最終報酬月額
この式の(1)、(2)、(3)を1つずつ順番に解説します。
「(1)在任年数」は社長を何年したかです。
長ければ長いほど、会社に貢献したということで、退職金の額は増えることになります。もちろんこの期間は操作できるものではありません。
「(2)功績倍率」とは、役員任期中の会社への貢献の度合いを、ある一定の倍率としたものです。
特に決まった倍率が定められている訳では無く、その人の功績の内容に左右されます。(任期中に職位が変更になった場合等は各職位での功績倍率の平均をとる場合もございます。)
一般的な各役員の功績倍率は下記で説明します。
「(3)最終報酬月額」は引退するときの最後の月額報酬です。
以下、功績倍率の目安です。
※功績倍率は各企業でそれぞれの状況から顧問税理士の方などと相談して決定することとなります。
例えば、社長を20年間してきて、功績倍率を3、最終月額報酬が100万円であれば、退職金は6000万円ぐらいまで出しても、税務調査では文句を言われないだろうというわけです。
POINT:上記計算式で役員退職金を設定すれば、税務調査で指摘されない
まじめな社長程、退職金で驚くことがある
ここで真面目な社長ほど、退職金で驚くことがあります。真面目な社長は、会社のためにと、自分の報酬を抑えている場合が多いのです。もちろん会社のことを考えれば、それはベストなのかもしれませんが、そのまま引退してしまうと、最終報酬月額が低いので、退職金がそれほど支給できない結果になりかねません。これは、会社の経営が厳しくなったときに、役員報酬を無理やり下げる場合も同じリスクがあるのです。
いきなり利益がでても、赤字に陥っても、役員報酬を変動させるのは、常にリスクがあるということは知っておいてほしい事実なのです。