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​コロナ後も見据えマスクづくりに注力

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コロナ禍で求められるニューノーマル。マスク着用はその代表的なものであるが、国内でコロナ感染が確認された直後、マスクが品切れとなったことがある。国産メーカーは慌てて対応を始めるなか、自社工場をフル稼働させてマスク製造にあたったアパレルメーカーがパレ・フタバ(広島県福山市)だ。この未曾有の危機に、若きアトツギはどのように立ち回ったのか。現在、副社長を務める藤井篤彦氏に、話をうかがった。

祖父の願いで入社
75年前にニットメーカーとして創業し、現在は婦人向けストレッチパンツの製造・卸を手掛けるパレ・フタバ。デザイン企画から製造・縫製・仕上げまで一貫して行っているのが特徴だ。
現在、取締役副社長を務める藤井篤彦氏が入社したのは2016年。当時、藤井氏は東京の大手日用品メーカーでブランドマネジメントを手掛けていた。
「ある日、会長である祖父から連絡が来たのです。祖父とは子どもの頃から仲が良かったのですが、何かお願いをされたことは一度もありませんでした。そんな祖父のたっての願いということだったので、それまでは継ぐつもりがなかったのですが、家業参画を決意しました」。
この頃、同社は繊維製品の製造・卸売という新規事業を立ち上げ、事業を任せられる人材を探していたのだという。藤井氏は、事業所長のような役回りとして登用された。まず藤井氏が取りかかったのは、会社の数字に目を通すことだった。
「かなり苦しい状況でした。今すぐ何とかしなければならないと強い危機感を持ちました」。
東京ではCM制作などにも携わっていた藤井氏は、プロモーションのノウハウは持っていたものの、自分たちで撮影をしたり、販促物を作ったり、手作りでの宣伝に努めた。
さらに藤井氏はオリジナルボトムスに特化した自社ブランド「TAKUMIBA」を創設。さらなる商品展開を進めていこうと考えていた。そんな矢先に襲ってきたのが、新型コロナウィルスであった。
 
 
マスク不足を解消する新事業
国内初の感染者が報告されたのは、20年1月中旬頃。その直後から、マスク不足が問題となっていたのは記憶に新しい。
「そんな時に、スタッフから提案があったのです。『じゃあ、うちでつくりませんか?』と。驚きました」。
藤井氏が驚いたのも無理はない。なんと、そのスタッフはすでにマスクを自作していたのである。着用してみたところ、圧倒的に付け心地が良かった。その秘密は、本業であるストレッチパンツで使っている伸縮素材を採用したこと。この素材は「トリコット」と呼ばれ、隙間なく顔にフィットするのが特徴。肌触りもなめらかで、耳が痛くなりにくい。さらに洗っても繰り返し使えるもので、藤井氏は「従来の不織布マスクに引けを取らない」と確信した。
こうして、同社がマスク販売に乗り出したのが、20年3月。まだ緊急事態宣言が発出される前のことである。スピーディに開発・生産のできる一貫工房の強みが生かされた瞬間だった。
卸売の同社は、エンドユーザーに直接売る経験がなかった。そこで、ネット上に店舗を立ち上げ、SNSなどで宣伝。
これらは藤井氏が前面に立って行われた。最初に作った100セットはわずか15分で売り切れ。その勢いは衰えず、これまで250万枚を売り上げた。
「以前から、スタッフの提案で商品化したものはいくつもあります。良くも悪くも、雑談で新商品のアイデアが生まれることが、少なくないのです」。
昨年11月には世界初となるマスクに特化したブランド「We’ll(ウィール)」を立ち上げ、マスクだけでなく、ケースやマスク用の除菌スプレーなどを展開。マスク市場に攻勢をかけている。
 
 
次世代の社会課題に取り組む
アパレル業界がマスク製造に乗り出すというのは、今や目新しいことではない。パレ・フタバは間違いなくそのうちのトップランナーだが、現在は多くのアパレルメーカーがマスク事業から手を引いているという。
「業界の共通認識として、マスク製造はすでに下火です。だぶついた在庫の処分に困っている、という話をよく聞きます」。
こう語る藤井氏は、現在も、そしてアフターコロナもマスクに力を入れていきたいという。その心底にあるのは、社会的な課題への取り組みだ。
「これだけモノにあふれた時代ですから、これからのモノづくりは、〝今〞だけでなく、次の世代にとってもいいモノでなければならないと思っています」。
マスク着用率の向上がもたらしたものは、コロナ感染対策だけではない。厚生労働省によれば、20年の風邪の患者は過去5年平均と比べ65%減。インフルエンザ患者にいたっては99%の減少となった。これらは医療保険料の約945億円の削減につながったとされている。このデータをもとに、藤井氏はマスクの有用性はコロナ後も決して変わらないと、同社製マスクのさらなる進化を目指す。
「現在は大手企業と共同で、夏でも快適に過ごせるマスクの開発に取り組んでいます。もうすぐリリースできるはずです」。
現在、同社のストレッチパンツとマスクの事業は、ほとんど藤井氏が中心となって進められており、すでに後継者としての資格は十分。「この二つの事業を二本柱として、しっかりと成長させていきたい」と語る藤井氏の今後に、注目が集まる。 
 
パレ・フタバ株式会社 取締役副社長 藤井篤彦氏
 
Company Profile
パレ・フタバ株式会社
所在地 広島県福山市卸町1-13(福山事業所)
TEL 084-983-2750
設立 1981年
資本金 1083万円
売上高 12億円
従業員数45名
http://www.palais-futaba.com/
 
Profile 
1986年、兵庫県生まれ。神戸大学卒業後、大手日用品メーカーで営業やマーケティングを担当した後、2016年に家業であるパレ・フタバ株式会社に入社。婦人向けパンツ作りの一方、20年よりマスク製造・販売に参入。

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