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下請け脱却を目指し自社ブランドを開発する

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​オリジナル製品の開発は、多くの下請け製造業にとって成長戦略になりうるものだ。しかしハードルは高い。消費者への販路を持たず、知名度も低い、開発資金もなければ新事業に人員を割く余裕もない……。しかし、家具製造業であえてこの難しい挑戦をしているのが細田真之介氏。ポイントは、時代のニーズを捉えること。父親の反対を押し切って始めた新事業が、徐々に成果をあげつつある。

自社ブランド設立で現状打破
細田氏の実家は、1967年に祖父が創業した有限会社細田木工所。現在は父が受け継いでおり、住宅のリフォームやオーダーメイド家具を手がける小さなメーカーである。高校時代から家業を手伝っていた細田氏は、大学卒業後の2010年、後継者候補として入社する。次第に父との経営方針の違いが明確になっていく。
「家業は大手住宅メーカーの下請けです。主な取り引き先はその1社だけですので、何かあると一気に経営が傾いてしまいます。父は根っからの職人気質で家具づくりにはこだわりを持っています。その点はすごいと思いますが、経営状態を改善しようという動きはなかなか見られませんでした。この状態を変えないと会社が危ないと考えたのです」。
海外の大手企業や安価な輸入家具に押され、国内の中小家具メーカーは衰退傾向にある。状況を打破するには付加価値の高い製品を開発し、下請けから脱却しなければならない。そう考えた細田氏は、何度も父に進言するが状況は変わらなかった。
「ならば自分一人でもやってみようと思い、自社製品を開発し、展示会へ出展しようと決意しました。2017年には工場の一角で個人事業として細田製作所を始めたのです。父に文句を言わせないため、業務を終えた後、毎日夜遅くまで製品開発に没頭していました」。
家業を存続させるために後継者は破壊と創造を行わねばならない。細田氏は家具をECサイトにより消費者に直接販売する、D2Cブランド「Sense OF Fun(SOF)」を立ち上げ、友人たちと共に活動を始める。
 
 
在宅ワークに便利な新製品
折しも新型コロナウイルスの感染が拡大する時期だった。
「コロナ禍で在宅ワークが急増しましたが、日本の住宅は面積が狭いため、仕事専用のスペースを作るのが難しい場合が多いのです。何か良い解決法はないかと試行錯誤を繰り返した結果、賃貸住宅でも取り付けが可能な、壁掛け折りたたみ机はどうかと考えついたのです」。
それは、よくある折りたたみ机ではなかった。住宅の壁面に取り付ける仕様になっており、作業が終われば簡単に片付けることができる。狭い部屋でも空間を圧迫せずに、必要なときだけ使える便利な製品だった。
2018年に開発した壁掛け折りたたみ机の『タナプラス』はネジで固定するタイプのため、原状回復が必要な賃貸物件は壁に穴をあけられず取付けが難しい。しかし、賃貸に住んでいる人にこそ使って欲しい。そう考え、解決法を模索していく。
「ホチキスで壁に固定をする石膏ボード専用金物があることを知りました。すぐに製造元へ連絡し、原状回復が必要な賃貸住宅でも安心して取り付けられる製品が、ようやく完成したのです。この製品は『壁掛け折りたたみ机タナプラスS』と名付けました」。
資金を確保するため、20年7月にはクラウドファンディングを始めた。
「目標金額は120万円でしたが、わずか3日で達成したのです。最終的には240万円も集まり、同じ悩みを抱えている人の多さを実感しました」。
 
 
目指すは地域への社会貢献
テレビで紹介されたのをきっかけに、次第に壁掛け折りたたみ机タナプラスSの注文が舞い込むようになる。マンションディベロッパーや大手商社からも注文があり、これまでに500点近くを販売した。
「始めた当初は父に遊びだと言われましたが、今では父が折りたたみ机のパンフレットを配り、宣伝してくれています」。
新規事業成功の影には、家業が培ってきた人脈があった。取引きのある材木屋、金物屋から材料の調達を行っていった。
「家業には町工場のネットワークがありましたので、迅速に試作品を開発できました。父が積み重ねてくれた実績を改めて実感しました。」
現在、細田氏は家具づくりに留まらず、DIYが可能な賃貸物件の運営を目指している。工場のある東久留米市には古い空き家が点在している。それらを活用して、空き家と住みたい人をつなぐ橋渡し役になりたいと考えているのだ。そして、入居者が自ら家のリフォームや家具づくりができるソーシャルビジネスも視野に入れている。
「機材の揃った工場がありますので、そこを開放して入居する方に使ってもらえればと考えています。リフォームの方法を教え合ったり、悩みを相談できるコミュニティを作ることが地域への社会貢献にもなるのではないかと考えています」。
下請けからの脱却を目指し、家業を基盤に新しい手法で事業を展開する細田氏。将来は日本を代表するライフスタイルブランドに成長させたい。そんな構想を抱いている。
 
細田製作所 代表 細田真之介氏
 
Company Profile
細田製作所
所在地 東京都東久留米市新川町2-9-7
TEL 090-8641-0245
設立 2017年
売上高 500万円
https://sense-of-fun.com/
  
 Profile
1990年東京都東久留米市生まれ。東洋大学理工学部建築学科卒業後、家業の有限会社細田木工所に入社。10年間家具職人として勤務した後、2017年に個人事業として細田製作所を立ち上げる。

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