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100年企業の強さは利他主義にある

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過去に大震災や敗戦など、さまざまな社会経済の変化や幾多の困難を乗り越えて来た経験と教訓を持つ長寿企業。今回のコロナ禍でも、危機の時への強さが発揮されているケースが多いようだ。昨年、100年経営研究機構が実施したアンケート調査をもとに、同機構代表理事である後藤俊夫氏(日本経済大学大学院特任教授)に長寿企業の強さの秘訣を語っていただいた。

コロナ禍における100年企業
2020年4月、緊急事態宣言が発令され、企業経営に大きな影響が発生することが予想されたこの時期、日頃からお世話になっている創業100年を超える長寿企業の経営者に、100年経営研究機構としてお見舞いのご連絡をさせていただきました。
状況が悪化しているなかでしたが、多くの方々からご返信をいただきました。その文面からは、どの企業も即座に状況の変化に適応すべく対策を取り、コロナ禍にも動じることなく、果敢に乗り越えようとする強い姿勢や意思が読み取れました。
長寿企業が新型コロナウイルスとどう向き合っているか、その情報を集め、危機時における粘り強さや逞しさを探ることで、コロナ禍、そしてポストコロナ時代を生き抜く知恵を探ろうと、アンケート調査(2020年5月8日~15日/インターネット調査)を行いました。
結果、95社もの企業にご協力いただき、そのうち創業200年以上の企業からの回答も約35%ありました。業種別にみると、製造業40社、小売業18社、サービス業12社。大半が売上高10億円未満の中小企業です。


地域から信頼され資金繰りに強い長寿企業
調査時点になりますが、売上高の影響について、「50%未満~10%以上の減少」「50%以上の減少」と回答した企業が7割以上を占め、長寿企業も少なくない影響を受けていることがわかりました。
しかし、今回の調査結果で、もっとも特徴的だったのは、多くの長寿企業が資金繰りに余裕があるということです。「現状でどの程度の期間はもたせることができますか?」という設問に「1年」と「2年以上」と回答した企業が6割を占めました。もちろん「1ヶ月」や「3ヶ月」といった比較的短期間しかもたせることができないという企業も一定数ありました。長寿企業だからといって資金繰りにすべて余裕があるわけではありません。しかし、傾向として、長寿企業は資金繰りに強いということは言えるであろうと思います。
要因として考えられるのは、長寿企業の「高い収益性」と「配当性向の低さ」です。長寿企業は、利益率が高いビジネスを長年続け、その利益は配当として外に出さずに内部留保するという傾向があります。逆に言えば、長寿企業は売上規模の拡大や株主還元を優先しないということです。
もう一つ、金融機関からの融資を受けやすいという点も見逃せません。直接うかがった話ですが、昨年2月の時点で、不測の事態に備え、複数の金融機関から億単位の融資を受けた、という経営者もいます。短期間に億単位のお金を集めるだけの信用があったということでしょう。
その経営者は、さらに従業員に「解雇しない、給料を保証する」と宣言して、安心させたそうです。こうした危機において、トップが率先して、明るく振る舞い、社員たちを勇気づける、安心させるというのは何よりも大事です。それができたのも資金繰りに余裕があったからに他なりません。
地域社会に多大な貢献をしてきた長寿企業が、地域住民をはじめステークホルダーから「地元の名士」と認識されているというケースは、全国に多くあります。「地元の名士」と認知されているような企業は、一般企業に比べ、金融機関をはじめ地域との結びつきや信頼関係が強い。それがこのような危機に直面した際に、大きなネットワークとして機能していると考えられます。
もっとも、これは長年地域に貢献してきたからこその“結果”です。一般企業がすぐに「地元の名士」になれるわけではありません。しかし、地域との共生を重要視する経営姿勢が、有事にも強い企業を作る、ということは確実に言えます。これからの一般企業にとっても、ポストコロナ時代の経営の学びの一つとなるのではないでしょうか。


危機への感度が高く変化への対応が速くて柔軟
今回のアンケートで100年企業の約9割は、「コロナショックを社会経済の変化の兆しと捉えている」と回答しています。「一過性の出来事」とする見方は8.4%に止まりました。多くの長寿企業は、コロナを過小評価せずに、かなり初期の段階から、危機の大きさを認識していたようです。
コロナへの対応についての設問では、約8割の企業が、「販売方法の変更」を試み、3割の企業は新規事業の立ち上げを試みています。また約8割の企業が、一つか二つの対策に集中して取り組んでおり、わずかですが、五つの対策に取り組んでいる企業もありました。積極的に変化を受け入れ、危機を脱するために果敢に挑戦していることが見えてきます。
総じて言えることですが、長寿企業は環境変化への対応が非常に速い。そして柔軟です。「老舗」というと、ずっと変わらないようなイメージもありますが、いざというときの変化は驚くほど速い。それが長寿企業なのです。
今回のコロナは「100年に1度の危機」などと言われます。しかし、この100年間を振り返れば、企業経営を危うくするような危機は何度も訪れています。戦前には関東大震災や世界大恐慌、第二次世界大戦の敗戦がありました。戦後もオイルショックがあり、近年ではリーマンショックや東日本大震災、阪神大震災などが起きています。コロナを決して軽く見るわけではありませんが、危機は、相応の頻度で発生しているのです。
長寿企業とはそうした幾多の危機や困難を乗り越えてきた企業です。だからこそ、「長寿企業」なのです。代替わりしても、理念であったり家訓であったり、あるいは後継者自身も気がつかないうちに、何かしらの方法で危機の経験値が受け継がれ、生き残っていくための知恵が蓄積されていると考えられます。


危機への強さの本質は「利他」の経営
長寿企業がどうして危機に強いのか? あるいはポストコロナ時代に向けて何を長寿企業から学ぶべきなのか? 特に指摘しておきたいのが「利他」の経営です。アンケート調査以降も多くの長寿企業の経営者にヒアリングしましたが、非常に多くの方が、「こういうときこそ、自社だけでなく、顧客のため、社員のため、地域のために貢献したい」とおっしゃっておられました。
「地域との共生を重要視する経営姿勢が、有事にも強い企業を作る」と既に述べましたが、顧客だけでなく社員や取引先、地域の人々など、あらゆるステークホルダーに貢献しようという姿勢にこそ、長寿企業の強さの本質があるのではないかと私は考えています。
ジャパン・フラワー・コーポレーションでは、コロナ禍で苦境にあった花き生産者のために何ができるか?という観点から、『2020スマイルフラワープロジェクト』を立ち上げ、行き場のない花のネット販売を始めました。
人形町今半は、顧客第一の姿勢を貫き、さらにはマスク不足の時には休業中の店舗スタッフが自発的にマスクを作って、顧客や地域の方に配っていたといいます。
自分たちも困っていたはずですが、自分たちよりも「誰かのために」という思いが、新しい工夫を実践したり、後につながる新しい事業を立ち上げたりするエネルギーの源になったのだと思います。
昨今、SDGsやESGが注目されていますが、過度な自社利益の追求が否定され、持続可能な経営が求められるようになりました。次の時代は、人々が共助の精神を発揮し、地球をもステークホルダーの対象とする利他主義の経営が主流となっていくでしょう。「三方よし」という日本的な経営観も見直されるでしょう。コロナ禍がそのきっかけになると思います。
経営者の方は、ぜひ、長寿企業の利他主義的な経営を参考にしてほしいと思います。


一般社団法人100年経営研究機構 代表理事
(日本経済大学大学院特任教授)
後藤俊夫氏


Organization Profile
一般社団法人100年経営研究機構
所在地 東京都渋谷区恵比寿西2-4-8 ウィンド恵比寿ビル2F
設立 2015年9月9日
https://100-keiei.org/
 

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