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顧客優先から社員優先への方針転換で成功をつかむ

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1952年、大阪市西区九条で創業した株式会社ビューティサロンモリワキ。従業員6人、わずか6坪の店からスタートし、今では美容院と貸衣装店合わせて8軒の店舗を構えるまでになった。その技術力の高さと充実した社員研修、ていねいなもてなしにより、顧客からの信頼は厚い。しかし、過去には社員が大量に退職し、顧客からのクレームが相次いだことで、企業としての存続が危ぶまれた時期もあった。そこからいかに脱却し、「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞の審査委員会特別賞を受賞するまでになったのだろうか。

相次ぐ退職者に自社の存在意義を問い直す
大阪の近郊、交野市に本店を置くビューティサロンモリワキ。現在102人の社員を抱え、8つの店舗を運営している。社長の森脇伸一氏は、外国航路の機関士という異業種から1982年、26歳で美容業界に入った。現在、会長を務める義兄の森脇嘉三氏も同様である。「私も会長も養子として森脇家に入りました。兄は土木関係のコンサルタントをしていましたので共に一般企業で働いた経験があります。美容業界に入った時は、正直驚きました。まず、社会保険が整備されていない。休日が少ない上に長時間労働が当たり前になっていました。美容業界の常識は、一般社会の非常識だと思ったほどです」。管理職として入社した森脇氏は従業員の声を聞きながら労働環境を改善していく。週休2日に改め、営業時間を短縮することで従業員の疲労を減らしていく。また、以前は予約制ではなかったため混雑することもあった。それを完全予約制にして、スムーズに働けるように改善していった。こうして少しずつ改善を重ね、順調に業績を伸ばしていく。2004年には過去最高の売り上げを出すまでになる。「勢いに乗ってキャンペーンを何度も行い、さらに業績を伸ばそうとしていました。社員の帰宅が夜11時頃になることもありましたが、その分、給与や賞与を支給していました。1年間の賞与で新車が買えるほどの額です。当時は、報酬こそが社員の幸せになると考えていたのです。ところが、ほどなくして入社4年目の社員が立て続けに8人も退職してしまったのです。これから一人前として活躍できる時期に……。売り上げが伸びている時期でしたので、非常にショックを受けました」。そして、さらなるトラブルが発生してしまう。顧客からカラーリングへのクレームがあり、補償が必要な事態にまで発展してしまったのだ。本来は店長がチェックすべき事だったが、忙しさのあまり十分に確認できていなかったのである。「業績を伸ばすことが会社の使命だと思い込んでいました。そうすれば社員の幸せになると信じていました。ところが実際は、社員は働く喜びや幸福感を感じていなかったのです」。会社としてどうあるべきか、その存在意義が根本的に違っていたのである。


1年かけて作った経営理念が「突破口」に
このままでは会社がダメになる。そう感じた森脇氏は、同業者が集まる美容業界の勉強会に参加する。ここで教えられたのが、経営者は「利より心を優先すべき」ということだった。「当時はCS(顧客満足)を最優先に掲げており、ES(従業員満足)は二の次でした。しかし、「それは順番が違う!」と言われたのです。最も大切にすべきは、社員。彼らが生き生きと働ける環境を作るのが、トップの役割だと知らされました」。この言葉を胸に刻んだ森脇氏は会社の基盤を強固にするために経営理念の作成に取り組む。関連するビジネス書を大量に読んで勉強をしていく中で出会ったのが、ある企業の経営理念だった。「会長が、長野県にある伊那食品工業の経営理念に大変感動したのです。それは『いい会社をつくりましょう』というシンプルでわかりやすい言葉でした。うちもこういう理念にしたいと考え、許可をもらおうと先方の社長さんに長文の手紙を書いたのです。最初は不安でしたが、幸いにも気さくな方で許可をいただくことができました」。こうして、1年かけて完成した同社の経営理念が「やさしい会社をつくりましょう~一人一人をたいせつに~」である。「お客様や会社をとりまくすべての人々が『社員のみなさん、やさしいですね』と言ってくれる、そんな会社を目指そうと決意しました。やさしさとは、言い換えると『利他の心』、感謝する心を意味します」。この理念を実現するために、森脇氏は社内環境を整備していく。まずは寮のリニューアル。同社は日本各地で新卒採用を行っており、地方出身者が多い。そのため社員寮を用意していたが、既存の寮には個室がなく、プライバシーが守れているとは言えなかった。「個室を確保できる寮を本社の近くに作りました。当社では新入社員は全員入社3カ月まで寮生活を送ってもらいます。生活力や自立心を養うための制度ですが、居心地が良いらしく、期限で出ていく社員はいません。最長7年まで寮に住むことができますが、この期限を過ぎても寮で暮らしたいという社員もいるほどです」。寮費は月額1万5000円と格安になっている。本社の3階には専用の社員食堂も完備されている。専属のスタッフが毎日、温かい夕食を作り、立ち仕事でヘトヘトになった社員の疲れを癒している。


売り上げよりも社員の労働環境を重視
社員の抱える課題や悩みを解決するために、マネジャーとの1対1のカウンセリングも定期的に行っている。現場の問題点をいち早く見つけて、改善していくためだ。「経営状態を把握してもらうため、全社員に決算書を公開するガラス張りの経営方針をとっています。複雑な書類ですから見てもわからない社員もいますが、それでもすべてオープンにしています」。こういった経営姿勢が評価をされて2019年には、第9回「日本でいちばん大切にしたい会社大賞」の審査委員会特別賞を受賞。この受賞を機に始まったのが「天の声」という活動である。全社員に会社への要望を書いてもらい、全員の前で一つずつ読み上げていく。それを管理職が2日間かけて討議を行い、改善につなげていくという活動だ。「寮にWiFi を付けてほしい、昼食は12時に食べたい、服装を自由にしてほしいなど様々な意見が出ました。これを一つずつ検討するのは大変な作業ですが、今は売り上げが下がるより、社員がいかに快適に働けるかのほうが大事です。彼らの要望はできる限り受け入れ、より良い環境を作っています」。


社員はすべて「家族」独立後も手厚く支援
ビューティサロンモリワキは、創業時から「大家族主義」を貫いている。家族とは身内のことではなく、スタッフを指している。「家族」として一緒に働き、余暇は大いに楽しむ。そんな方針をとっており、数多くの社内行事があるのが特徴だ。まずは慰安旅行。入社1年目から6年目までは国内旅行。7年目になると海外旅行に出かける。会社が費用の一部を負担し、これまで韓国、香港、ハワイ、スペインなどで観光を楽しんだ。また毎年、「モリリンピック」という大規模な運動会を開催。公共施設を借り切って、店の常連客や他の美容院のスタッフも参加して盛大に繰り広げられる。「正月には成人式を兼ねた新年会も恒例になっています。20歳を迎えた社員のために親御さんに手紙を書いてもらい、式で読んでもらいます。どの社員も非常に感動します」。その他、夏のキャンプや合宿、食事会など数えきれないほどの社内行事がある。そして「大家族主義」を体現する活動が、年に1度のOB会。モリワキを辞めて独立した「卒業生」が全国から集まる懇親会である。同社では独立後であっても支援していく姿勢を貫いている。入社時の面接で将来設計を聞き、将来独立を目指す社員には、経営に必要な知識を教えていくという。常にやさしい会社でありたいというビューティサロンモリワキ。この理念は顧客に対しても実践されている。「新型コロナウイルスの影響で、健康に不安を抱えている方が多いと思います。そんなお客様にリラックスしていただきたいと思い、2021年4月にはヘッドスパのサロンを新設する予定です。また、22年には創業70周年を迎えます。1年かけて記念の行事を行い、社員やお客様にも楽しんでもらおうと、計画を練っているところです」。社員の幸福を追求する同社の経営方針。企業としての存在意義を確認することで、さらに先へ進んでいこうとしている。


株式会社ビューティサロンモリワキ
代表取締役社長森脇伸一氏

Company Profile
株式会社ビューティサロンモリワキ
所在地 大阪府交野市私部3-9-13
設立 1976 年(創業1952 年)
T E L 072-891-9130
資本金 1000 万円
従業員数 102 名
売上高 5 億2800 万円(2020 年8 月実績)
https://www.bs-moriwaki.co.jp/

Profile
1956 年、大阪市生まれ。国立鳥羽商船高等専門学校を卒業後、日本汽船に入社。外国航路の機関士として従事。その後26 歳で結婚。妻の家業であるビューティサロンモリワキに入社し、マネジャー職に就く。2019年には第9 回「日本でいちばん大切にしたい会社大賞」
の審査委員会特別賞を受賞。2020 年2月に社長に就任する。
 

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