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新型コロナで変わる 消費行動への対応

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アフターコロナ時代の経営 新型コロナウイルス感染症(以下、コロナと表記)の感染拡大によって、社会経済活動に大きな変化が起きています。特に3密(密閉、密集、密接)を避けた行動が推奨されたことによって家にいる時間が増加したことは、接客を行う商業やサービス業などの労働集約型産業に大きなダメージを与えました。消費者が商品を購入する手段に着目すると、古くは実店舗に出向き、気に入った商品を選び、購入するという手段しかなかったものが、カタログなどを利用した通信販売が登場し、家にいながら商品を手にすることができるようになりました。そして、1995年には米国のAmazon.com がサービスを開始し、インターネットの普及によって日本でもeコマースがごく当たり前のサービスとして浸透してきました。そういった状況下で発生した今回のコロナが消費行動にどのように変化をもたらしたのか見てみたいと思います。

新型コロナウイルス感染症(以下、コロナと表記)の感染拡大によって、社会経済活動に大きな変化が起きています。特に3密(密閉、密集、密接)を避けた行動が推奨されたことによって家にいる時間が増加したことは、接客を行う商業やサービス業などの労働集約型産業に大きなダメージを与えました。消費者が商品を購入する手段に着目すると、古くは実店舗に出向き、気に入った商品を選び、購入するという手段しかなかったものが、カタログなどを利用した通信販売が登場し、家にいながら商品を手にすることができるようになりました。そして、1995年には米国のAmazon.com がサービスを開始し、インターネットの普及によって日本でもeコマースがごく当たり前のサービスとして浸透してきました。そういった状況下で発生した今回のコロナが消費行動にどのように変化をもたらしたのか見てみたいと思います。

消費の落ち込みとネット消費の拡大

消費税率の引き上げ(2019年10月)後ということもあり、20年の家計消費(総消費)は1月時点から前年を下回っていました。2月はやや持ち直したものの、コロナの影響が出始めた3月からは再びマイナスに転じ、緊急事態宣言が出されていた4月、5月には二桁のマイナスを記録しました。その後、6月には前年並み近くまで回復したものの、夏休みシーズンを目前に控えた7月には再びマイナス幅が拡大しています。このように家計の消費が冷え込む中、ネット消費はどうかというと、4月から増加に転じ、5月~7月までは二桁の増加となっています。消費全体が減少する中でネット消費が増加するという消費行動のネットシフトがはっきりと表れる結果となりました。これは明らかにコロナの影響であり、なるべく人との接触を避けるために、ふだん実店舗で購入していた商品や、在宅勤務などのふだんと異なる生活に対応するための商品をネットで購入した人が増えたと考えられます(図表1)。



eコマース利用の拡大は、統計からも明らかで、二人以上世帯でインターネットを通じて注文をした世帯の割合は、2000年代前半にはわずか数%だったものが、その後緩やかに増加を続け、コロナによって急拡大したことで20 年5月には調査開始以来、初めて50%を超えました。いわゆる緊急事態をきっかけとして初めて利用した人も存在するとみられ、そういった人も一度利用して分かる便利さから、継続的なeコマースユーザーになることが予想されます(図表2)。



変化する消費
コロナ禍では、家にいる時間が増えたことで、巣ごもり消費と呼ばれる現象が見られています。家の中で利用するような商品の需要が拡大し、家の外で利用するような商品の需要が減少しており、最も増加したゲーム機では対前年同期比206%(約3倍)にまで拡大しました。テレワークやオンライン授業に関連したパソコン、机・いすの需要も大きく増加しており、家の中での仕事や生活を充実させるための商品への支出が増加したことがわかります。日本ではなかなか進まなかったテレワークやオンライン授業ですが、ほぼ強制に近い形でやることになった結果、意外とやればできるというだけではなく、メリットに気づくことも多く、コロナ収束後もある程度の割合で継続的に実施されるとみられています。
一方、人と対面で会う機会が減少したことで、スーツや背広服、装身具(アクセサリー類)は対前年に比べて半分程度まで減少しました。さらに、旅行に関する支出である宿泊料や航空運賃、パック旅行費は9割近い減少となり、人の移動が生み出す消費がほとんどなくなっていたことが分かります。国内需要だけではなく、海外からのインバウンド需要が激減したことが合わさり、観光産業はコロナで最も大きな打撃を受けた産業の一つとなりました(図表3)。



ネット消費についても見てみると、出前が対前年同期比124・4%(約2・2倍)と最も増加し、医薬品、家具、家電も前年の2倍以上となりました。ネットスーパーなどを活用した食料品の購入や家での余暇時間を有意義に過ごすための書籍の購入も増えた一方、消費全体と同様に旅行に関する支出やイベント・映画などのチケットは大幅に減少しました(図表4)。



ここまでのデータを振り返ると、経済の不透明感から消費が落ち込んでいること、コロナによって消費行動のネットシフトが見られること、家の中での利用を意識した巣ごもり消費が拡大していることが分かりました。将来的にコロナが収束してもテレワークなどの在宅時間がコロナ前に戻ることは考えにくく、消費行動の変化はしばらく続くと考えられます。商品を供給する側の企業としては、こういったコロナによる消費行動の変化に対応していくことが求められていると言えます。

消費行動の変化に対応した取り組み

コロナ禍の消費行動の変化に対応するため、供給側の企業では情報通信技術(ICT)を活用した取り組みが多く行われています。まずeコマースを活用した販路の拡大が挙げられ、これまで実店舗しか販路を持たなかった小規模の飲食店でもeコマースを利用したテイクアウトやデリバリー、通販用のパッケージ販売が加速しました。
こういった動向により、BASE 株式会社が運営するネットショップ作成サービス「BASE(ベイス)」のショップ開設数は20年5月から7月の2カ月間で10万ショップ増加し、宅配大手のヤマト運輸では4月以降の宅急便取扱個数が前年に比べて二桁の増加となりました。
また、宅配ニーズの拡大によってシェアリングサービスであるUber eatsでは宅配を代行する配達員需要が急拡大しました。特にコロナによって営業ができなくなった飲食店では、料理のテイクアウトやデリバリーを積極的に展開したものの、配達員の確保が難しく、こういったスマートフォンアプリに支えられていたという側面があります。中長期的には中小企業における人材不足の傾向は続くとみられ、すべての業務を自社で行うのではなく、社会で普及しているサービスを積極的に活用するという考え方も大切になります。
接客シーンにおいても、アパレルショップやデパートでは販売員がオンラインで質問等に対応するオンライン接客が行われています。実店舗に出向く理由としては「直接商品に触れたり、試せる」、「その場で持って帰れる」、「家族や友人と一緒に買い物できる」などが多いと思われますが、販売員に質問をしたりサポートしてもらいながら商品を選ぶことができるという利点もあります。この利点に良さを感じている人にとってオンライン接客はもってこいのサービスであり、一定の効果が出ていると想像されます。ただ、消費者の接客ニーズも多様化しており、商品選びのシーンにおいても様々なニーズに答えられる手段を用意しておくことが大切になります。また、実店舗の利点とされている点も技術の進歩とともに徐々に薄れていくと予想され、実店舗の役割が見直される時期になっているのかもしれません。
消費行動の一つであるライブやコンサート、各種イベントのオンライン化も進んでいます。ただ、イベントに関しては、リアルな場に集まって盛り上がることに価値を見出している人が多く、コロナによってリアルの価値がより一層高まったという見方もできます。
10年前であればほぼ不可能だったと考えられますが、クラウド技術やAI(人工知能)技術を活用し、リアルな臨場感をバーチャル空間で再現しようという取り組みも進められています。近い将来には、オンラインでもリアルな場でのイベントと同様のクオリティで楽しむことができるようになるかもしれません。
このように消費者側、供給側で様々な変化が起きていますが、消費者の生活満足度はどのように変化したのでしょうか。野村総合研究所(NRI)「新型コロナウイルス感染拡大による影響調査」によると、20年5月時点では同年3月と比較して生活に「満足していない」という人がほぼ倍増しています。自粛生活が続いたことや、コロナへの恐怖感、仕事面での心配などが合わ
さり、全体的に生活満足度が低下したのは必然とも言えるでしょう。
ところが、消費スタイル別に見てみると、自分が気に入ったモノ・コトには高くても対価を払う「プレミアム消費型」の人は生活満足度が高く維持されており、商品にこだわりはなく安ければよい「安さ納得消費型」の人は生活満足度が最も低いという結果となっています。つまり、自粛生活に満足を見つけ出している人とそうではない人が存在し、満足を見つけ出した人は、家の中での時間を有意義に過ごすための“何か”を購入したと推察できます。テレワークを快適にするための家具や子どもと遊ぶための玩具などがその一例だと思われますが、どのような状況においても生活の満足度を高めるために積極的に消費する層が存在することは確かでしょう。そういった層の消費を参考に、安さを追求する層に響く商品を揃えることが変化に対応する上では必要になると考えられます。

中小企業が目指すべき方向性
今回のコロナをきっかけとして、これまで実店舗で購入することが多かった食料品や医薬品などをネットで購入する人が増加し、eコマースのメリットに気づいた人も多かったと想像できます。消費行動のネットシフトは今後も継続するとみられ、販路としてeコマースを用意することは必然だと考えています。eコマースを活用することで時間と空間の制約が無くなり、世界中の人々を相手にした商売をすることが可能になります。
消費者の生活様式が変化したことによって、消費者が望んでいる商品も変化しています。例えば、これまで家の外で利用することを想定していたテントなどのキャンプ用品を自宅で利用する人が増えています。
こうした消費者側の利用の工夫をいち早く察知し、新たな商品開発に繋げることも大切になります。また、大企業が得意とする標準的な商品を大量に生産するのではなく、多様なニーズをもった消費者を相手にカスタマイズした商品や自由にカスタマイズできるような商品を生み出していくことが、中小企業の目指すべき方向性の一つと言えるでしょう。
最後に、これまで中小企業におけるICT活用が遅れていると言われ続けてきました。今回のような有事への一時的な対応だけではなく、企業経営の持続的な発展を見据え、積極的にICTを活用していくことが期待されます。その際これまでのビジネスモデルや習慣に左右されず、どのような企業を目指すのかを明確にし、変革していくことが求められます。


株式会社情報通信総合研究所
I CTリサーチ・コンサルティング部
主任研究員  鷲尾 哲氏

Profile
情報通信分野に関する調査研究、コンサルティングに取り組む情報通信総合研究所において、情報通信技術(ICT)が経済・社会に与える影響・効果について、データに基づく実証分析・提言を行っている。

Company Profile
株式会社情報通信総合研究所
◆所在地
東京都中央区日本橋人形町2-14-10
アーバンネット日本橋ビル
https://www.icr.co.jp/

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