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後継者が明らかにすべき「マニフェスト」とは

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親子承継だからこその“ 悩み”や“ 煩わしさ”というものがある。それらは周囲には見えにくく、同時にナイーブな問題である。そのため第三者にも相談できず、後継者は一人で抱えてしまいがちになる。本連載では、自身、二代目後継者である著者が、体験したり、見聞した後継者の悩みや失敗をエピソードとして紹介。そこから親子承継において、子が抱えやすい“ 悩み”の本質を解明しその対処法を提示していく。

重箱の隅をつついていないか?
親の会社を継ぐべく後継者として入社した際、私たちはまず何を行うでしょうか。実務を覚え、ある程度リーダーシップを発揮し始めたらまず着手しようとするのは「会社の弱点・欠点の改善」ではないでしょうか。
例えば、非効率な製造工程や社内の会議の進め方、営業の戦略や戦術立案など、目に付いた部分から改善しようとするのが一般的ではないかと思います。こういったことは効果が出やすい面もあるので、どんどん進めればいいとは思うのですが、危惧するところもあります。それは、このような後継者の行動は、どこか「重箱の隅をつついている」という印象を内外に与える可能性がある、ということです。
それまでの会社の体制を作ってきた先代にとって、後継者による「改善」は、今までやってきたことを後継者に否定されるようで、苦痛に感じる場合があります。まるで自分が責められているような感覚に陥ることがあるのです。
このような感情のもつれが積み重なると、親と子の確執を招く一因となります。
ところで、社内のモチベーションのマネジメントにおいて、重要なことは何かご存じですか?それはニンジンをぶら下げることではなく、社員一人ひとりの「自主性」を重んじることです。自主性というのは本人の内から湧き出るものだけに、外からそれを刺激するというのは至難の業です。
仕事の現場でそれを引き出すとすれば、好奇心を活用するのが一つの手法かもしれません。
では、どうすれば社員の好奇心がかき立てられるのでしょうか。そのためにリーダーとしてできることは、社員に「ワクワクする未来」を見せることではないでしょうか。


会社の未来像を語ろう
後継者のみなさんが考える、会社の未来の姿はどんなものでしょうか?
「事業計画書を見ればわかる」とおっしゃるかもしれません。確かにそうかもしれませんが、そこに書かれた内容は、社員さんがワクワクするようなものですか?
例えば「3年後に売上を5倍にする」というビジョンを掲げたとします。しかし、このような未来像は社員に響かないものです。その理由は二つあります。
第一の理由は、それが達成された時に、社員一人ひとりがどんなベネフィット(利益)を受けられるかが明確ではないことが多いからです。
そうならば、そのビジョンはあくまで「経営陣のビジョン」に過ぎず、社員の一人ひとりが「自分ごと」として考えるのは難しいでしょう。
もう一つの理由は、そのゴールに至る道筋に、目を見張るような「明確なルート」が設定されていないことが多いからです。
どのようにすれば達成できるかが明確でない以上、これは形を変えた「とにかくもっと働け」という圧力以外の何物でもありません。
政治の世界では、選挙の際に「マニフェスト」というものが作られるようです。
具体的には
・将来像を示したうえで、実現するための政策を、具体的に、かつ体系的に示す
・限られた財源のなかで、優先的に取り組む政策を明らかにする
・優先する政策を実施するために、縮小・廃止する政策も示す(財源の配分を説明)

などが中心になるようです。
残念ながら政治の世界でも、このマニフェストは有名無実化されていて、十分活用されていないようです。しかしこれが機能すれば、私達有権者はかなりの確率で、このマニフェストをもとに投票を行うことでしょう。
逆に言えば、為政者がマニフェストをきちんと重視した政治をするならば、マニフェストはより重みを増すことになります。
さてここで、後継者のみなさんに考えてほしいことがあります。私たちは社員に「将来像を示したうえで、それを実現するための方法を体系的に示している」でしょうか?
もしかしたら各現場の部分最適に終始して、全体像を見渡したゴール設定ができていないのではないでしょうか?


「この指とまれ経営」
誰が言い出したか、数年前「この指とまれ経営」なる言葉をよく耳にしました。
「自分たちはこんなに魅力的な仕事をしていますよ」「こんな未来を創るために頑張っていますよ」「こんなに楽しい将来像をイメージしていますよ」と、まずは自分たちの会社のワクワクポイントを明確にします。
そのうえで「こんなことを一緒にやりたい仲間、集まれ」と募集するという流れです。
本稿の前半では「社員のベネフィットが明確でない」と社員のモチベーションにはつながりにくい、という話をしました。
しかしそのベネフィットは金銭的なものだけではありません。
例えば「こうであればと願う世界を作る」ための一助となって働く喜びもまた、ベネフィットの一つです。そして、予想以上にその喜びは大きいはずです。その証拠は、社員やスタッフへのインタビューで明らかになります。
彼らに「仕事で一番嬉しかったことは?」と聞くと「お客様に喜んでもらえ、お礼を言われた時」などと答えたりすることがほとんどです。
「ボーナスをもらえた時」と答える人との差は圧倒的です。
人は人の役に立った時、嬉しいと感じるものです。リーダーは、そういった実感を持ち続けられる仕組みを作ることで、社員の能力を引き出すことができるのではないかと思います。
そのためにも、「会社として社会の中で何を成し遂げたいか」と、それが実現可能と思える道筋を明らかにする必要があります。これらをじっくり考えてみることをお勧めします。

Point
会社の弱点や欠点にフォーカスするばかりでなく、「会社の未来」への希望とそこまでの道筋を語ろう


後継者倶楽部主宰
(株式会社アウェイク 代表取締役)
田村 薫氏


Profile
1968 年生まれ。大学卒業後、父親の経営する保険代理店に就職、後に代表取締役となる。その過程で多くの中小企業において、親子での事業のバトンタッチがうまくいっていない実態を目の当たりにする。
25 年にわたりその確執について、独自に研究。後継者の才能を開花させることを目的とした、後継者コミュニティ『後継者倶楽部』を主宰。
今後、「大人の成長」をキーワードとした企画の立ち上げを、株式会社アウェイクにおいて計画中。

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