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製造 × 後継者による事業革新
「小売店の親切さ」×ITで業績アップ仲間の企業とともに地域を盛り上げたい

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当社は1950年、祖父である東治一が、商店街の一角に手芸材料の小売店として開業したのが始まりです。現在小売店舗「アズマ手芸」、ネット販売の「AZ︱NET手芸」を経営しています。売上高の9割がネット事業によるものです。扱う商品は、口金、ボタン、ファスナーなどの袋物・服飾材料、ぬいぐるみの目玉や鼻などのパーツ、手芸やアクセサリーのキットなど、1万点以上です。顧客は、ハンドメイドを趣味とする30代~50代の女性が中心ですが、アイロンで貼れる洋服の補修布、裾上げ用の接着テープなどを買う男性もいます。私は大学卒業後、金融関連企業に就職しました。

商店街の衰退に危機感を抱きネットショップを立ち上げる

父である東英昭が2代目として店を経営していましたが、自分自身は3代目として家業を継ぐつもりは全くありませんでした。しかし、サラリーマンとして経営改善、新規事業立ち上げ、M&Aといった業務に携わるうちに、家業の経営にも興味を持つようになりました。やがて商店街が衰退していくことに危機感を抱き、父にネット販売を提案。2003年にネットショップを開店しました。単身赴任をきっかけに土日に家業を手伝うようになると、もっと事業を伸ばせるのではないかと、家業に大きな可能性を感じ、父に「会社を継がせてほしい」と打診しました。実は、父は自分の代での廃業を考えていたそうです。そのため後を継ぐことを反対されましたが、3カ月かけて説得しました。最後には手紙を2通書いて父に渡しました。1通は経営コンサルタントの視点で客観的に会社を分析した内容、もう1通は、息子としての家業への思いを綴りました。このことが、父の心を動かしたようです。11年7月に入社し、12年4月に社長に就任しました。

業務をIT化・データ化し経営状況をリアルタイムで把握

実際に入社してみると、売上高に占める利益率の低さに気が付きました。サラリーマン時代に培った様々な分析手法を用い、利益率の低さ以外にも、経営上の様々な問題点を発見しました。まず取り組んだのが、業務のIT化です。父の時代の経営は、「勘、経験、根性」に基づいた、いわゆる3K経営。商品の在庫がまだあるのに発注するなど在庫管理もできていませんでした。そこで、日々の各商品の在庫管理や売上高の推移をデータで把握・分析できるようにしました。同時に、実店舗のノウハウをネットショップにも活かすようにしました。例えば、当社ではファスナーを、無料でお客様の希望のサイズにカットしています。20㎝を19・5㎝に切るといったことは、実店舗では当たり前のサービスですが、金具を外してカットし、再び金具をはめるという手間のかかる作業で、他のネットショップでは、あまりやりたがらないサービスです。しかしファスナーは、手芸店にとっては「戦略商品」の1つです。実際にこの無料サービスを続けることで、ネット上の口コミが増え、新規顧客の獲得に結びつくようになりました。また、データを分析することで、顧客のニーズが見えてきました。一例では、メーカーからロットで仕入れたぬいぐるみの目玉、ファスナー、口金などの材料をバラ売りしていたところ、10個単位でまとめ買いする人が多いことに気が付きました。そこで10個入りを販売すると、10個入りを5セット買う人が出てきました。さらに20個入り、50個入りも販売すると、それを一度に数セット買う人もいました。小売店は対面なので、店に来る一人ひとりのニーズが分かります。

そこでネットショップでも、集計したデータだけを見るのではなく、一件ずつの注文内容に目を通し、お客さんがどういう組み合わせで買っているかを注視しました。リアルタイムで、対面販売と同じようにデータを見ることで、次の手を打ちやすくなります。今まで個人の感覚では、100本入りのロットでは売れないと思っていましたが、データを分析することで、100本入りのものが売れるかもしれないと考え、受注発注にしたところ、100本、200本と予想以上の注文が入るようになりました。作品を手作りしてネットで販売するセミプロの手芸作家や、海外からの注文が増えていることも、データ分析で分かったことです。

父の完全引退を機に、商品の絞り込みと値上げを敢行

業務のIT化、在庫管理、仕入れの効率化をすることで、業務効率は格段に向上しましたが、利益がすぐに出たというわけではありません。私が社長に就任した後も2年ほどは、父が会社に残って現場のチーフをしていたこともあり、父が他のネットショップに追随して安売りをするなど、経営方針の違いで毎晩のように衝突するようになってしまいました。そのため私の指示と違う指示が父から出されることもあり、従業員が混乱する事態が起こっていました。やがて父が完全に引退すると同時に、古参の従業員の何人かも辞めてしまいましたが、これを機に「代替わりが完了したのだから、中途半端な改革ではいけない」と考え、売れ筋商品の絞り込みと、一部商品の値上げに踏み切りました。値上げに関しては相当な勇気が必要でしたが、「絶対に経営を改善させる」という強い意志と、叔父の税理士から、様々なアドバイスを受けて実施しました。
このことで、売り上げは従来の水準より最大で4割程度減少しましたが、粗利は劇的に改善したのです。

ネットでも対面販売でもお客様との信頼関係が第一

たちばな信用金庫さんの「たちばな未来塾」には、社長就任翌年の13年、第2期生として参加しました。講座で体系立てて学ぶことで、前職での経験も、改めて腑に落ちるということが多々ありました。また講師の鈴木社長は私と同い年で、同じように異業種から家業を立て直した経験があることから、私にとってロールモデルでもあり、よきライバルでもあると感じています。経営者は孤独な面もありますが、この塾で同世代の経営者たちに出会えたことも、大きな収穫でした。現在、自社の通販サイトの他、楽天やヤフーなど三つのネットモールに出店しています。楽天市場では月間優良ショップを13回以上受賞、ヤフーアワードも4年連続受賞中です。ネット通販は「店舗や人件費などのコストがかからないので楽だ」と思われがちです。他社の多くは、その考えを元に業務を簡潔にすることを前提に考えて運用しているように思います。


しかし当社は、たとえお客様と直接対面しないネット通販でも、お客様が求めていることを最優先に考えています。ファスナーカットや個包装などの細かいサービスのほか、「そこまで高品質なものでなくてもいいから安いものが欲しい」というお客様には、海外で仕入れてきたものをB級品として販売するような対応もしています。このようにお客様のニーズに合わせながら、可能な限り効率化することで、他社との差別化ができていると考えています。売り上げも大事ですが、お客様との信頼関係を築くことで、メルマガの開封率も高く、当社のファンになってくださる方が増えていることが嬉しいです。

コンサルや通販サイト代行で地域経済の活性化の一助に

今後は、手芸商品だけに限らず、雑貨など異なるジャンルへの展開を考えています。海外から手芸用品と同時に仕入れた木製食器のテスト販売を始めたところ、好評をいただいています。また、ヤフーや楽天などのネットモール依存型の収益モデルから脱却していくために、自社の通販サイトとSNS集客のさらなる強化を進めています。現在、YouTubeチャンネルの開設も準備しています。当社の扱う商品には、高齢者やリハビリ向けの商材もあるので、介護施設やリハビリ施設に営業に行くなど、ネットの集客に限らず、コツコツと足でかせぐ営業も行っています。

単に「商品を売る」よりも、「当社の商品やサービスで、お客様を笑顔にし、楽しく幸せにする機会を提供できる会社になる」というスタンスをより出していきたいと考えています。将来的には、海外市場への展開など、新たなチャレンジも考えています。また当社の経営改善策やネットショップ運営のノウハウ、私自身のサラリーマンと事業主としての経験を活かし、地域の困っている企業に役立つアドバイスができればと考えています。これまでに異業種・異業態の数社のコンサルティングの実績がありますが、「ネット通販をやりたいけれど、サイトの立ち上げ・運営ができる人材もノウハウもない」という会社は結構多いのです。こうした会社がリスクを最小化できるような有益なコンサルティングやネットショップ運用代行を当社が行うことで、地域経済の活性化の一助になれればと考えています。


有限会社アズマ
代表取締役社長 東 真一郎氏


1972 年生まれ。大学卒業後、金融関連業界に就職。2011 年有限会社アズマに入社、12 年に代表取締役社長に就任。小売店舗「アズマ手芸」とネット販売の「AZ-NET手芸」を経営。ネット販売で売り上げを10 倍に伸ばした経験を活かし、コンサルティング事業も行う。



Company Profile
有限会社アズマ


所在地 長崎県諫早市東小路町12-7
T E L 
創業 1950 年
従業員数 8人
https://bso17306.bsj.jp/

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