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製造 × 後継者による事業革新
利益は経営理念を達成するための手段である

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1921年(大正10年)創業の島田株式会社は、来年創業100周年を迎える老舗企業である。家具や内装材料の販売を手がけており、これまで一度も赤字を出したことがない。その安定した組織の基盤になっているのが、経営理念「ハリーズ」である。四代目社長・島田博史氏が策定したこの理念は、取引先だけでなく地域からも厚い信頼を得るきっかけとなり、結果として売り上げ倍増をもたらすこととなった。

10年前は経営理念も社是もなかった

島田株式会社の経営理念である「HaRiSS(ハリーズ)」は、3つの柱で成り立っている。①全社員一人ひとりが幸せになれる会社を目指します(Happy)、②仕入先様と売り先様と一緒に発展します(Rise)、③社会に役立つ企業になります(ServicestoSociety)。これらの頭文字を取ってHaRiSSと呼んでいる。「当社の目的は経営理念の実現であり、利益はそれを達成するための原資だと考えています」と話す島田博史社長。最大の目的は利益ではなく、経営理念の実践にある。なぜこう断言できるのか?そこには島田氏の歩んできた道のりが反映されている。同社は1921年、大阪市西区に接着剤メーカーとして創業。戦後間もなく製造業から業態を変えて以降、現在まで家具や建材の卸売業を主力事業としている。四代目を承継した島田博史氏は大学卒業後、大手電機メーカーに入社。5年間勤務した後、父から依頼があり家業に戻ることになる。「大手企業から社員17名の会社に入るのは、正直言って不安がありました。

しかしこれもひとつの挑戦だと思い、入社を決意したのです」。入社8年後の2005年、父が65歳になった年に代表取締役に就任。36歳の若さで会社を背負っていくことになった。「社長になった時、真っ先に考えたのは、会社が倒産してしまう不安でした。そうなると社員だけでなくご家族まで不幸にしてしまいます。何としても会社を守らねばならないと、本を読んだり自分なりに経営を勉強していきました」。そんなある日、神戸の商工会議所に勤める友人から問われた言葉が転機になる。「友人から『お前の会社には経営理念はあるのか?』と聞かれたのです。当時は、経営理念どころか社是や社訓もない状態でした。経営していく上で理念がないのはどうかと思う、と言われショックを受けました。ないのならば自分でつくってみようと思い立ったのです」。奮起した島田氏は、様々な企業の経営理念を片っ端から調べていく。一人で考え抜き試行錯誤を繰り返す日々。そして3ヵ月後、ようやく自社の目指すべき指針を言葉にすることができたのである。「社員の前で発表する時は、緊張しましたが、みんな異論なく聞いてくれました」。

社員全員が会社の代表であれ

2010年に制定した経営理念の内容はこうだ。まずHappyの項目には「社員一人ひとりが会社の代表であり、互いに信頼し合い高めあえる関係を築き、風通しの良い明るい社風をつくります」と書かれている。社員全員が会社の代表という意味だが、この理念の原点には、島田氏の入社から社長になるまでの経験が反映されている。「入社当初から社員と一緒に商品の配達をし、新規顧客から注文を取るなど、苦楽を共にしてきました。ですから社員が幸せになれる会社をつくりたいという思いが私の原点にあります」。この理念が業務にどう活かされているかというと、まずは決裁権を社員に委譲している点だ。営業社員は会社の代表として自分で仕入れた商材を顧客に好きな価格で販売できる体制を敷いている。そのため各自がやりがいを持って働くことができる。朝礼では、社員が持ちまわりでハリーズの一節を紹介。関連する自身のエピソードを紹介していく。毎日習慣づけることにより、経営理念が社員に浸透していくという。「売り上げ目標を達成したら、努力賞として営業社員だけでなく、業務、配送、倉庫の担当者にも同額を渡しています。

また夏冬の賞与以外に5月の決算前に、営業利益の一部を決算賞与として社員に還元しています」。社員が快適に働ける環境づくりも実践している。役員室を解体して社員がひと息つけるサロンを新設。植栽の少ない工場地帯にあるため、緑豊かな縁側スペースを設けている。ランチタイムには社員が休憩室で一緒に食事をとる。配送や営業で外出する社員が多いため、食事を共にすることで情報交換ができたり、交流が深まるという。また社内では役職で呼び合わない。役員も互いにニックネームで呼び合い、フランクな交流を行っている。他にも育児休暇中に基本給の80%を支給するなど、社員への配慮が数多い。

取引先とともに成長していく

2番目のRiseの項目には「仕入先様には常に感謝を第一に信用を重んじます。変化に対する先見力を養い、決めたことは必ずやり遂げます。そして革新的な商品と真心をこめたサービスを提供します」とある。「自社の利益だけを追求するのではなく、取引先も儲かり、一緒に発展できる経営判断が必要だと考えています」。卸売業は何より顧客の信用が第一である。そのため同社では、受注から納品までの「超スピード体制」を売りにしている。1000種類以上の大型商品を多数在庫として持っており、いつでも出荷できる体制を整えているのだ。「主要な取引先である内装業は、建築工事の最終段階にあたるため納期に間に合わせるのに大変苦労されています。そういった悩みを解決しようと、一度に多数の注文があっても即時に納品できる体制をとっています。朝8時30分までに注文があれば、午前中には自社便で届けることができます」。希望する商品の在庫がない場合は全国の同業者をあたって在庫の確保にまわる。赤字になることもあるが、それより顧客の信頼を得ることを重んじているのだ。

こういった企業姿勢が次第に評判となり、取引先2社の事業を承継することになる。同業者の廃業により請われて社員、商権、仕入れ先、在庫など事業を丸ごと引き継いだ形だ。また取引先の家具工場が廃業した時には、社員と工場を引き継いだことで同社に家具部門が誕生し、事業拡大につながった。

経営理念がもたらした成長

主力商品の化粧板(メラミン化粧板、ポリ合板)の販売のほかに、環境配慮型の商品「エコノワ」事業を促進している。これは経営理念「ServicestoSociety」に従って、エコ建材を普及させる取り組みである。使用するのは植林木、間伐材など、リサイクル材には再生原料を50%以上使用している。業界だけでなく地域からの信頼も厚い。毎週社員が地域の清掃を行っており、災害時には地域住民の避難所になるよう食糧や水、防災用品を備蓄している。地元の障がい者施設と交流を続け、パート社員として受け入れており、毎年、財団法人交通遺児等育成基金に募金も行っている。「2015年に本社を移転したのですが、近隣の皆さんから『移転すると寂しくなる』『島田さんがいなくなると、地域の防犯面が不安』などとたくさんの温かいお言葉をいただきました。中には涙を流して別れを惜しんでくださる方や引っ越した先まで訪ねてこられた方もいらっしゃったほどです」。島田社長は経営理念を策定してからの変化をこう話す。「ハリーズを作成するまでは、自分の思いが社員にうまく伝わらず、よく怒っていました。

しかし策定後は『社長が言っていたのはこういうことやったんですね』と社員が納得する場面が増えました。自分の思いがスムーズに伝わるようになり、業務も効率的に進めることができています」。これらの業績が認められ、16年には第6回「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞・審査委員会特別賞を受賞している。社長就任時に9億1000万円だったり売り上げは、10年後の19年には22億1000万円にまで倍増。従業員も19名から48名に増え、成長しながら安定した企業基盤を築いている。さらに16年には、社長自ら忙しい仕事の合間を縫って立命館大学大学院経営管理研究科へ通学している。「30代の頃から経営を体系的に学びたいと思っていました。良い会社とは何なのかを追求したいと思ったのです。様々な企業を訪れて経営理念に関するインタビューを行い、その結果を論文にまとめました。自社の経営理念が間違っていないと分かり、自信につながりました」。経営理念は「北極星」のような存在と話す島田社長。社員全員が迷った時、悩んだ時に原点に立ち戻ることができる企業の根幹だ。ただ制定するだけではなく、社員に定着させていくための習慣をつくり、日々確認していくことが重要だと締めくくった。

島田株式会社
代表取締役島田博史氏


1968年(昭和43年)大阪府豊中市生まれ。成城大学経済学部を卒業後、富士電機株式会社に入社。5年間勤務した後、家業に入社。2005年代表取締役に就任。10年に経営理念「ハリーズHaRiSS」を策定。16年には「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞の審査委員会特別賞を受賞。18年から2年間立命館大学大学院経営管理研究科で組織づくりについて学ぶ。

CompanyProfile
島田株式会社

所在地大阪府大阪市西淀川区御幣島5-17-4
設立1964年(創業1921年)
http://www.shimadakk.com/

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