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製造 × 後継者による事業革新
OEMで培った知識と技術力で自社ブランドのヒット作を目指す

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当社は1948年創業。奈良県で70年以上の歴史のある会社で、靴下の生産量日本一を誇ります。現在、日本の衣料業界は、海外からの輸入が増えていますが、靴下においても90 %が海外からの輸入です。以前は中国からの輸入が多かったのですが、その後、タイやベトナムなどの東南アジアに移り、現在はバングラデシュやパキスタンなど、さらに人件費が安い途上国に移りつつあります。日本国内では、付加価値の高い商品を生産するメーカーだけが生き残っています。

「靴下づくりのプロ」として年間約5000万足を生産

当社は、「靴下づくりのプロフェッショナル」として、長年OEM生産を通じて、高い技術力とノウハウを蓄積してきました。また企画力を高めるため社内にデザインチームを置き、商品開発からパッケージデザインまでの提案もしています。小ロットから大ロットまで、国内・中国に7拠点の工場を持ち、年間約5000万足を生産しています。また、独自に流通プログラムを開発し、オーダーから5時間程度で約10万足の靴下を1000カ所のショップ等に出荷することもできます。

競合他社の少ない医療・健康靴下で強みを発揮

当社が扱っている靴下には、スポーツ靴下、ファッション靴下、医療・健康靴下があります。スポーツ靴下は、野球用ソックス、サッカー用ソックス、アウトドア向けのトレッキング用ソックスなど、有名ブランドの製品開発と製造を行っています。プロ選手用の別注ソックス・リストバンド、J リーグのプロサッカーチームのオフィシャルソックスなども手掛けてきました。ファッション靴下は、メンズ・レディース・キッズなど幅広く扱っています。高級繊維素材などの素材や、色、刺繍、箔ラメなどデザイナーの要望に細かく応え、ブランド品の委託製造もしています。そのなかで、他社との差別化を実現し、当社の強みとなっているのは、医療・健康靴下です。2002年より医療品メーカーと共同開発をし、医療効果が認められる靴下の製造開発をし、06年に薬事法基準をクリアした「医療用機器」製造許可の承認を取得しました。医療用機器は、工場の認定や検査が厳しく、県の査察も毎年あります。

また、免許は5年ごとの更新制です。「医療用機器」靴下は、締め付け強度も作用効果に基づく必要があるため、微妙な編み上げの調整をする必要があります。さらに製品のトレーサビリティが求められ、原料の原産地や、製造日、出荷日などの記録を残し、常に追跡可能な状態でなくてはいけません。また製品の品質管理はもちろん、工場の衛生管理も大切になります。これらの基準を満たし品質を維持することは大変で、新規参入も困難です。靴下の生産量が多い奈良県内でも医療・健康靴下を製造できる会社は少なく、当社を含めて2社のみとなっています。競合の少ない分野で、当社の強みを発揮できています。

ニッチなニーズに合わせたODM製品を開発

祖父が創業した当社を父が継いだので、私も幼い頃から会社や工場に出入りしていました。販売の手伝いもするなか、ゆくゆくは自分が会社を継ぎたいと考えるようになりました。大学在学中アメリカに1年間留学し、11年に24歳で当社に入社しました。入社後は、長年のOEMで得たノウハウをもとに、新たに自社商品の開発に力を入れるようになりました。OEMとODMを両輪で回し、収益の柱にしていこうと考えました。


OEMの生産部門を担った経験から、どんな商品が売れるか分かりますし、その商品を製作す技術も持っています。そこで、大量生産の大手では作れない、当社だからこそ作れるニッチな商品を開発することにしました。自社商品は、卸を通さなくても、長年の付き合いがある中堅規模の店やネットで販売ができますが、売れるものを作るためにはマーケティングの必要性を強く感じました。自社ブランドや作る技術があっても、マーケティングができていなければ、ヒット商品は生まれません。そこでマーケティング会社に助言を受けたこともありますが、思うような結果が得られていませんでした。

マーケティングの必要性を感じ、経営塾に参加

そんな中、大和信用金庫さんの若手経営塾に参加しました。「中小企業はレッドオーシャンではなく、ブルーオーシャンを目指すべき」と教わり、自分自身の考えが正しかったことを確信できました。例えば現在、東京のファッションブランドのOEM商品で、デザインや色、素材にこだわった1足1800円のカジュアルソックスを製造しています。ターゲットが狭い高価格帯の商品ですが、マーケティングが上手なため、セレクトショップなどでよく売れています。発注数は少ないのですが、毎月300万円程度の売上が先月は750万円にも上り、海外からの問い合わせも増えて生産が間に合わない状態です。少ない需要を満たすことからスタートしても、徐々に拡大させることもできるのです。当社でも、そのような付加価値を持ったODM商品でヒットを生み出すのが、将来的な目標です。

以前はイタリア製の機械を使うなど、「生産設備」によって付加価値が付いた時代もありました。しかし最近では、同じような機能を備えた中国製の機械が出回り、それによって作られた製品も耐久性が高く、機械=生産設備での差別化はできません。ただし、生産設備の差は少なくなったとはいえ、現在でも品質管理のレベルには国内外で差があります。海外生産の場合、工程管理をしっかりとしていないと、縫製がずれて、左右長さの違う靴下など、日本では考えられないような製品が上がってくる場合があります。海外では一貫生産のため、一度間違えると、それ以降の全製品が同じ間違いのまま納品されることもあります。そこで当社の上海事務所では現地に社員を1人駐在させ、徹底した品質管理をしています。

メイドインジャパンを強みに海外に顧客を拡大

現在は父が代表取締役社長を、私は部長職を務めています。09年に父が祖父から事業承継して10年が経ちました。将来的には私が承継する予定です。現在は、社長が不案内なマーケティングやIT分野に関して、私が業務を一任されています。靴下も量販店、専門店、小売店以外にも販売するチャネルは多数あります。新規販売チャネルを増やすために、海外市場へ進出し、仕事の効率を上げることで自分が営業に回れるようにしたいと考えています。現在は、工場での生産管理や出荷作業が忙しく、なかなか営業に専念することができませんが、これまでの経験から、営業に行くほど仕事が取れるということを実感しているからです。

国内市場は人口減で縮小傾向にはありますが、これほど優良な市場はありません。スポーツソックスにしても、他のメーカーと同品質で値段を下げた自社商品を提案すると、次々に受注が決まりました。また、キャラクターとコラボした靴下など、数は少なくても確実にニーズがあるような商品も需要があります。欧米でも「メイドインジャパン」製品には付加価値があります。当社のウェブサイトには海外メーカーからの問い合わせも多く、まだまだ市場を拡大できると考えています。

IT化で作業効率を高め靴下業界の活性化が目標

現在の課題は、作業効率を上げて生産性を高めることです。例えば現在の物流では、コンテナから箱を降ろし各店舗へ仕分けする作業だけでも、1週間かかってしまうこともあります。今後はIT化にも、さらに注力していきたいと考えています。靴下業界はまだまだアナログな部分があり、発注書がファクスでしか送られないような取引先も結構あります。それを当社でPCの発注書に入力しています。

先にデータを工場に送れば、海外の工場で品番ごとに仕分けできるので、当社の作業もかなり減らすことができます。また、靴下文化の普及や発展活動にも力を入れています。当社が所属する奈良県靴下工業協同組合では「靴下ソムリエ」を育成し、奈良県靴下工業組合の理事長である父も、認定試験や公式テキストの作成に関わりました。合格率は約3割となかなか難しい試験で、東京・大阪・名古屋で過去3回開催し、生産者、メーカー、バイヤーの方々が多数受験されています。当社一社だけの成長・拡大を目指すのではなく、こうした活動にも力を入れ、靴下業界の活性化に一役を担える企業でありたいと考えています。

三ツ星靴下株式会社
営業部部長 堀田 征治氏

1987年生まれ。大学在学中1年間のアメリカ留学を経て2011 年三ツ星靴下株式会社に入社。次期後継予定者として、生産管理、営業、企画などに関わる。営業部門が独立した三ツ星産業株式会社の業務も兼任している。

Company Profile
三ツ星靴下株式会社

所在地 奈良県大和高田市大谷313
従業員数 38 名(正社員20 名、パート・アルバイト18 名)
http://www.mb-sox.com/

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