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建築・建設・工事 × イノベーションによる成長 補助金・助成金の徹底活用例
「新工法の開発で活路を開く」老舗四代目の挑戦

中原製作所

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木製ドア製造の下請け、OEMを行ってきた中原製作所(和歌山県和歌山市)。 従来にない「逆Vカット工法」を武器に、自社オリジナル商品を展開。短期間で、新たな事業の柱に成長させた。成功要因は、勝機を逃さず投資を行ったこと。その背景には、巧みな補助金活用があった。

市場縮小の中、新工法を編み出す

和歌山市内にある中原製作所は、木製ドアを中心とした建具製造を行う老舗企業。1898年(明治31年)、創業者の中原松次郎氏が、障子などを製造したのが始まりだ。早い時期から水車の動力を取り入れて木を挽くなど、先進的な経営を行っていたと伝えられている。

第二次世界大戦中は、軍務局からその技術の高さを買われ、精密さを必要とする木製のグライダーの部品などの製造を命じられた。その間、建具製造は中止を余儀なくされたという。戦後、操業を再開した同社は1948年に法人化、高度成長期の波にも乗って事業を拡大した。近年はマンションなどの集合住宅で使われる内装用木製ドアの下請け、OEM生産などを行ってきた。

しかし、建具市場は緩やかな縮小傾向にある。同社も、約30年前の最盛期からすると、売り上げは3分の1程度になった。厳しい状況の中、会社の将来を託されたのが、後継者である中原勝美専務。現社長、中原照之氏の娘婿で、創業者から数えると四代目にあたる。

入社した11年前まで、営業職やコンビニエンスストアの店長など、いくつかの職を経験してきた中原氏。もともと経営者になるのが夢だったという。しかし、折しもデフレ不況のさなか。08年にはリーマンショック、と経営環境の厳しさは増していく一方だった。「夢が叶ったと思ったら、経営とはこんなにつらいことなのかと思った」(中原氏)と言う。

そんな中原氏が、いま最も期待を寄せるのが、同社が特許を取得した「逆Vカット工法」だ。
一般に木製ドアの表面材は厚さ2・5ミリほどのごく薄い板に、0.15ミリほどの樹脂シート(塩化ビニルやオレフィンなど)を貼り付けたものが使用される。ドアの目地部分をつくるときに、従来は板の樹脂シート側に溝を入れていたが、それだとシートが途切れてしまい、切れた部分には着色や別の素材を貼るなど、別工程が必要となる。デザイン面でもコスト面でも問題があった。

それに対して逆Vカット工法は、薄いシート部分を残し、裏側の木材を削ってV字の溝を入れることで「折り箱のように曲げることができる」と中原氏。新工法によって、低コスト化を実現するとともに、表面の柄が途切れないという加工技術の幅が広がった。




進化するVカット工法。溝の形によって、角に丸みを持たせ
たりするなど加工のバリエーションも増やしている






初めての補助金で研究開発を促進する

逆V字カット工法の開発を開始したのは06年頃。あるお客さまの、「こんなものがあったらいいな」という声がキッカケとなった。試作を繰り返し、少しずつノウハウを集積していく中で、中原氏は「この逆Vカット工法に賭けてみたい」と考えるようになる。

ただ、そのためには、どんな素材でも対応できるよう、さらなる研究が不可欠。研究費がかさむことを考えると無理もできない……。


そんなあるとき、登録していた「わかやま産業振興財団」のメールマガジンを読んでいて、「新産業育成支援事業」という言葉が目にとまった。同財団が行っている補助金事業だ。それまで、補助金も助成金も活用したことがなかった中原氏は「きっと敷居が高いのだろう、と最初は思った」と言う。しかし結局は、研究費を少しでも増やしたいという気持ちが勝った。

情報収集し、周囲からアドバイスを受け、申請する決意をした。「初めてなので、書類を揃えるのさえ苦労した。なによりも十数人もの専門家の前でプレゼンテーションを行い、質疑応答を受けたときは本当に緊張した」と中原氏。苦労して準備した甲斐あって、2カ月後、採択の知らせを聞いた。

書類審査で重要なのは数値だ。「売り上げの推移や、試作を何個つくるなど、具体的な数値にし、どう落としこんでいくかがカギ」と中原氏。プレゼン後の質疑でも、事業の計画性、実現性について問われることが多かったという。

申請の過程で、同財団の担当者との関係性ができたのも大きな収穫だ。補助金制度以外にも、同社が活用できる、さまざまな支援制度に関する情報を教えてくれるようになった。和歌山県が行っている「1社1元気技術」への登録も、そうした繋がりの中で生まれた。これは県内の中小企業が有する技術を、県の企業振興課が広報してくれるという制度で、「取引先を紹介してくれるなど、技術面でも販売面でも、非常に役に立った」と中原氏は言う。


事業スピードを高めオリジナル商品を展開

その後、同社では「ものづくり補助金」(中小企業庁)と「わかやま地場産業ブランド力強化支援事業」(わかやま産業振興財団)で、それぞれ2回、採択されている。

「ものづくり補助金」の申請では、認定支援機関になってもらった、きのくに信用金庫のバックアップを受け、逆Vカット専用機の導入を果たした。それまでは一般的なNC加工機を使用していたが、板を置く盤面の安定性が低く、溝を均一に削ることが難しかった。そのばらつきを調整するため、切削後にサンドペーパーで磨くことも度々あったという。そうした手間も新たな専用機では不要となり、格段に生産力が増した。13年度、14年度と、2回の採択で現在1台が稼動。2台目の導入のため、現在、申請準備の検討を進めているところだ。




ものづくり補助金を活用して導入したVカット専用機




一方、「わかやま地場産業ブランド力強化支援事業」は、販売面の強化を目的に申請した。それまで住宅メーカーなどの下請け、OEMだけを行ってきた同社だが、「Vカット工法の技術を確立した今、自社ブランドで勝負する機会」と捉えた中原氏。08年からは自社のオリジナル商品として、ホームセンターやネットなどを通した販売を開始していた。

そうした中で課題だったのが、エンドユーザーに向けた販売力だ。12年度に採択された際には、マーケティング調査、試作、カタログづくりなどに活用。さらに14年度の採択では、デザイン性を高めるため、著名なデザイナーと共同開発を行い、補助金はその費用に活用している。

過去6年間で、同社は金額にして数千万円の補助金を活用したことになる。ただし、補助額が大きければよいというわけでもない。同社が採択された補助金の場合、補助率が3分の2。3分の1は自己負担だった。また、実際に補助金が振り込まれるのは、採択後、数カ月先になることが多いため、過度な補助金活用は、後々、資金繰りが苦しくなるのだ。

「とはいえ、すべて自己負担でやった場合、この新規事業はもっと時間がかかっていただろう」と中原氏は分析する。現在、自社オリジナルの木製ドアの販売は順調に売り上げを伸ばし、全体の20%に達するほど成長した。また、その出発点となったVカット工法も、住宅メーカーから好評で、首都圏マンションなどで標準採用されるようになっている。

補助金はあくまで手段。明確な戦略と事業目標を定めたことが、同社の補助金活用の成功要因だといえるだろう。もっとも、住宅着工戸数の減少傾向は続いており、業界全体としての見通しは決して明るくない。今後、同社は、マンションだけでなく、一般住宅にも販路を広げる予定。リフォーム需要にも対応していくという。

「だからこそ、中原製作所の強みである技術力、企画力にさらに磨きをかける必要がある。今後も、補助金はそのために活用していきたい」と中原氏。Vカット工法で手にした低コスト、デザイン性での競争優位性を背景に、4代目の挑戦はこれからも続く。





「補助金活用は日々の情報収集から」と語る中原勝美専務。
老舗の四代目として伝統を背負う






Company Profi le
株式会社中原製作所
和歌山県和歌山市湊御殿1-4-2
073-422-2773
資本金 1000万円
従業員 25人
http://www.nakahara-1905.co.jp

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