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地域の医療と健康を支える「薬のスペシャリスト」を目指す

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当社は、1950年、現在の諫早市多良見町に薬剤師の祖父が開局した諸岡薬局が始まりです。65年に祖母が会社を引き継ぎ、薬種商販売業に業態を変更しました。その後、75年に父が引き継ぎ、93年に現在の喜々津駅前に店舗を移転。98年に法人化しました。現在は、常駐の薬剤師と調剤室を設ける必要のある「薬局」を4店舗、常駐薬剤師が不要な「薬店」を1店舗経営しています。薬店はドラッグストアと同様に日用雑貨も販売しています。調剤薬局は、近隣にある医院の患者層によって、客層が大きく異なります。内科は60代から90代までのご高齢の方が中心、小児科は、お子さんと20~30代を中心とした若い親御さんが中心となります。婦人科は当然女性の方ばかりですが、耳鼻科や皮膚科の患者さんは、年齢や性別を問わずいらっしゃいます。そこで、店舗ごとに少しずつ取りそろえる市販薬や商品も変えています。

全くの異業種から家業を継承

私は大学卒業後、東京でデザイナーとしてグラフィックデザイン作成の仕事をしていましたが、30歳の時に父から事業継承の話があり、2013年に入社、16年に代表取締役に就任しました。若手経営者塾(たちばな未来塾)に参加したのは、今から5年ほど前です。異業種から家業を引き継いだこともあり、ビジネス理論のSWOT分析などを学んだことが、会社の経営を考える基礎となりました。その後、さまざまな勉強会(たちばなビジネスクラブ未来など)に参加することで、自分の経営への考えを固めることができました。

きめ細かいカウンセリング

でドラッグストアと差別化当社の一番の強みは「地域密着」です。祖父の代からお客様一人ひとりの健康を願い、利益優先ではなくお客様に寄り添った薬局を、と心がけていました。薬局がドラッグストアと競合する場合、安売り勝負では負けてしまいます。ドラッグストアは、どこでも扱いがあるような一般薬を、幅広く安く販売するのが強みです。当社の薬局や薬店は、そうしたドラッグストアと差別化するために、「カウンセリング販売」を、これまで以上に意識するようにしました。ドラッグストアにないような専門的な薬を扱い、さらに健康相談をしたうえで、その方に本当に合う薬を提案する接客・販売スタイルです。これにより固定客.リピート客が徐々に増えてきています。

ライフワークバランスを推進し採用・定着も順調

他にも経営者塾の受講後、社長として取り組んでいることに、新卒の採用と、社員が働きやすい環境づくりがあります。薬局業界では、特に田舎になると、薬剤師がなかなか採用できません。手厚いサービスを行ううえで、正社員としての待遇が必須です。これは、薬局業界全体の最大の経営課題でもあります。周囲を見ても、売上低下ではなく、薬剤師不足のための廃業や売却が増えているのです。私が当社に入社した時は、調剤薬局が4店舗あったのに対して、正社員の薬剤師は3名でした。さらに、冠婚葬祭以外には有給が取得しにくいという雰囲気がありました。ワークライフバランスが提唱される昨今、どの業種であっても、働き方改革が求められています。



そこで当社でも、有給消化率100%を目指すことにしました。とはいえ、薬剤師の人手が足りておらず、採用も難しい状況です。薬剤師にいきなり有休を取ってもらうのは難しく、まずは比較的採用のしやすい事務員を増やし、事務員の有給消化率100%を目指しました。有給消化のために強制的に休ませるわけではありませんが、「有給消化率100%」と目標を掲げることで「休みを取りたい」と当然のように言える雰囲気になりました。ワークライフバランス推進として、育休や産休の取得率向上にも積極的に取り組んでいます。事務員が休みを取りやすい環境になると、職場の雰囲気もよくなり、新卒の薬剤師の応募も増えてきました。社長就任以降、新卒で2名入社し、来年も1名入社予定です。新卒の薬剤師が増えて一人当たりの負担が減ると、中途の薬剤師も働きやすくなります。薬剤師のUターン・Iターン就職も積極的に支援し、借上げ住宅や転居費用の負担など、住宅支援もしています。

将来の医療や薬のあり方を読み取り、生き残る薬局に

さらに社長就任後は、店舗ごとに数値目標を設定し、PDCAをきちんと回すようにしました。薬局は、調剤報酬が国で定められています。内服薬、外服薬など、薬ごとに点数が決められ、他にも時間外や休日・夜間などの場合も、加算があります。そこで、各店舗で数値の目標値を決め、週報・月報での報告を徹底しています。2日に1回は各店舗を回り、達成できた点、改善点を話していますが、数値の増減にはこだわりすぎず、方向性の確認を重視しています。調剤酬は2年に1回改訂があります。その点数の増減を見ることで、薬や薬局についての国の方針が見えてくるのです。現在の政府の方針として、医療に関する公的負担の圧縮のため、予防医療や在宅医療への移行という流れがあります。近年、調剤報酬で点数が高いのは、在宅医療に関係する「在宅患者訪問薬剤管理指導料」などです。

薬局は将来的に、個人宅や老人施設、介護施設などに出向き、薬の管理をすることを国から求められているわけです。また近年、「かかりつけ薬剤師」という制度もできました。これは、薬局と患者さんの結びつきを強め、より手厚くサービスができるようになるものです。通常であれば、薬局ではどの薬剤師が担当してくれるかわかりませんが、「かかりつけ薬剤師」を決めれば、いつも同じ薬剤師が担当します。患者さんの生活環境、持病、常用する薬などを把握して、より適切なアドバイスができます。例えば、持病で薬を飲んでいる人が、別の病気の薬も追加して飲むことになった場合、新しい薬の飲み忘れが発生しやすいものです。飲み忘れを防ぐために、新しい薬も以前からの薬と同様に、朝晩2回など同じタイミングで飲む薬にする、などの工夫や調整ができます。

10年間の人材育成で

どこでも通用する薬剤師に薬剤師がかかりつけ薬剤師や在宅医療をするためには、経験や知識、さらにコミュニケーション能力も求められます。当社では体系的な研修制度はありませんが、若手薬剤師を、先進的な取り組みをしている薬局に見学に行かせ、体験就労させるなどの取り組みをしています。また薬剤師会という勉強会にも、積極的に参加をしてもらっています。若手薬剤師にはキャリアステップとして、店舗を管理する管理薬剤師になってもらうというのが目標です。しかし当社では管理薬剤師が就任する店舗数が限られているので、どこに行っても通用する薬剤師を10年間で育て、その後は本人の独立やステップアップを、会社としてバックアップできればと考えています。有能な人材を育成して独立を支援する会社になっていきたいと考えています。

薬のスペシャリストとして

地域で信頼される薬局へ今後は、店舗数の拡大よりも、各店舗のクオリティーを上げていくことが目標です。私自身は薬剤師ではないので、薬局勤務は経験していません。そのため、薬局経営について、自身が薬剤師でもあった父や祖父と同じような思いは、正直持ち合わせていないのかもしれません。しかし、薬剤師ではない経営者だからこそ、客観的に見られること、できることもあるはずです。熱意ある従業員が働きやすい環境・夢を実現できるような環境をつくり、の一方で、国の指針であるかかりつけ薬剤師や在宅医療にも対応できる組織づくりをしていきたいです。患者さんの命に係わる薬局の現場では、わずか一つのミスも許されません。一人ひとりが「薬のスペシャリスト」という高い意識を持つことは当然ですが、薬剤師だけでなく事務員も、全員がもろおか薬品のチームとして、スタッフ同士のコミュニケーションを取り、これまで以上にお客様の信頼を得られる薬局を目指していきます。


有限会社もろおか薬品
代表取締役 諸岡 健吾氏


1983 年長崎県生まれ。大学卒業後はデザイナーとして、HP、ポスター、チラシなどのグラフィックデザインを手掛ける。2013 年もろおか薬品に就職、16年代表取締役に就任。


Company Profile
有限会社もろおか薬品

所在地 長崎県諫早市多良見町化屋786-9
従業員数 29 名
http://morooka-yakuhin.jp/

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