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製造 × 後継者による事業革新
「多品種少量」に特化して自社の強みに資源を集中

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当社は1938年に私の祖父が創業しました。祖父は木型の製作をしながら、鋳物工場の工場長を兼業していました。70年、鋳物工場を経営していた会社が撤退したため、大阪で働いていた父が戻り、工場と従業員を引き継いで法人設立をしました。現在は、船舶、上下水道機器、産業機械製品の一貫生産をしています。具体的には模型製作、鋳造、熱処理、機械加工などです。私は大学卒業後、大阪で教育関連の仕事に就きましたが、子供の頃から工場を見て育ち、地元が好きだったので、いずれは会社を継ぎたいと思っていました。大阪で10年働いたのち地元に戻り、2007年に常務取締役として就任、16年に代表取締役に就任しました。

転機を迎える鋳造業界で時間をかけて進めた事業承継

津山信用金庫さんの未来塾に参加したのは14年、常務取締役の時でした。父が心臓の病気を患ったこともあり、42歳で代表取締役に就任しました。常務取締役の頃も、父とはあまりぶつかることもありませんでした。それは、父が最初から権限を持たせてくれ、比較的自由にやらせてもらっていたからでした。さらに社長になる際には「自分の思う通りにやれ」と、転換期にある鋳造業界で新しいことに取り組みたいと考えていた自分の背中を押してくれました。その父も今年の9月に亡くなりましたが、結果的に6年くらいかけてゆっくりと事業承継したような形になったため、スムーズな事業承継だったと周囲にも評価していただきました。

多品種少量への特化を強みに、他社と差別化を図る

当社は先代の頃から「多品種少量生産かつ短納期」をモットーにしてきました。1個の注文から受注しています。お客様からは「大量生産品の生産ができないか」、「専用ラインを増設してもらえないか」というお問い合わせを受けることも多かったので、一時は大量生産への対応や大量生産用機械の導入を検討したこともありました。しかし未来塾で、自社の差別化やランチェスター戦略を学び、先代からの方針である多品種少量に特化し、その分野で新しい技術に取り組んでいくことの大切さを、改めて実感しました。当社の特徴は、多品種少量で重量や形状にも幅広く対応しているということです。重量だと1キロから3トンの製品まで、構造も簡単なものから複雑なものまで、また数量も1個から数百個まで製造できるということで、他社と比較してもかなり柔軟な対応が可能です。開発のプロセスでも、新製品試作の場合は図面設計の段階から、お客様と当社の担当者がコミュニケーションをとりながら進めます。図面設計される方は鋳物の知識が少ない場合が多いので、当社が開発の段階から携わることで、試作から量産になる際も、作りやすい形状やコストを安く抑える形状などを提案することができます。



即戦力となる人材を採用し3次元のものづくりに対応

現在、鋳造業界にも「3次元データを使ったものづくり」という転換期が来ています。当社もその流れに乗り遅れてはいけないと考えています。2次元データから3次元データを作り、コンピュータでシミュレーションをして、どこに欠陥があり得るかを検証します。以前はこの種の作業も技術職の人が長年の経験と勘で行っていましたが、デジタル化することで、今までの経験と勘をデータの知識として残すことができるようになりました。10年以上前から3次元データには興味を持っていたため、3D‐CADや、シミュレーションの使い方など自分で習いにいきました。その後、3Dデータの活用が得意な知人と連携し、他社でシミュレーションしてもらう方法で取り組みました。当時は、シミュレーションの速度も遅く、検証するのに数日かかっていました。しかし、ここ最近はソフトやコンピュータの性能も飛躍的によくなり、簡単なものなら1~2時間で検証でき、さらに精度もよくなりました。シミュレーションソフトの導入を検討するにあたり、現場の者にコンピュータを教えることも考えていましたが、継続的な活用を進めるために、3次元データに興味のある元システムエンジニアを中途採用しました。3次元データを扱う同業他社はありますが、なかなかパソコンに強い人材を確保できず、有効に使いこなせていないという話を聞きます。しかし当社では、人材を確保できたことで、強みを強化できるようになりました。

大量生産を諦める決断で資源を自社の強みに回せた

3Dデータを活用したものづくりには多額の投資も必要になります。しかし大量生産の方向性を捨てたことで、大量生産のラインや機械導入の必要がなくなり、その分、多品種少量を強化するために投資を集中することができました。また、ものづくり補助金も活用し、3Dデータから木型を削り出す機械も導入することができました。現在は、最新技術をさらに取り入れられるように計画中です。その1つは3D砂型です。これは、3D砂型プリンターによりダイレクトに砂型を作る技術で、模型を作る必要がなくなります。現在他社と連携し3D砂型によるものづくりをすすめており、軌道にのれば社内にも機械導入し、競争力を強化したいと考えています。また、当社の一番の課題は「模型製作、方案の伝承」でしたが、コンピュータでデータ化することで、職人の熟練技能のノウハウを社内で引き継げるようになったというメリットがありました。さらに重要なのは全員で考える土台ができたということでした。今までは模型をどのように作るかという方案はほとんどが模型担当者のみで考えていましたが、方案を共有してシミュレーションできるため、不良が出た場合なども全員で対応できるようになりました。

自社の弱みの部分は他社との連携でカバーを図る

「多品種少量生産、かつ短納期」という、当社伝統のモットーは変わりませんが、重要なのは、できないことは他社と連携して解決することだと考えています。最近では他社と連携して、大量生産や異材質、製缶製品にも対応できるようにしています。同業者にも得意不得意があります。当社は手づくりで生産しているため、数百個の受注が続くと、製造ラインが詰まり気味になり、従業員の負担になってしまいます。しかし同じ多品種少量生産でも、量産ラインを複数持っていて100個単位の生産を得意とする会社もあります。そこで、そうした他社と連携し、模型を作り、製作は他社に外注し、製品の品質管理や機械加工を当社で行うという流れでも製造を行っています。特に水道関係の部品では、通常の鋳物より成分分析や強度の検査など、試験に手間がかかります。新規に着手するには、大変手間のかかる工程です。当社は昔から水道関係の部品を製造しており、技術やノウハウを蓄積しているので、品質管理をスピーディーに行うことができます。これも当社の強みが生かされる分野と考えています。


未経験から活躍できるような新人育成システムが課題

また、未来塾では、人材育成の重要性についても実感しました。現在どの業界でも人材不足が深刻ですが、IT化を進めることで、未経験の人でも勉強次第で技術取得が昔よりも短期間でできるようになっています。しかし、当社ではまだ効率的なスキルアップの仕組みを整備できていないことが課題です。以前の当社では、3S活動や5S活動(整理・整頓・清掃+清潔・しつけ)すらできていませんでした。未来塾では、そういった基本的な部分での気づきがあり、現在、職場環境を整え、組織の強化を図っているところです。数年前に初めて現場に女性が入社し女性の割合が増えつつあるので、衛生面や暑さ対策なと、職場の快適さの改善にも力を入れていきたいと考えています。当社は基本的には営業活動はしていません。新規のお客様は、ほとんどが得意先から紹介された方。または口コミや「多品種少量」「船舶部品」などのキーワードをネット検索して当社のHPを知った方などです。これを継続するためにお客様からの信頼をしっかりと得続けることが大切だと思っています。当社におけるこれまでの自分を振り返ると、常務時代に未来塾に参加することができ、経営のことを一から勉強できたことが、得がたい経験になったと思います。自社の強みや弱みを考え、経営理念を考えるきっかけにもなりました。先代からやっていた会社の方針が間違いなかったということを確信できる、よい機会にもなりました。また、同じ悩みを抱える仲間とも知り合うことができました。異業種にも横のつながりができ、現在も交流が続いています。今後も先を見据えながら、必要とされる存在、役に立つ存在となれるよう、自社を成長させていきたいと思います。

株式会社光岡製作所
代表取締役 光岡 宏文氏


1975 年岡山県生まれ。大学卒業後、教育関連の仕事に従事。2007 年入社と同時に常務取締役に就任。2016 年代表取締役に就任。鋳造技士・超音波探傷の資格を持つ。

Company Profile
株式会社光岡製作所

所在地 岡山県津山市福力16
創業 1938 年
従業員数 約50 人
http://mitsuoka.co.jp/

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