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製造 × 強い組織づくり
会社が人を大切にしてこそ“生涯現役”が可能になる

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「一流の製品は、一流の人格から」をモットーに、創業以来、全社員が一丸となったものづくりを整えてきた、西島株式会社(愛知県豊橋市)。取引するパートナーは、自動車や家電など、国内のものづくりを牽引する大手メーカーばかり。その仕事に、20代の若者から70代のベテランまで幅広い層の社員が一丸となって、生き生きと取り組んでいる。こうした体制を確立できたのは、創業当時から受け継がれてきた哲学のおかげだという。今年、社長業を継いで5年目を迎えた若き経営者・西島豊氏に、同社躍進の秘密をうかがった。

自社一貫生産体制を確立した国内有数の工作機械メーカー

総務省統計局の労働力調査によれば、2018年の就業者数は6664万人。そのうち、製造業の就業者数は1060万人を数える。これは卸売業・小売業の1072万人に次ぐ数字だが、やはりここでも人手不足が叫ばれるようになって久しい。国内の主力産業でありながら、人材の確保をはじめ、育成や技術の伝承などが、事業規模にかかわらず共通の課題として現場を悩ませている。そんななか、現場で技術を磨き続けてきたシニア世代にも広く活躍の場を与えているのが、工作機械を手掛ける西島株式会社だ。取引先は、大手自動車メーカーを中心に、自動車部品メーカーや産業機械メーカーなど幅広く、国内でも有数の工作機械メーカーとの声も高い。


工作機械のなかでも、同社が得意とするのは専用機。汎用機と違って、当然のことながら発注するクライアントによって仕様はさまざまであり、それに応えていくためには、多種多様なスキルを要求される。同社の強みは受注後の設計から組立まで、全工程を内製化していること。製造工程のすべてにおいて、ノウハウが集積され、同社独自の技術が蓄積されていることだ。そのことで、さらなる開発や、新たな分野への積極的な挑戦にもつながっている。こうした自社一貫生産体制を支えるのが、全社員の多能工化。機械設計から組立まで、ほとんどすべての社員がフレキシブルに対応することができる。これは弊社が町工場だった頃からの文化です。私も入社当初は、機械加工から始めました」。こう語るのは、同社代表取締役で、4代目社長である西島豊氏。すべての物事を自分たちで完結するという考え方は、同社の長い歴史のなかで乗り越えてきた危機から学んだもの。西島株式会社は今年、96年目を迎える老舗のメーカーなのだ。

「いいものをつくる」職人魂が会社の窮地を救った

創業は1924(大正13)年。もともと東京で技術屋として仕事をしていた西島吉三郎氏が独立し、三重県鳥羽で立ち上げた工場「西島鐵工所」が始まりだ。当時は発動機を製造していた。「職人集団らしく、創業当初から『いいものをつくる』との気概に満ちあふれていたそうです」。西島ブランドを追求した結果、発動機の品評会で日本一を獲得。全国に西島の名が知れ渡った。しかし、まもなく始まった戦争を経て、2代目の正雄氏が継いだ戦後の復興期になると、かつてのように発動機が売れなくなった。そこで、戦中に培った軍需産業の技術を活用して、「豊橋工倶西島鐵工所」として生まれ変わり、船舶や農業用の発動機の生産の一方、工具メーカーとして新たな道を模索した。


同社に転機が訪れたのは、まさにこの時。いいものをつくるという職人魂が受け継がれていたので、商品は高く評価された。しかし、量産できなければ意味がない。ただコストがかさんでいくだけになってしまう。「量産設備を導入しようにも、戦後の混乱期で資金はありません。人手も足りない。でも、技術力はある。じゃあ、自前で機械をつくってしまおう。そういう発想でした」。自社製の工作機械が、やがて同社製品の納品や検品に訪れる他社の目にとまり、自作の工作機械に注文が入るようになった。それがメインの製品となるのに時間はかからなかった。

画期的な製品開発にはベテランの技術が不可欠


愛知県という土地柄もあり、自動車メーカーからの受注が増え、自動車産業の発展とともに経営は安定した。ところが、まもなくバブルの崩壊。自動車の設備投資が急激に落ち込み、受注のキャンセルが相次いだ。こうした窮状を救ったのも、職人ならではの技術力だった。愛知県の渥美半島では電照菊の栽培が盛んで、東京で流通する菊の本数は愛知県産のものが1位となっている。出荷するために夜なべして手作業をしていたのは高齢者だ。しかし、なり手が減りつつあり、業界はこのままでは出荷作業がままならなくなる、と危機感をつのらせていた。


そこで、自動化する機械をつくれないか、との相談が舞い込んだのだ。職人たちは喜々として開発に取り組んだ。半年の期間を経て完成したのが自動選果機。花の下葉を除去し、茎の裁断や重量選別を行ない、10本を束ねて箱詰めするまでを自動化するというものだ。今でこそロボティクスは当たり前だが、当時としては画期的な製品だった。「そのうちに自動車産業も回復してきて、息を吹き返しました。と同時に、高齢者の活用という点に着目したのです」。当時はすでに3代目の社長に代替わりしていた。西島氏の父である篤師氏は、自動選果機を手掛けたことにより、自社の高齢社員に改めて目を向けることとなったのだ。戦後の混乱期から高度経済成長期まで、ものづくりに邁進していた同社には、他社では当たり前のように整備されていた定年制度がなかった。


長年をかけて、じっくりと人材を育て、技術を磨いてきた同社にとって、どのようにキャリアを終えるかということに、まだ考えが追いついていなかったのだ。「そこで先代が提唱したのが定年制ではなく引退を自分で決められる制度でした。弊社を救った『花ロボ』を開発してくれたのも高齢社員です。技術が根幹にある弊社のような会社に、彼らのようなベテランの存在は欠かせないのです」。


定年がなく、希望する限り現場でものづくりに携わる“ 生涯現役” は、すなわち、培ってきた技術を腐らせず磨き続けることにもなる。そもそも同社に定年という概念がなかったから成立する話で、定年のある会社が延長をするとか、制度を廃止するとかといったことと単純に比べることはできない。いずれにせよ、現在、同社に在籍する60代の社員は20名以上。70代の社員は5名以上いる。彼らの多くは、工作機の精度を左右する重要な工程で活躍。なかには、勤続40年の電気配線エンジニアで、78歳の女性も元気に働いている。

すべての従業員に居場所と役割を

2014年に社長に就任したのが西島氏だ。引退制の導入で熟練の社員が安心して働けるようになったなか、氏はさらに幅広い層を対象にした制度を推し進めている。「いつまでも健康に働いてもらいたいので、社員食堂で振る舞う食事は塩分控えめを心がけています。また、健康診断は40代以上が対象となるような全項目チェックを、全社員に受けてもらっています」。健康管理は、日々の生活習慣から。食事や健康診断に力を入れるのは、従業員に長く勤めてもらいたいからだ。さらに、西島氏はひとりでも多くの社員に日々、声をかけることにも気を配っている。そうすることで、仕事のやり方に不満を持つ社員の声を拾い上げていることにもなるからだ。


こうしたコミュニケーションも重要な社長の役割のひとつと、氏は考えている。幅広い層がひとつの場所で働くことは、決していいことばかりではない。ベテランはこれまでのやり方を変えたがらない。一方、若手は従来のやり方を一新したがる。このジェネレーションギャップによる衝突を避けるのも社長の役割だ。そのために、原則として50代以上には出張をさせていない。どうしても体力が衰えていく年代でもあるからだ。その代わり、技術の深堀りに専念させる。一方、若手にはどんどん外に出て、最新鋭のITやIoT技術を学んでもらい、それらを駆使した仕組みを取り入れていってもらう。それぞれ、変わらないこと、変えていくことでモチベーションを上げていく。ベテランならでは、若手ならではを考えた人員配置で、同社は前進を続けている。働きたいという意思があれば、健康である限り働き続けられるというシニア世代にとっての環境づくりは整ったが、西島氏はその先を考えている。


「これからは女性の活躍。さらに、外国人、障害者の方々にもっともっと活躍してもらいたいと思っています。私たちの会社は、人を大切にする。人が中心の会社である、という思いがあるからです」。つまり、目指しているのは、すべての人に居場所がある。すべての人に役割があるということ。その想いを全社員に届けていくことを、西島氏は会社経営の根幹に考えている。全社員が一丸となってのものづくりを目指す同社にとって、高齢者が生き生きと働ける環境や制度づくりは、ほんの手始めにすぎない。同社の取組みは誰もが簡単に真似できるものではないが、製造業における人手不足について考えを改めるきっかけになるかもしれない。


西島株式会社
代表取締役社長 西島 豊氏


1979 年、旧西ドイツ連邦共和国バーデンヴュルテンベルク州生まれ。金沢工業大学大学院卒業。アメリカシカゴに留学した後、2004年、西島株式会社に入社。取締役改革推進本部長などを経て、2014 年に西島株式会社代表取締役社長に就任。同年から西島メディカル株式会社の社長も兼務。現在に至る。

Company Profile
西島株式会社

所在地 愛知県豊橋市石巻西川町字大原12
設立 1924 年
従業員数 140 名
http://www.nishijima.co.jp/

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