3分で読める「現場を変えた社長の一工夫」

ビジネスサミットOnline » 現場を変えた社長のひと工夫 » 時間をかけて学生を採用し社員が成長する環境をつくる

建築・建設・工事 × 後継者による事業革新 「つくるひとをつくる」建設会社の人材戦略
時間をかけて学生を採用し社員が成長する環境をつくる

三和建設株式会社

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

人材不足が著しい建設業界において、採用倍率20倍、内定辞退者ゼロ。こんな実績をあげているのが、 大阪に本社を置く三和建設株式会社。「つくるひとをつくる」を経営理念に掲げ、社員全員が活躍できる環境を整えたことにより業績を大きく伸ばしている。日本における「働きがいのある会社」ランキングに5年連続でランクイン。2017 年には「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞の審査委員会特別賞を受賞している。

1人に140時間を費やす新卒採用

三和建設の主要事業は、食品メーカーの工場や物流施設、マンションといった建築物の企画・設計・施工である。とりわけサントリーグループとの縁が深く、創業以来長きにわたって山崎蒸溜所の施工・改修に携わっている。従業員139 名の中規模ゼネコンだが、入社希望者が後を絶たない。極度の人材不足に悩む建設業界では非常にめずらしいケースである。代表取締役社長森本尚孝氏は次のように言う。「いま建設業界の新卒採用は難しいと言われていますが、2019 年は14名が入社しました。以前は入社3年以内に半数以上が退職していましたが、社内制度を見直し採用を強化した結果、優秀な学生を採用できるようになりました。16年以降は新入社員の離職者は1割未満に留まっています」


なぜこれほどの成果を挙げられるのか。その理由は独自の新卒採用法にある。三和建設では1次選考から5次選考まで段階を踏んで採用活動を行う。まず1次選考には社長自らが登壇して学生に企業の理念を十分に伝える。社長が学生から直接質問を受け、業務に関するグループワークを行う。2次選考は1泊2日のグループワーク、3次選考は2週間の就業体験。希望する職種を中心にオフィスや作業所へ通って実際の業務を体験する。そして4次選考は社長との1対1の面接。それらを経て最
終選考では、学生がプレゼンを行う5段階選考だ。

「選考と言うより社会人になるための研修に近い内容です。自分が本当にやりたいこと、仕事で大切にしたいことを見出してもらう。たとえ入社しなくても、他社でも役立つ内容になっています。企業が学生を選ぶのではなく、学生が企業を選ぶ選考です」。
多くの学生に自社を知ってもらうために、社長が全国の大学で出張講義を行っている。建設業界の現状や働きがい、社会に出た時に大学の知識をどう生かしていくかなどをレクチャーする。だが自社の宣伝は一切しない方針だ。社長自らが採用の初期段階から関わり、時間をかけて学生と交流して見極めていく。この手法が効果を生んでいる。

三和建設は祖父の森本多三郎が戦後間もない1947 年に創業。戦災を受けた工場の鉄骨を再利用するというアイデアで次々と大手企業の工場建設を手がけていく。その後、軽量鉄骨2階建ての事務所を日本で初めて建設するなど、建設業界で頭角を現していく。順風満帆であったが、森本社長が入社した2001 年当時は、様相が変わっていた。建築業界全体が不景気に陥っており、会社を取り巻く環境が非常に厳しくなっていたのである。「まず仕事がとれませんでした。価格競争が熾烈を極め、リストラの嵐が吹き荒れ、新卒採用も難しい状態。数多くの同業他社が資金繰りに窮して倒産していきました」。

不景気の余波で民間企業は設備投資を控えるようになり、新たな顧客の開拓に追われるようになる。ほとんど利益の出ないような三次下請けも売り上げのために引き受けねばならない状態になる。工事代金の支払い条件が厳しいケースも多かった。「当時は実質的に債務超過の状態でした。財務改善が遅れ資金繰りに窮するようになりました。社有施設や収益物件、有価証券など売れるものはすべて売って現金を捻出せざるを得ない状態だったのです。残ったのは社員とお客様、協力会社だけになりました。それらの資産の中でとりわけ大きかったのが社員の存在でした。その大切さに気づいたことが、のちの経営理念である『つくるひとをつくる』につながったのです」。





社員の成長を促す多彩な施策




2013 年に、「つくるひとをつくる」を経営理念として発表。以来、三和建設ではこの理念を基盤とした数々の企業内活動に着手していく。まずは手帳型の冊子「コーポレートスタンダード」を全社員に配布。この冊子には、経営理念をはじめ、ビジョン、仕事の指針、期間重点目標など、全社員が共有すべき情報が明記されている。「全社員が会社や自分のあり方を改めて考えるきっかけにしてほしいので、毎年更新しています。決算後の利益配分に関しても明記して全社員と共有しています」。日報には独自に開発したオンラインシステムを採用し、全社員が書き込めるようにしている。コメント機能もあり、内容は全社員に公開される。「埋もれていた情報や、疑問、日々の出来事を共有することで、会社の透明性が高まってきたと思います」。

日々の作業において改善したことを共有する「改善報告制度」も効果を発揮している。作業工程の見直しや事務書類の書式変更、機材の設置など、工夫・改善したことを全社員が報告して社内で共有。毎月70件から80件の報告が届いており、業務改善に大いに役立っている。本社の1階には「ひとづくりホール」を設置しており、ここに年に2回、全社員が集まって「SANWA サミット」と題した会議を丸一日かけて行っている。「会社の取り組みを話し、経営理念を再確認してもらう場になっています。建設業は大半の社員が現場に駐在しているため、どうしても孤立しがちです。それでは社員の連帯感は生まれない
と考え始めた行事です」。こういった活動も手伝って、業績は伸びている。4年前に比べて売り上げは約150%、経常利益においては約450%に増加している

メンター制度と寮生活で新入社員を支援

新入社員へのケアも手厚い。入社3年目までの若手社員に、専属の相談相手(メンター)として先輩社員がつく。月に1度面談をして、仕事やプライベートの相談にのっている。メンターは別の署の社員が担当することになっており、上司や同僚には相談しにくいことも気軽に話せる環境を整えている。面談にかかる飲食費として、会社が月に5000 円の補助金を支給している。18年から新入社員は全員1年間寮に入って共同生活を送る制度もでき、専用の「ひとづくり寮」を新たに建設した。

「新入社員は2週間の研修期間しか顔を合わせません。その後は現場に出向くため、交流する機会がほとんどないのです。寮があれば毎日、顔を見ることができますし、情報交換もできる。横のつながりを強くするために、あえて寮を始めました」。若手社員が企画した寮は1階に広い共有スペースを設け、自然と人が集まるように工夫。毎晩、その日の出来事を話し、気楽に悩みを相談できる場所になっている。また、食事会や同期の誕生会などのイベントも定期的に行って交流を深めている。

17年には、「SANWA アカデミー」という社内大学も開校した。社員の知識や経験、技術を体系化して伝える学校である。1年ごとにシラバスをつくり、講師、受講する社員、開催日時を決めている。「SANWA アカデミーの目的は受講する社員だけでなく、講師自身の成長の機会でもあるのです。講師になることで自分の持つ知識を見直していく。このプロセスが成長を促すと考えています」。

社員は年間に6から36講座を受講することになっており、進捗管理といった基本的な知識から、設計図の見方、プレゼンの技術など専門的なものまで60講座を開催している。「建設会社は建物をつくるのが仕事です。しかしそれ以上にお客様にとって有用な価値を提供することが必要だと考えています。建物をつくるのは、『ひと』です。そのために重要なのは『ひとをつる』ことです。経営理念に共感し、人間力のある社員を育成することに全力を注いでいます」。








1971 年京都市生まれ。大阪大学工学部建築工学科卒業、同大学院修了。大手ゼネコンで施工管理を経験した後、2001 年、三和建設株式会社に入社。2008 年、四代目社長に就任。一級建築士。著書に『「使える建物」を建てるための3つの秘訣』、『人に困らない経営~すごい中小建設会社の理念改革~』など。

「働きがい」づくりのポイント
●あらゆる情報を社内で共有し、
風通しのよい環境をつくる
●採用に全力を注ぎ、
経営理念に共感する人材を獲得する
●社員が交流できる場をつくり、
仲間意識を高めていく



三和建設株式会社
所在地 大阪市淀川区木川西2-2-5
設立 1947 年
T E L 06-6301-6636
資本金 1 億円
売上高 106 億円(2018 年9 月期)
従業員数 139 名
http://www.sgc-web.co.jp/

記事の絞込

■業種
■カテゴリー

業種

カテゴリー