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製造 × 後継者による事業革新 経営者塾の受講者が語る
まっすぐ・丁寧なものづくりで 子どもの健やかな成長を支える

豊橋木工株式会社

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戦時中の1944年に設立した弊社は、飛行機の部品製造からスタートしました。戦後は木材椅子の専門メーカーとして、結婚式場や葬儀場の椅子なども手掛け、高度成長期時代には業績もよく、椅子を作れば作っただけ売れた時代もありました。しかし、海外の低価格の家具が輸入され始め、国内でも量販店が低価格で家具を販売するようになると、業績的に非常に厳しい状態に陥りました。私は大学卒業後、国内の大手家具メーカーに就職し、営業として勤務しました。当初は会社を継ぐ予定はありませんでしたが、自分も何かできないかという思いが大きくなり、2011年に入社することになりました。

子どもの健やかな成長を「椅子」でサポートしたい

私が入社した当時は、OEM中心の工場からナショナルブランドの製造にシフトしたばかりの頃で、「アップライト」という子ども向けの食卓椅子も、その一つでした。そもそもアップライトを製造するようになったのは、ある通販雑誌のオリジナル商品として、依頼を受けたのがきっかけでした。

家具の製造方法として、りんごの皮のように薄くむいた木材を、何枚も重ね合わせて接着し、加熱して曲げて成形する「成形合板」という技術があります。特殊技術ではありませんが、専用の製造設備などが必要で、全国に成形合板ができる会社は10社程度しかありません。

いろいろなタイミングと商品ディレクター、家具デザイナーとの出会いも重なって、この「アップライト」という椅子を弊社で製造することになったものの、スタート時は期待ほどの数は売れませんでした。しかし私はこの椅子を見て、「もっと売れるはずだ」と確信しました。なぜならアップライトには、客観的なデータに裏付けられた需要があったからです。

ものづくりのポイントは、「お悩み解決」だと思います。消費者が困っていることに価値を提供することが大切なのです。あるアンケートでは、子どもを持つ親の悩みの1位は子どものアレルギー、2位は子どもの姿勢の悪さ、猫背になりがちなことでした。アレルギーは家具では治せませんが、正しい姿勢は椅子によって守ることができます。

アップライトは、正確な人体計測データに基づいて作られます。子どもは日に日に成長しますが、成長に合わせて座面と足台の位置を調節することで、背中のS字カーブを保ち、正しい姿勢へと導きます。入社後、アップライトの営業をしながら、どうしたらもっと売れるかを考えました。

当初は身長に応じて二つのモデルから選んでいただいていましたが、「1人の子どもに2台買うことになるの?」との声を多数いただいたため、1台で対応できるようにモデルを一つに集約し、ボディカラーを増やしたり、安全性を高めるパーツを追加したり、座面もカバー式に変えるなど、お客様からのリクエストを一つずつ形にしていきました。

改良版を2014年に発売すると、少しずつですが売り上げが伸びていきました。それまでは月に20~30脚程度でしたが、200脚前後まで売れるようになりました。2016年頃から、「こんな子ども椅子がある」と、ブログ等でアップライトを紹介くださる方が、とても増えてきました。実際に使用しないとわからないようなことを、良い点も悪い点も細かく書いてくれたことが注目を集めたのか、100脚以上も売り上げが増えました。

その後も、『この椅子が1番』という本で、「5歳の子どもに座らせたい椅子」の1位をアップライトが獲得し、驚きと同時に、大変励みになりました。おかげさまでさらに注文をいただくようになりましたが、1台1台丁寧に製作したいので、月に500脚以上は生産しません。納品まで1カ月から2カ月お待ちいただいている状態です。











良い椅子づくりを通じてお客様も社員も笑顔にしたい

蒲郡信用金庫さんのGNBC(がましんニュービジネスクラブ)若手経営者育成講座には、14年に参加しました。ちょうどアップライトを改良した年で、会社の転換期となった時期です。勉強会では、商品力を高めるための顧客アンケートの大切さや経営理念の重要性を学び、社員一人ひとりとコミュニケーションをとることの大切さを再認識しました。普段は意識していなかったことを改めて振り返ることができる、気付きの多い勉強会でした。

現在、アップライトの販売は好調で、業績は過去4年間、毎年10~15%伸びています。14年は総売上におけるアップライトの割合が23%だったのが、現在は45%と、総売上の半数近くを占める主力商品になっています。しかし、アップライトが好調なうちに、第2、第3のヒット商品を作っていきたいと考えています。

そこで、蒲郡信金さんに協力をいただきながら、ものづくり補助金を利用して学校、図書館、塾等、学びの場での姿勢を守る学習用椅子「マナビノイス」の開発・販促をし、生産性向上のために新たな機械設備も導入しました。今年、元号が変わるタイミングで、専務から社長就任を考えています。

私は技術者ではなく、ものづくりができる人間ではありません。ですから、いかに社員を笑顔にし、モチベーションを上げるか、いかに社員に頑張ってもらって良いものを作ってもらうかが、経営者として問われると思っています。自社の理念である「良いイスは、笑顔」。これは、お客様に頂戴した言葉ですが、とても胸に響きました。

弊社は昨年70周年を迎えましたが、これからも「まっすぐで丁寧なものづくり」を心掛け、100年企業を目指していきたいと思います。
















豊橋木工株式会社
専務取締役 近藤 泰一郎 氏

1975年愛知県生まれ。大学卒業後、大手家具メーカーに就職。営業職として
13年間勤務。2011年、祖父が創立し父が代表取締役を務める豊橋木工株式
会社に入社。営業部門の責任者を経て、専務取締役に就任。

Company Profile













豊橋木工株式会社
所在地 愛知県豊橋市杉山町字知原12-1052
設立 1944年
創業 1948年
TEL 0532-23-2151
従業員数 35名
資本金 5000万円
売上高 3億円
http://toyomoku.co.jp/

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