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サービス・IT × イノベーションによる成長 目指すは福岡発の売り上げ100億円超ベンチャー
自治体特化のサービス提供で地方活性化の一翼を担う

株式会社ホープ

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「自治体に特化したサービス」という新しい市場を切り拓いた株式会社ホープ。創業当時は「どこにも相手にされなかった」という自治体のさまざまなスペースを利用した有料広告事業が、現在は全国の地方自治体の多くに導入されるサービスに育った。2016年には東証マザーズおよび福証Q-Boardに上場。自治体に特化したサービスの多角化を進め、広告事業だけではなく自治体の情報を発信するメディア運営、自治体職員向けの媒体制作、さらには電力の販売などに事業領域を拡大しつつある。創業以来のブレない理念をもって、さらなる飛躍を見据える、代表の時津氏に話を聞いた。

財源確保とコストダウンを実現する自治体向けサービス

当社は2005年、福岡市で創業。自治体に特化したサービスを展開しています。事業分野は、広告事業、メディア事業、マーケティング事業、エネルギー事業の四つ。うち広告事業は創業時から取り組むもので、自治体の広報紙やホームページ、庁舎内の壁面などのスペースまで、広告掲出が可能なさまざまなスペースを有料広告化するサービスとなっています。

また、自治体が発行している専門性の高い市民向け情報冊子などを自治体と無料協働発行するサービスも展開。これらはいずれも自治体の財源確保やコストダウンを実現するもので、自治体財源への寄与額は、創業から2018年9月末時点の累計で約60億円を達成しています。

二つ目のメディア事業では、自治体が住民へ情報配信するアプリなどを提供。三つ目のマーケティング事業では自治体へのニーズ調査や営業代行、自治体職員向け情報誌制作など、自治体との関係を活かしたサービスを提供しています。

そして四つ目のエネルギー事業は、自治体が抱えるエネルギー問題に着目。市場から電力を調達し、電力会社が保有・管理する送電網を使って電力を安価に安定供給することで、自治体の経費削減を実現するといったサービスを提供します。

前期の決算では、創業来、注力してきた広告事業が、約22億7000万円の売上高の約9割を占める状況です。しかし、今後はこの領域に止まらず、自治体向けのサービスを拡充する方針をとっています。ますます変化する自治体に、何かあったら最初に相談をしてもらえる、自治体のパートナーになる。そして2022年には、売上高100億円の達成を目標に掲げています。
















「自治体」に見出した変化と拡大の可能性

創業したのは、私が大学を卒業する1カ月前のことです。父が商売人だったこともあって、自分はサラリーマンにならないと決めていました。ただ起業を志してはいたものの、特別な知識も技術もない。打って出る市場の見極めに、頭を悩ませていたところ、海外留学時に知り合った友人の行動にヒントを得ました。

彼がとある自治体に「高速道路の高架下をフットサル競技場として活用すること」を提案、それが採用され、フットサル場としての運営が始まったと聞いたのです。私は、「そんなことができるんだ」という驚きとともに可能性を感じました。地方自治体の多くは財政難で、さまざまな課題も抱えている。その解決に市場性があるのではないか・・・考え抜いた結果、そこに変化と拡大の可能性を確信し、人生を賭けて取り組む事業として明確にイメージすることができました。そこで法人立ち上げに踏み切ったわけです。

もっとも、いきなりの法人立ち上げも自治体を狙うことも、周囲の目には無謀に映ったようで、聞こえてくるのは諭す言葉ばかり。祖父だけが二つ返事で、当座の資金にと150万円を貸してくれました。創業からしばらくは福岡県内を中心に、ひたすら自治体への営業に回りました。提案は最初から、広告に照準を絞っていたわけではありません。上下水道使用の営業代行から税金の滞納整理業務代行、ネーミングライツの販売取扱いなど、可能性がありそうなことなら、何でも提案しました。

しかし、一つとして成約には至らない。名刺を受け取ってもらうのも至難の業で、話を聞いてもらえることはほとんどありませんでした。福岡から佐賀や宮崎にも足を伸ばし、営業に、文字通り駆け回る一方で、学生結婚した妻にも経済的に支えてもらいながら、自身もアルバイトをして生活費を稼ぐ日々。突破口は見えず、精神的にも肉体的にも追い詰められて、気づけば72kgあった体重は49・8kgにまで落ち、資金もわずか1万円余を残すまでに減っていました。

ただ、少しずつ見えてきたこともありました。日々訪ね歩くうち、自治体の購買決定者の思考や、セオリーがおぼろげにわかってきたのです。そしてこの独特な世界に、少ない資本で新参の自分が食い込めそうなのは、広告分野だろうとあたりをつけました。以降、広告事業に特化して提案書を作り直し、これに集中した営業を続けました。

そして創業から1年8カ月が経った2006年10月、初の契約が成立したのです。相手先は、福岡県太宰府市。広報紙の広告の入札で、門戸を開いてくれたのです。応札企業は、当社のほかに広告代理店が1社。実績のない私が、「継続の先にしか革新は生まれない」ことを疑わずに進んだ結果、勝ち取った受注でした。

自治体の契約が取れると、今度はすぐに掲載する広告獲得のための営業にかかりました。もちろんこれも始めてのことで、全くの手探りです。業界では基本中の基本である媒体資料(広告の価格表)が必要なことも知らない素人。必要に迫られて、既刊の紙面に直接、赤ペンで広告枠を手書きしたものをその代わりにして、飛び込みで行った店舗や企業で、驚かれたり、叱られたりしながら、広告枠を販売しきることができました。

自治体への営業は、この太宰府市での成約が機となり、まるでオセロゲームで角をとった時のように、一気に状況が好転しました。それまでに営業していた自治体やその周辺自治体から、提案を求める電話がかかるようになったのです。この一件を自ら新聞社に売り込んで、記事に書いてもらったことも、一気に認知を広めるきっかけになりました。

顧客にとってのネック解消が可能にした「前例なし」の契約

初契約は、まさに「潜在的なニーズが顕在化したもの」だと私は思いました。そしてこの時、明らかな時代の波が寄せてきたことも実感していました。2005年当時は横浜の中田宏市長が「自治体も財源を自ら稼ごう」と、行財政改革の旗を振り始めた頃。その機運は、全国的に高まっていきました。

影響は非常に大きく、徐々に呼応して動き出す自治体が増え、ムーブメントになりつつありました。創業から1年8カ月、虎視眈々と狙いを定め、地道に活動して来た私が、ようやく来たその波に乗ったという形です。市場は私が拓いたのではなく、波がやってきた。だから特別なことは何もしていないのです。全国の政令指定都市から順に片端から架電して、提案する。信念をもって、とにかく一つひとつ丁寧に形にしていきました。

仕事をする中で見えてくるニーズをしっかりと捉えて、丁寧に仕事をすることを心がけました。これは結果論ですが、当社が早い段階で波に乗ることができ、一定の評価をいただけるようになった一因を挙げるとすれば、自治体が嫌がることに気づけたからかもしれません。

自治体が嫌がること、それは「変数」だと私は思いました。自治体の活動は事前の予算ありきです。予算枠内で活動をする組織ですから、決定にあたっての不確定要素を極力なくしたいのは、当然といえば当然です。一方、いわゆる広告代理の業態は、手数料収入によって成り立つもの。この場合、媒体をもつ自治体側にとっての実収入は、事前には読み切れない「変数」になります。

そこに私が提案したのは、自治体の媒体の広告枠を当社が最初に取り決める額で買い取って販売するというモデルでした。代理店ビジネスを知らないからこそのスタイルですが、リスクとリターンが対で、リターンが見込めるのであれば、リスクをとってトライすべきというのが私の考え方です。これが自治体のニーズと図らずも合致した。当社がリスクを負うことが、結果として導入のハードルを下げたと思っています。

日本全国の自治体を通じて新しい価値を提供する

経営者として重視してきたことの一つに、自治体と向き合う姿勢を確立して当社の文化を作ることがあります。そのため2013年までは採用対象を新卒に絞り、育成に力を入れて来ました。

地方のベンチャーにとって人材の確保は課題とされがちですが、幸いそう感じたことはありません。むしろこの地にあって100億円企業を目指すと公言する当社は、首都圏の数多あるベンチャー企業に比較しても、注目されやすい。人材確保においても営業活動においても、地方発であることに、メリットを感じています。

現在、当社のサービスは、人口20万人以上の大規模自治体を中心に中規模自治体に広がり、さらに小規模自治体向けのネット上でのマッチングサービスも開始、拡大しています。市場は日本全国、顧客はどこにでもいます。約1700の自治体がありますが、地方の自治体こそ財政状況が苦しいのが現実です。当社が目指すのは、この地方の自治体を通じて人々に新たな価値を提供すること。それが日本全体を元気にすると考えています。

ベンチャー・スピリッツの貫き方
●イメージできる状態まで深く考え抜き、思考を現実化する
●リスクとリターンが対ならば、必ずリスクをとる
●「継続の先にしか革新は生まれない」ことを疑わずに進む


 株式会社ホープ
 代表取締役社長兼CEO
 時津孝康氏


1981年生まれ。
2005年福岡大学在学中に有限会社ホープ・キャピタルを
 創業し、自治体向けサービスを開始。
2007年有限会社を改組し、株式会社化。2009年ホープへ社名変更。

2013年資本金を1億2800万円に増資し、2016年東証マザーズ、福証Q-Boardへ上場を果たす。


Company Profile
株式会社ホープ
創業 2005年2月
所在地 福岡県福岡市中央区薬院1-14-5 MG薬院ビル7F
TEL 092-716-1404(代表)
従業員 178名(2018年9月末現在:臨時雇用者含む)
資本金 2億4694万円(2018年9月末現在)
https://www.zaigenkakuho.com

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