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製造 × 後継者による事業革新 経営者塾の受講者が語る
地醤油文化を支えるために 経営者としての意識を変える

株式会社冨士正醤油醸造元

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冨士正醤油醸造元は1909年に創業しました。屋号は「フジマサ」と言います。福岡県糟屋郡志免町に本社を構える従業員10名の会社です。

30年で消費量が50%減 大きく変化した経営環境

私は、幼少期は柔道、青春時代はラグビーに明け暮れ、大学卒業後は東京の大手広告代理店に就職しました。仕事はハードでしたがやりがいがあって夢中で働いていました。しかし、創業100周年を間近にして、父が経営に腐心している状況を知り、今までやりたいことをやらせてくれた家業への恩返しをしよう、醤油造りは自分の使命だと考え、2005年、家業を継ぐ決意をしました。当初は、何の知識もありませんでしたが、いざ中に入ってみると、非常に厳しい業界であることがわかりました。

醤油の全国の出荷量は毎年3%前後のペースで減少しており、この30年で事業所数は約半分近くに、醤油の消費量は50%までに落ち込んでいます。調味料の多様化や加工調味料の増加、米離れによる家庭での消費量の減少など原因は様々です。

それに伴い、中小事業者の市場は大きく失われ、大手・準大手と言われる20社ほどによる寡占が進みました。醤油市場の25%を、約1200社の中小の事業者が競い合っている状況です。後継者不足で廃業する事業者も増えています。

直面をした三つの「壁」と求められる自己変革

父から事業継承した私は、二つのことを意識しました。

一つめは技術の向上と、ブランド価値を高めることです。全国醤油品評会に出品、腕を磨くことで上位入賞の常連となり、2015年にはトップスコアで最高賞を受賞しました。

二つめは営業です。自ら営業をして、取引先の新規開拓をしていきました。しかし、技術を磨いても、新規顧客を増やしても、既存販路の減少は止められず、一向に経営状況は改善しませんでした。経営者として「壁」にぶつかっていたのです。

そんなとき、飯塚信用金庫さんのご紹介で、「いいしん未来塾」に一期生として参加しました。そこで私が学んだことは、「経営者の三つの役割」です。

第一は「経営上の結果を出すこと」。それまで、自分ががむしゃらに働きさえすれば、いい結果が得られるものだと考えていました。しかし、いくらがんばっても、結果が出せなければ経営者としての責任を果たせていないのと同じ。自分一人では何もできないのです。

第二は「お客様ファースト」。老舗だからというわけではありませんが、伝統や習慣、「変わらないこと」が大切だという価値観に自分自身も縛られていたところがあったと気づきました。商品、サービス、コミュニケーションを常に見直し、市場のニーズに合わせていく必要性を痛感しました。

第三は、「従業員が輝かなければ会社は輝かない」ということ。主役は社長でもない、ブランドでもない、商品でもない、従業員たちです。彼らが活躍できるような環境をつくっていかなければならないと思いました。

こうしてみると、私自身が会社の成長の妨げになっていたのです。自分が変わらなければ、この会社は変わらない。受講後は「経営目的」と「経営方針」を明らかにすることに取り組みました。

地醤油の価値を理解し守り、育て、高めていく

弊社のように古くて伝統的な会社にいると、仕事自体もどこか古くさく、面白みのないものと思われることがあります。

しかし「発酵」の世界は、とても奥深く、神秘的です。醤油も奇跡の中で生まれるものです。「ミステリアスで、マジカルで、ワンダフルな世界──」。若い従業員たちにはそう伝え、仕事の魅力を感じとってもらうように心がけています。また、この地域に育ててもらった老舗として社業を通して地域社会に役に立ち、この地で信頼され親しまれる会社を目指すということも伝えています。

経営的な施策としては、営業体制を整え、筑豊、飯塚といった近隣エリアを重点的に行うようにし、情報発信も積極的にするようにしました。商品構成の見直しも進め、お客様のニーズの変化に合わせ、基礎調味料を絞り、加工調味料を強化していきました。










少しずつ感じ始めた社員と会社の変化と成長

社員教育にも重点を置くようになりました。今までは、自分の姿を見て学んでほしい、という考えでしたが、部門ごとのティーチング、情報共有のミーティング、お客様の心を読み解くためのPOPのトレーニングなどに積極的に取り組みました。

これらの活動の結果、各部門で、自分たちが指標を立て、達成に向けて自ら動くようになりました。また、営業エリアを絞り込んだことにより移動時間が減り、お客様と接する機会と時間が増え、商品の反応を直接理解することにも繋がりました。

製造においても、受注製造から計画製造に切り替えることで、製造におけるロス軽減の意識が芽生えてきている状況です。集客やプロモーションにはまだまだ改善の余地がありますが、少しずつ売上増加に繋がり始めています。十分な成果とは言えませんが、確実に会社が成長していることを実感しています。

厳しい経営環境は続きますが、福岡に息づく醸造元の一つとして、地醤油文化を育て、地域、顧客、同業者、そして従業員にとってよい会社となるよう、経営者の役割を全うし、成長していきたいと思っています。


 株式会社冨士正醤油醸造元
 代表取締役 藤浩太郎氏


 1970年生まれ、青春時代はラグビーに明け暮れ、
 早稲田大学ラグビー部の主将も務める。
 大手広告代理店に11年勤務退社後、2005年入社、
 2010年代表取締役に就任。
 現在は、地醤油の3ブランドを製造する筑豊食品工業株式会社の
 代表取締役も兼任。




Company Profile






株式会社冨士正醤油醸造元
所在地 福岡県糟屋郡志免町別府1-8-16
TEL 092-935-1234
創業 1909年
資本金 500万円
従業員数 10名

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