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サービス・IT × イノベーションによる成長 「金融×テクノロジー」で躍進するフィンテック企業
ビジョンに共鳴するメンバーだけを集め 新たな事業を立ち上げる

株式会社マネーフォワード代表取締役社長(CEO)辻庸介氏

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IT技術と金融を結びつけたフィンテック企業の代表格として、注目を集める株式会社マネーフォワード(東京都港区)。個人向けの自動家計簿・資産管理サービス「マネーフォワード」や法人向けの「MFクラウドシリーズ」を展開しており、2017年9月には東京証券取引所マザーズに上場し急成長を続けている。同社の成長要因と、組織の土台となった創業メンバーの同志的結合について、同社代表取締役社長(CEO)の辻庸介氏に訊いた。

不安や悩みを解消できるお金のプラットフォーム

誰にとってもお金は大切なものです。人生において、お金は必要不可欠なツールであるにもかかわらず、日本人は自分のお金を管理する手法について学ぶ場面が極めて少ないのが現状だと思います。

多くの人が複数の銀行口座や証券口座を次世代経営者インタビュービジネス成長の秘訣を訊く注目の2018持ち、何枚ものクレジットカードを使って日常の生活を送っています。しかしながら、それら各口座の残高やクレジットカードの利用金額などをタイムリーに把握できている人はどれくらいいらっしゃるでしょうか。ネットバンクを使っている口座であれば即時に確認できるでしょうが、そうでない口座は通帳記帳しないとはっきりしたことは分かりません。

クレジットカードも利用明細が来て初めて来月の引き落とし額が分かります。将来の自分の夢を叶えるためには、そうしたお金の出入りを把握した上で、お金をどういうふうにマネジメントしていくかという知識が必要となりますが、現実それは大変煩わしいだけでなく、「具体的にどうすればよいか」などは誰からも教えてもらえない分野です。

私たちの目的は、「お金と前向きに向き合い、可能性を広げることができるサービスを提供すること」です。お金を上手くコントロールすることでユーザーの人生を飛躍的に豊かにできると信じています。

「マネーフォワード」は、銀行やクレジットカード、ネット証券など、複数にまたがる口座を一元管理し、自分の資産状態を把握し、目指したい姿を実現して豊かな人生を送りたい方に向けたサービスです。単に複数の口座の残高を一元管理するだけでなく、目指したい家計の状況とのギャップを可視化することで、無駄な支出を把握することができたり、将来の自分の資産状況をシミュレーションすることもできます。

また当社のメディア『MONEY PLUS』を通じて、資産の管理や運用に関する情報を得ることもできます。現在、会員は約600万人。30代が中心です。男女比率は半々くらいです。当社の調べによれば、「マネーフォワード」を利用することを通じて、会員の方は平均で月額2万円以上の節約を実感したそうです。

一方、ビジネス向けの「MFクラウドシリーズ」は、中小企業や個人事業主を対象に、会計・請求・経費精算など、バックオフィス全般のサービスを提供しています。会計事務所の顧問先が導入・導入予定のクラウド会計ソフトとしては、ナンバーワンです。

個人向け、ビジネス向けそれぞれの売り上げは、金融機関や会計事務所との連携が進んだこともあって2015年度から急激に伸びてきており、成長軌道の過程にあります。17年11月期決算では、個人向けは前年比プラス74%、法人向けについては前年比プラス105%という結果になりました。










顧客に支持され続ける理由は飽くなきサービス開発マインド

これまで家計のサービスや企業向けの会計ソフトの多くはインストール型ソフトとして提供されていました。その中で当社のサービスがシェアを伸ばしてきた理由の一つに、クラウド上もしくはアプリとしてサービスを提供しているということが挙げられます。ソフトのバージョンアップや保守に関する費用は不要。ユーザーにとっては安価な月額費用で利用できるという利点があります。

また、場所と時間を選ばず、スマートフォンやタブレットを使っていつでも、どこでも思い立った時にお金の状況を確認できるというのもクラウドの優位性と言えるでしょう。しかし、それだけでお客様に支持されているわけではありません。当社は次のようなスタンスでサービス開発に取り組んでいます。

第一は「利便性」の追求です。既存のサービスはお客様がデータを手入力して利用することが基本でしたが、当社のサービスは、一度、金融機関などと連携すれば、その後は自動的に入力されていきます。家計簿をつける場合、現金支払いは、レシートを読み込めば、自動的に仕訳けされて入力されます。専門知識が無くても誰でも簡単にお金の管理ができることを目指しています。

第二に「UX(ユーザーエクスペリエンス/ユーザー体験)」の追求。世の中にあるこうしたサービスは、ユーザーにとって使い勝手が悪ければ、あっという間に見放されてしまいます。そのため、当社が特に力を入れているのがUXです。ユーザーにとって分かりやすい、直感的に使えるインターフェイスの開発こそが生命線だと認識しています。妥協なきUXの向上は、当社にとって至上命題なのです。

第三に「バージョンアップのスピード」です。利便性もUXも、お客様が求めるものは刻々と変わっていきます。それに応えるために、当社ではいくつもの開発チームがそれぞれに小さなPDCAサイクルを回し、より適した技術やツールを日々、取り入れています。こうした開発力を担うのは、当然のことながら「人」。当社の強みは、何と言っても「人財」です。当社には、ミッションやビジョンに共鳴してくれる優秀な人財が集まってくれています。

何をやるかはもちろん誰とやるかが重要

当社のサービスがユーザーの皆さまに支持をいただけているのは、創業時から、優秀な人財が揃って力を尽くしてくれたことが大きな理由のひとつです。現在の当社の開発力を支えているのも、創業メンバーの開発への姿勢や考え方が、今の社員たちに強く影響しているからです。

私はグローバルな世界で活躍したいと大学卒業後にソニーに入社しました。その後マネックス証券に出向して働く機会を得ました。もともと金融の世界に興味があったことや、大企業にはないスピーディな経営を目の当たりにし、どんどん惹き込まれていきました。

やがてマネックス証券に転籍し、MBA(経営学修士)を取得するための留学をさせてもらうことになったのです。留学先で出会ったのが、創業メンバーのひとりである瀧俊雄(現同社取締役執行役員/マネーフォワードFintech研究所長)です。

彼は当時、野村證券に勤めており、私と同様にMBA取得のために留学していました。彼の掲げるビジョンやミッションに惹かれて意気投合し、彼と何度も議論をしているうちに、金融とITが融合できれば、おもしろいことができるぞ、との確信を得ました。今振り返れば、彼との出会いが、マネーフォワードの原点だったと言えると思います。

帰国した私は、金融というフィールドで、ユーザーの立場に立ったサービスを作りたいと考えるようになり、週末起業の形を取りながら、メンバーを募っていきました。私の目指す事業には、ITや金融、セキュリティといった分野の専門知識が必要不可欠です。

そこで、友人や、友人の友人など伝手を辿りながら集まったのが、都築貴之(当時ソニー。現取締役執行役員)、市川貴志(マネックス証券出身。現取締役執行役員CISO)といった初期ボードメンバーです。皆、それぞれ専門性の高いテクノロジーに通じており、いずれも私の理想と熱意に共鳴してくれた人ばかりです。

起業した私が彼らとともに開始した最初のサービスが「マネーブック」というものでした。これは、自分の資産や取引の内容をオープンにして相互に情報のやりとりをするというアイデアで、いわばお金のフェイスブックというべき仕組みを目指しました。

しかし、これは失敗に終わります。ユーザーがまったく集まりませんでした。正直、先行きが見えないこの時期が最も苦しかったのですが、最初の事業が失敗したにもかかわらず、私のもとから去ったメンバーは一人もいませんでした。私にとってこれは何よりの支えとなりました。それというのも、彼らとは「目先のビジネスが上手くいくかどうか」ではなく、「これから試行錯誤しながら実現していきたいミッションやビジョン」が共有できていたからだと思っています。

「この人達と一緒にやってダメなら仕方ない。次で頑張れば良いのだ。」と心から思えるメンバーが揃っていたことが大きかったと思います。彼らはいずれも各社でエース級の活躍をしていた人材であり、当社に所属することで大幅に収入がダウンしたのは間違いありません。しかしそれを不満に感じたり、仲間内で揉めたりしたことは一度もありません。お金目当てではなく、「世の中の役に立つサービスを手掛けたい」という理念を実現するために参画してくれているからです。

事業とは「何をやるか」はもちろんですが、それ以上に「誰とやるか」が重要だとつくづく思います。創業メンバーの高い開発力とUXを追求するマインドは当社全体の社員たちに受け継がれています。昨年も、自動貯金アプリ「しらたま」や、企業間の後払い決済・請求代行サービス「MF KESSAI」など新たなサービスをリリースしました。

当社は、個人や法人すべての人のお金の課題を解決する「お金のプラットフォーム」になることを目指し、サービスを創り出しています。私たちの挑戦は、まだまだ始まったばかりといえます。


 "この人と一緒にやってダメなら仕方ない。次を頑張れば良い"
 と思えるメンバーと事業を立ち上げる


 株式会社マネーフォワード
 代表取締役社長(CEO)辻庸介氏

 Profile

 2001年京都大学農学部卒業、2011年ペンシルバニア大学ウォートン校
 MBA修了。ソニー株式会社、マネックス証券株式会社を経て、2012年
 に株式会社マネーフォワードを設立。個人向けの自動家計簿・資産管
 理サービス「マネーフォワード」、ビジネス向けのクラウドサービス
 「MFクラウドシリーズ」などを提供。
 2017年9月に東京証券取引所マザーズ市場に上場。


成長のポイント
●使い勝手のよさ(UX/ユーザーエクスペリエンス)を追求し、開発し続ける
●最初期にこそ、ミッションや ビジョンを共有できるメンバーを集める


COMPANY PROFILE
株式会社マネーフォワード
住所 東京都港区芝5-33-1 森永プラザビル本館17F
TEL 03-6453-9160
設立 2012年5月
資本金 33億5069万7000円
従業員数 241名(2017年11月末時点)
https://corp.moneyforward.com/

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