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サービス・IT × イノベーションによる成長 ビジネスパーソンの埋もれた知見を「価値」へと変える「スポットコンサル」
「自分自身がほしいサービス」を「前向き思考」で実現する株式会社ビザスク 代表取締役CEO 端羽英子氏
個人の持つビジネス上の知見やノウハウと、それを必要とする個人・企業とを1時間からマッチングするスポットコンサルサービスを運営する株式会社ビザスク(東京都目黒区)。敷居の高いコンサルタントの専門知識よりも、実際に実務に携わった経験者の知見がほしいというニーズを掘り起こしたスキルのシェアリングエコノミーサービスは、オープンイノベーションの伴走者として、あるいは「働き方改革」時代のソリューションとして世間の注目を集めている。このビジネスがどのように生まれ、なぜ多くの支持を集めているのか。さらには創業直後の厳しい時期をいかに乗り越えたのか。同社代表取締役CEOの端羽英子氏に話を聞いた。
ビジネスパーソンの知見をネット上でマッチング
私たちが提供しているサービスは、ビジネスに関する経験やノウハウを持っているアドバイザーの方と、それを求める企業とをマッチングするものです。ビザスクには現在約5万2000名(2017年12月現在)のアドバイザーが登録されています。
内訳は、企業にお勤めの現役のビジネスパーソンが約7割で、残りは企業OBのシニア層、子育て中の女性など。一方利用者は、ほとんどは企業で新規事業開発や新たなプロジェクト等に関わられる方々で、中にはこれから起業される予定という個人の方もいます。
利用方法は簡単で、利用者は自分が抱えているビジネス上の課題や知りたいことをビザスクのプラットフォーム上に「公募」として公開、それに対して答えられる経験を持った方を募ります。また、アドバイザーは自身の職歴や経験を登録しているので、そのデータを検索して指名することもできます。
アドバイザーが見つかれば、サイト上で事前相談をし、双方が納得すればマッチング成立となります。その後は、対面や電話、ビデオチャットなどの形式で、1時間単位のコンサルティングが行われ、ビザスク経由で利用者からアドバイザーへ謝礼が支払われます。謝礼の額は原則アドバイザーが決められますが、平均では約1万5000円。当社は手数料として、そのうちの30%をいただいています。
また、それとは別に、法人向けのフルサポートサービスも用意しています。当社の専任担当者が利用者の課題を事前にヒアリングし、その内容に適したアドバイザーをコーディネート、マッチングまでを当社の責任で行うというものです。
こちらは主に大企業の方が市場調査などにご利用されることが多いです。ビザスクのビジネスモデルは、いわばスキルのシェアリングエコノミーです。近年、カーシェアリングや民泊など、様々な分野でこの業態が広がりつつありますが、その「経験」「知識」版と言えます。
1時間単位のコンサルティングなので、普段お勤めの方や小さなお子さんを抱えている方も、空き時間を有効活用できます。資格を持っていなくても、プロのコンサルタントでなくても誰もが自分の経験や知見の提供者になれる――。ビザスクというプラットフォームの意義もそこにあります。
認知度も徐々に高まり、マッチングの成立件数はまさに増え続けているところで、現在は依頼数が月間1000案件超です。アドバイザーの登録も過去1年では、月間平均2500名のペースで増えています。
なぜ伸びているかというと、現役・OB問わず、多くのビジネスパーソンが自分の持つ経験やノウハウをもっと社会で活かしたいというニーズが高まっているからです。最近の中小企業のご利用例でいえば、新規事業を始めたいという製造業の三代目社長が、「既存事業にリスクを負わせずに進めるにはどうしたらよいか」という悩みを、同じく三代目の社長で本業とは別の事業を展開し成功されている方に相談されていました。
その他「新しいコンセプトのアパート建築を考えているが、どのように集客できるか」「会社サイトをリニューアルしたい」といった案件が日々上がっており、それぞれ似たような経験を持つ方が、その疑問や悩みに答えています。
これまでちょっと相談したいことや課題が発生しても、高額なフィーを支払ってコンサルティング会社と契約し、相談するという方法しかありませんでした。しかし利用者にとっては、フィーに見合う成果に繋がるかわかりません。
多くの場合、理論化されたノウハウではなく、実際に経験された方の経験談の方が役立つといったニーズも多く、そうした方にとってビザスクは1時間単位と手軽で敷居も低く、1つの課題に対して複数の知見を安価に得ることが可能です。
一方、知見の提供者となるアドバイザーにもご満足いただけており「自分の知識が役に立ってうれしい」「当たり前だと思っていたことが自分の強みと評価されて仕事に励みが出た」という声をよく聞きます。セカンドキャリアを模索したいという方や、副収入を得られることにメリットを感じている方もいます。当社にはこうしたアドバイザーの知見データが日々アップされています。
5万人ではまだ十分とは言えず、さらに増やしていく必要がありますが、この知見データベースこそが当社の最大の強みとなっています。

ビジネスモデル発想の原点は自分自身の課題解決
もともと何かのプロとして一生働き続けたいという思いが強くあり、起業するというのはごく普通の選択でした。起業の準備は前職を辞めてからです。その時点では具体的なビジネスプランがあったわけではありません。
最初は「こういうサービスがあったらいいな」というアイデアをノートに書き溜めていきました。その中でこれはいける!と考えたのは、売り手が自分の経験から商品をお勧めする通販サイトです。しかし、それが現実の世界ではまったく通用しないことを、ほどなく思い知らされました。
このビジネスプランを持ってある方に相談したところ、1時間、強烈なダメ出しをされたのです。
「君はネットビジネスを何もわかっていない。これでは絶対に利益が出ない。成功確率0パーセント!」。
実は、その方からダメ出しと熱いアドバイスを受けている最中、私は「これだ!」という思いが芽生えていました。「この1時間にお金を払いたい」と思えるほど有意義だったからです。この経験がまさに、「スポットコンサル」の原型です。
すぐにビジネスプランを練り上げ、一カ月後には事業計画書を作成、半年後の2012年12月にはビザスクβ版をリリースしました。

成果が出なくても心は折れないやるべきことをやる
リリースして1年間はスポットコンサルというものが世の中に知られず、まったく数字が伸びませんでした。「その間、不安はなかったか?」とよく聞かれますが、実はまったくありませんでした。大局的な社会のトレンドを考えれば、このビジネスがうまくいかないわけがないと考えていたからです。
今後、日本の労働力が減少していく中で、定年後のシニア世代や育児休業中の女性の労働力も活用していかざるを得ません。フル出勤して働くのは難しいという方でも、隙間時間に働ける仕組みがあれば、必ず活用されるはずだという確信がありました。
企業にしても社内のノウハウ・スキルだけでは、激しさを増すイノベーション競争に勝てなくなってきており、社外人材の知識やノウハウを積極的に取り入れるオープンイノベーションの動きが加速しています。個人が持つ経験や知識がよりフレキシブルに活用されていく社会になっていくのは明らかで、その流通インフラである当社のサービスが時代のニーズに合ってくるのは間違いないと考えていました。
そもそも、事業がうまく伸びないのは自分のやり方が悪かったからにすぎません。どうにもならない外部要因もありますが、その中にあっても自分でハンドルできる部分というのは必ずあります。それをやらずして、うまくいかないと嘆いたり、へこんだり、心が折れたりするというのは「思い上がり」です。
無駄なプライドは不要。謙虚でなければならない。へこんでいる暇があるなら、やれることをやりたい。そういう思いでした。
当時の私のやるべきことは、効果的な情報発信をすること。実はそれまでの私はPRのやり方がまったくわかっていなかったのです。そこで、自分自身がスポットコンサルを活用して経験のある方からPR手法を学び、効果的な表現やタイミングでプレスリリースを出すといったことを地道に繰り返していきました。
その後「働き方改革」「副業解禁」「シェアリングエコノミー」など社会的潮流が高まり、その文脈で当社のビジネスがメディアに取り上げられることも増えていきましたが、それはたまたまではなく、事前にやるべきことをやってきた結果だと思います。当社では「世界中の知見をつなぐ」というビジョンを掲げています。創業当初は、自分自身の課題解決のために起こした事業でしたが、今はすべてのビジネスパーソンのためのサービスにしたいと考えています。
成長軌道に乗りはじめたとはいえ、まだまだやりたいことの1%もできていません。このビジョンを実現していくために、これからも新たな挑戦を続けていきます。
やるべきことをやらずして心が折れるのは"思い上がり"
株式会社ビザスク代表取締役CEO
端羽 英子氏
Profile
東京大学経済学部卒業後、ゴールドマン・サックス証券に入社。投資銀 行部門で企業ファイナンス等に従事。入社半年で妊娠し1年で退社。 USCPA(米国公認会計士)を取得後、日本ロレアルに入社。化粧品ブラ ンドの予算立案・管理を経験。MIT(マサチューセッツ工科大学)の MBA(経営学修士)コースに入学。2年後MBA取得。シングルマザー として働きながら子どもを育てる。投資ファンドのユニゾン・キャピタ ルに入社、企業投資を5年間経験後、2012年株式会社ビザスクを設立。
成長のポイント
●「自分自身が持つ課題を解決するためには」という発想で新ビジネスを構想する
●大局的なトレンドから社会のニーズを掴む
●苦境にあっても周りのせいにしない。前向き思考でやるべきことをやる
COMPANY PROFILE
株式会社ビザスク
住所 東京都目黒区青葉台4-7-7 住友不動産青葉台ヒルズ10F
TEL 03-6407-8405
設立 2012年
資本金 3億3335万3000円(資本準備金を含む)
従業員数 40名
https://visasq.co.jp/
私たちが提供しているサービスは、ビジネスに関する経験やノウハウを持っているアドバイザーの方と、それを求める企業とをマッチングするものです。ビザスクには現在約5万2000名(2017年12月現在)のアドバイザーが登録されています。
内訳は、企業にお勤めの現役のビジネスパーソンが約7割で、残りは企業OBのシニア層、子育て中の女性など。一方利用者は、ほとんどは企業で新規事業開発や新たなプロジェクト等に関わられる方々で、中にはこれから起業される予定という個人の方もいます。
利用方法は簡単で、利用者は自分が抱えているビジネス上の課題や知りたいことをビザスクのプラットフォーム上に「公募」として公開、それに対して答えられる経験を持った方を募ります。また、アドバイザーは自身の職歴や経験を登録しているので、そのデータを検索して指名することもできます。
アドバイザーが見つかれば、サイト上で事前相談をし、双方が納得すればマッチング成立となります。その後は、対面や電話、ビデオチャットなどの形式で、1時間単位のコンサルティングが行われ、ビザスク経由で利用者からアドバイザーへ謝礼が支払われます。謝礼の額は原則アドバイザーが決められますが、平均では約1万5000円。当社は手数料として、そのうちの30%をいただいています。
また、それとは別に、法人向けのフルサポートサービスも用意しています。当社の専任担当者が利用者の課題を事前にヒアリングし、その内容に適したアドバイザーをコーディネート、マッチングまでを当社の責任で行うというものです。
こちらは主に大企業の方が市場調査などにご利用されることが多いです。ビザスクのビジネスモデルは、いわばスキルのシェアリングエコノミーです。近年、カーシェアリングや民泊など、様々な分野でこの業態が広がりつつありますが、その「経験」「知識」版と言えます。
1時間単位のコンサルティングなので、普段お勤めの方や小さなお子さんを抱えている方も、空き時間を有効活用できます。資格を持っていなくても、プロのコンサルタントでなくても誰もが自分の経験や知見の提供者になれる――。ビザスクというプラットフォームの意義もそこにあります。
認知度も徐々に高まり、マッチングの成立件数はまさに増え続けているところで、現在は依頼数が月間1000案件超です。アドバイザーの登録も過去1年では、月間平均2500名のペースで増えています。
なぜ伸びているかというと、現役・OB問わず、多くのビジネスパーソンが自分の持つ経験やノウハウをもっと社会で活かしたいというニーズが高まっているからです。最近の中小企業のご利用例でいえば、新規事業を始めたいという製造業の三代目社長が、「既存事業にリスクを負わせずに進めるにはどうしたらよいか」という悩みを、同じく三代目の社長で本業とは別の事業を展開し成功されている方に相談されていました。
その他「新しいコンセプトのアパート建築を考えているが、どのように集客できるか」「会社サイトをリニューアルしたい」といった案件が日々上がっており、それぞれ似たような経験を持つ方が、その疑問や悩みに答えています。
これまでちょっと相談したいことや課題が発生しても、高額なフィーを支払ってコンサルティング会社と契約し、相談するという方法しかありませんでした。しかし利用者にとっては、フィーに見合う成果に繋がるかわかりません。
多くの場合、理論化されたノウハウではなく、実際に経験された方の経験談の方が役立つといったニーズも多く、そうした方にとってビザスクは1時間単位と手軽で敷居も低く、1つの課題に対して複数の知見を安価に得ることが可能です。
一方、知見の提供者となるアドバイザーにもご満足いただけており「自分の知識が役に立ってうれしい」「当たり前だと思っていたことが自分の強みと評価されて仕事に励みが出た」という声をよく聞きます。セカンドキャリアを模索したいという方や、副収入を得られることにメリットを感じている方もいます。当社にはこうしたアドバイザーの知見データが日々アップされています。
5万人ではまだ十分とは言えず、さらに増やしていく必要がありますが、この知見データベースこそが当社の最大の強みとなっています。

ビジネスモデル発想の原点は自分自身の課題解決
もともと何かのプロとして一生働き続けたいという思いが強くあり、起業するというのはごく普通の選択でした。起業の準備は前職を辞めてからです。その時点では具体的なビジネスプランがあったわけではありません。
最初は「こういうサービスがあったらいいな」というアイデアをノートに書き溜めていきました。その中でこれはいける!と考えたのは、売り手が自分の経験から商品をお勧めする通販サイトです。しかし、それが現実の世界ではまったく通用しないことを、ほどなく思い知らされました。
このビジネスプランを持ってある方に相談したところ、1時間、強烈なダメ出しをされたのです。
「君はネットビジネスを何もわかっていない。これでは絶対に利益が出ない。成功確率0パーセント!」。
実は、その方からダメ出しと熱いアドバイスを受けている最中、私は「これだ!」という思いが芽生えていました。「この1時間にお金を払いたい」と思えるほど有意義だったからです。この経験がまさに、「スポットコンサル」の原型です。
すぐにビジネスプランを練り上げ、一カ月後には事業計画書を作成、半年後の2012年12月にはビザスクβ版をリリースしました。

成果が出なくても心は折れないやるべきことをやる
リリースして1年間はスポットコンサルというものが世の中に知られず、まったく数字が伸びませんでした。「その間、不安はなかったか?」とよく聞かれますが、実はまったくありませんでした。大局的な社会のトレンドを考えれば、このビジネスがうまくいかないわけがないと考えていたからです。
今後、日本の労働力が減少していく中で、定年後のシニア世代や育児休業中の女性の労働力も活用していかざるを得ません。フル出勤して働くのは難しいという方でも、隙間時間に働ける仕組みがあれば、必ず活用されるはずだという確信がありました。
企業にしても社内のノウハウ・スキルだけでは、激しさを増すイノベーション競争に勝てなくなってきており、社外人材の知識やノウハウを積極的に取り入れるオープンイノベーションの動きが加速しています。個人が持つ経験や知識がよりフレキシブルに活用されていく社会になっていくのは明らかで、その流通インフラである当社のサービスが時代のニーズに合ってくるのは間違いないと考えていました。
そもそも、事業がうまく伸びないのは自分のやり方が悪かったからにすぎません。どうにもならない外部要因もありますが、その中にあっても自分でハンドルできる部分というのは必ずあります。それをやらずして、うまくいかないと嘆いたり、へこんだり、心が折れたりするというのは「思い上がり」です。
無駄なプライドは不要。謙虚でなければならない。へこんでいる暇があるなら、やれることをやりたい。そういう思いでした。
当時の私のやるべきことは、効果的な情報発信をすること。実はそれまでの私はPRのやり方がまったくわかっていなかったのです。そこで、自分自身がスポットコンサルを活用して経験のある方からPR手法を学び、効果的な表現やタイミングでプレスリリースを出すといったことを地道に繰り返していきました。
その後「働き方改革」「副業解禁」「シェアリングエコノミー」など社会的潮流が高まり、その文脈で当社のビジネスがメディアに取り上げられることも増えていきましたが、それはたまたまではなく、事前にやるべきことをやってきた結果だと思います。当社では「世界中の知見をつなぐ」というビジョンを掲げています。創業当初は、自分自身の課題解決のために起こした事業でしたが、今はすべてのビジネスパーソンのためのサービスにしたいと考えています。
成長軌道に乗りはじめたとはいえ、まだまだやりたいことの1%もできていません。このビジョンを実現していくために、これからも新たな挑戦を続けていきます。

株式会社ビザスク代表取締役CEO
端羽 英子氏
Profile
東京大学経済学部卒業後、ゴールドマン・サックス証券に入社。投資銀 行部門で企業ファイナンス等に従事。入社半年で妊娠し1年で退社。 USCPA(米国公認会計士)を取得後、日本ロレアルに入社。化粧品ブラ ンドの予算立案・管理を経験。MIT(マサチューセッツ工科大学)の MBA(経営学修士)コースに入学。2年後MBA取得。シングルマザー として働きながら子どもを育てる。投資ファンドのユニゾン・キャピタ ルに入社、企業投資を5年間経験後、2012年株式会社ビザスクを設立。
成長のポイント
●「自分自身が持つ課題を解決するためには」という発想で新ビジネスを構想する
●大局的なトレンドから社会のニーズを掴む
●苦境にあっても周りのせいにしない。前向き思考でやるべきことをやる
COMPANY PROFILE
株式会社ビザスク
住所 東京都目黒区青葉台4-7-7 住友不動産青葉台ヒルズ10F
TEL 03-6407-8405
設立 2012年
資本金 3億3335万3000円(資本準備金を含む)
従業員数 40名
https://visasq.co.jp/