サービス・IT × イノベーションによる成長 観光ビジネスでイノベーションを起こす若き起業家の挑戦 地元の「何気ない暮らし」の中にある魅力を再発見する 株式会社OZLinks ツイート 「おわら風の盆」で有名な富山市八尾町。この地域で、町全体で観光プロモーションを促進する新たな取り組みが始まっている。その中心にあるのが株式会社OZLinks(富山県富山市)代表取締役社長の原井紗友里氏。「とやまベストビジネスアワード2017」で頭取賞を受賞するなど、今、注目の起業家だ。「日常の暮らし」という観光資源を強みとする、新たな観光事業への挑戦について原井氏に語ってもらった。 内装業には限界を感じ新規事業を着想 OZLinksでは、築150年の土蔵造りの古民家を拠点に「越中八尾ベースOYATSU(おやつ)」という観光拠点を運営しています。一棟貸しの宿泊施設やレンタルスペースとして利用する他、三味線や着物着付け、町歩きなどの体験プログラムも用意しています。カフェも併設しており、地元の人と観光客とが交流できる場となっています。宿泊客には地元の飲食店や居酒屋、和紙すき体験、酒蔵見学へと観光客を導けるようにしています。 このような町全体で観光をプロモーションしていく仕組みを、私たちは「平面ホテル化構想」と呼んでいます。 ここ八尾町は、毎年9月に開催される「おわら風の盆」が有名で、多くの観光客で賑わいます。しかし、私たちが目指しているのは、特定の時期にだけ観光客が集中するのではなく、季節や場所を問わず、観光客が訪れてくれる「通年観光」です。 観光ビジネスというと大きなイベントやレジャー施設などを思い浮かべるかもしれませんが、そうではなく普段の自然や文化、何気ない人々の日常の暮らしこそが、私たちにとっての観光資源であり、この事業にとっての強みだと考えています。 越中八尾ベースOYATSUを開業したのは、2016年4月。徐々にお客様も増えており、外国からのお客様も全体の3割です。リピーターも多く、以前、お泊りいただいたマレーシアの家族4人のお客様が、つい先日、改めて祖父母を連れて6人で来てくださるということもありました。 よそ者視点だからこそ見つけられた魅力 何気ない日常の中に宝があると気づいたのは、私が富山を一度、離れていたからだと思います。高校までは富山市にいましたが、大学は東京で、卒業後は中国の青島で中学校の社会科の教員を、そしてUターン就職で富山に戻りました。 8年振りに故郷に触れ、私はその光景に感動しました。国道8号線から立山連峰を眺める景色は、まるで映画のようでした。食べ物も美味しい。「この富山の魅力を伝えたい」と、すぐに自分で観光ビジネスを立ち上げることに決めました。 起業の準備を進める中で、出会ったのが八尾町です。八尾の人たちが当たり前のように思っている風景が私にとってはすごく新鮮でした。公民館で三味線の稽古が行われていたり、お爺さんが毎日散歩の途中でお地蔵さんに手を合わせていたりする。玄関の軒先に季節の花を飾るなど、季節を大切にする生活が息づいている。そんな風景が魅力的に映ったのです。 ずっと富山にいたらこうした魅力には気付けなかったかもしれません。よそ者視点で富山を見ることができたからこそ、日常の魅力を見つけられたのだと思います。 八尾の魅力を発信し地元の人と共に発展する 私たちは「TOYAMAに残された宝を見つけ、守り、その宝の魅力を世界に発信するエキスパートとなる」という企業理念を掲げています。この事業を通して八尾町の当たり前の暮らしぶりの魅力を伝えたいと考えています。 私自身、八尾町が大好きで、住んでいる人にも観光客にもこの町の魅力に気づいてほしいのです。日常の暮らしの魅力を発信しつづけ、地元の人にも誇りを持ってもらうことが通年観光を実現し、定住人口の減少を少しでも食い止められるのではないかと考えています。 平面ホテル化構想をさらに推し進めるために、2020年までには町屋の一棟貸しを現在の1棟から5棟に増やす予定です。拠点が増えれば、宿泊施設や飲食店、仕事場など関わってくる場所や人も増えていきます。観光客と地元の人が交流できる地域として、今後も地元の人と共に発展していきたいと考えています。 株式会社OZLinks 代表取締役社長 原井 紗友里 氏 Profile 富山市生まれ。大学卒業後中国の青島の中学校で社会科教員を務める。 8年ぶりに富山に戻り、地元のコンサルティング会社に就職。起業の 準備を進め、2016年1月、OZLinks設立。 同年4月に観光拠点「越中八尾ベースOYATSU(おやつ)」を開業。 株式会社OZLinks 越中八尾ベースOYATSU 住所 富山県富山市八尾町上新町2701-1 TEL 076-482-6955 設立 2016年1月15日 資本金 800万円 http://8-base.chu.jp