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サービス・IT × イノベーションによる成長 「勝てる土俵」に資源を集中する
台湾ユーザーに特化する決断で 人気の日本観光情報サイトに成長

株式会社ジーリーメディアグループ

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台湾で人気ナンバー1の日本情報サイト「ラーチーゴー(Let's go)!日本」を運営する ジーリーメディアグループ(東京都渋谷区)。ウェブでの集客力を活かし、アンテナショッ プを開設するなど、地域特化型の広告メディア事業を展開し続けている。当初、巨大な中 国市場でのビジネスを考えていた吉田皓一社長が、なぜ台湾市場に的を絞ったのか。その 決断の真実に迫った。

台湾・香港市場に特化した日本観光メディアを創出

2012年に、台湾人向けに日本の観光情報を発信するウェブメディア「ラーチーゴー!日本」をオープンしたジーリーメディアグループ。同サイトは当初から注目を集め、開設から5年間で月間ユニークユーザー数111万人、Facebook上でのファン数62万人を数えるほどの一大広告事業へと成長した。

「台湾ではスマートフォンの普及率が日本の2倍以上もあります。テレビや新聞などよりもSNSを含めネットメディアの影響力が強く、当サイトは台湾ユーザーから圧倒的な支持を得ています」。

こう語るのは代表取締役を務める吉田皓一氏。同サイトの最大の特長は、台湾人目線を徹底している点にある。利用者は20代から30代の台湾、香港の女性ユーザーが中心。彼女らと同年代の台湾人ライターによる記事は、「台湾人の関心や好みをよくつかんでいる」と評価が高い。

同社には23名の社員がいるが、そのうち日本人7名、香港人1名を除く、15名はすべて台湾人だ。外注のライター約20名も多くは台湾人で、記事も中国の「簡体字」ではなく、台湾で用いられる「繁体字」で書かれている。

広告記事は全体の3割ほどで、残りの7割は編集記事。広告件数も年々増加しており、クライアントは日本の鉄道会社や百貨店、レストラン、メーカーなどのほか、各自治体など約500社にも及ぶ。同社の17年度の売り上げは2年前の2倍、約2億円を見込んでいる。

16年の台湾、香港からの年間訪日観光客数は610万人と中国に次いで高く、人口に占める割合においては20%とトップだ。観光客のリピーター率も高く、地方への訪問も多い。こうした背景も同社の成長を後押ししている。

16年には、台北の中心街にアンテナショップ「MiCHicafe(ミチカフェ)」をオープン。ウェブでの集客力を活かし、平日には150人~200人、休日には400人~800人もの来店者が平均して訪れる盛況ぶりだ。物産販売のイベントや、「日本酒試飲会」といったセミナーなども開催し、多い時には2000人以上もの集客を記録することもある。

店舗の運営は、主として広告収入でまかなわれているため、集客数が非常に大きな意味を持つ。現在のところ、広告収入だけで平均月商300万円を上げている。宣伝告知だけでなく、ウェブ上で好評だった商品を店舗で扱うなど、ウェブと店舗との連動も効果的に働いている。リアルな体験ができるとあって、ユーザーから評価も上々だ。















決断のきっかけとなったSNSの評価

吉田氏は、防衛大学校入学後、退校して慶応義塾大学経済学部へと入学し直したという変わった経歴の持ち主だ。台湾への興味を抱いたのは大学時代に留学したことに遡る。現地では多くの人々と交流を深め、台湾人の考え方や生活を直に体験。中国語を習得した。

大学卒業後は、当時台湾支局を構えていた朝日放送に入社し、テレビCMのマーケティングを担当。テレビ局では海外進出の重要性を訴えたが、聞き入れられることはなく、自ら海外市場を視野に入れた事業を起こそうと3年後に退社した。 しかし、この時、吉田氏が目指したのは台湾ではなく、巨大市場「中国」だった。

「やはりマーケットの大きさに魅力を感じ、知人をつてに上海に渡り、輸出入関連のビジネスを模索したのですが、まったく上手くいきませんでした。既に競合が多く進出していましたし、商習慣が違いすぎる。政治的リスクなどの不安もありました」。

帰国して、次の事業を構想していた折、台湾の友人から「親日国なのに日本の観光情報が少ない」「紙のガイドブックは定番の観光地ばかり」「今の若い人たちには、日本の文化や流行っているもの、遊び方などの情報を知りたがっている」といった声を聞いた。

興味を抱いた吉田氏は、すぐに個人のSNSで日本の情報を発信。中国語(繁体字)で紹介しはじめたところ、瞬く間に台湾人を中心に数万人ものフォロワーを獲得した。

「これはビジネスとしていけると思いました。ただ、個人でやっていても限界がある。これを組織的に運営するにはどうすればよいか研究を重ねた結果、台湾での日本観光情報メディアにたどり着いたのです」。

方針が決まれば後は何の躊躇もなかった。吉田氏は会社を設立し、「ラーチーゴー!日本」のサービスをスタートさせる。ライティングも含め、サイトのコンテンツは台湾人目線に特化したものにすると決めていた。一般的な日本観光サイトは、日本人が取材し、日本語で書いた記事を英語や中国語など多言語に翻訳して紹介している。

「しかし、翻訳された言語では現地の人々に、その面白さが届かないのです。日本語からの翻訳ではなく、ゼロから台湾向けのものをつくることでオンリーワンとして特化できると考えました」。























『失敗の本質』から学んだ決断の秘訣

何かを決断する際には「勝てる土俵で勝負する」ことを常に意識していると吉田氏は語る。大学時代、英語ではなく中国語を選択したのも、「英語ができる人はいくらでもいる。中国語のほうが希少価値が高い」(吉田氏)と考えたからだ。

就職活動の際、一時は商社も考えたがテレビ局を選んだのは、「商社のようなビジネスエリートの集まりの中では、私のような存在は埋もれてしまいます。しかしテレビ局なら私のビジネスマインドでも通用するのではないか考えたから」(吉田氏)。

そして前述の通り、「勝てない」と感じた中国市場からはすぐに撤退し、「勝てる」と考えた台湾市場での事業化を決断した。「勝てる土俵で勝負する」ためには、「勝てるかどうか」の見極めの早さが重要で、「勝てないと分かればすぐに撤退する」というのが、吉田流の決断ポイントなのだ。

「ベンチャービジネスの世界では、一歩の遅れが致命的なダメージにもなりかねません。決断は早ければ早いほどいい。朝令暮改でいい。立ち止まる前にまず飛べ。飛んでだめだったら軌道修正すればいい、というのが私の考え方です」。

防衛大学校で学んだ組織論も活かされていると吉田氏は言う。なかでも、決断が遅れたり、希望的観測でものごとを始めることが失敗の原因となると説いた、旧日本軍の組織的敗因を分析したベストセラー『失敗の本質』の影響は大きかったという。

「希望的観測に陥らないためには人の話を、特に批判的な意見こそよく聞かなければなりません。周囲の意見をよく聞いた上で、しかし、最終的にはトップである私が判断をする。それを常に意識しています」。

勝てる土俵を追い求め続ける吉田氏の姿勢は一貫している。「人が集まる場さえつくれたら、広告収入にはまだ伸びる余地がある」という吉田氏。ウェブ事業からアンテナショップというリアル店舗へと新たなステージに進んだ同社だが、今後、さらなる成長が見込まれる。





















決断のポイント
●「勝てる土俵」で勝負する
●立ち止まる前にまず飛べ。
   飛んでだめなら軌道修正すればいい
●周囲の意見をよく聞き、しかし、
   最後は自分で決める


株式会社ジーリーメディアグループ
代表取締役社長吉田皓一氏


奈良県出身。防衛大学校を経て慶應義塾大学経済学部卒業後、
朝日放送入社。総合ビジネス局にて3年にわたってテレビCMの
企画・セールスを担当したのち退職。
2013年ジーリーメディアグループ創業。大学在学中に独学で
中国語を習得。現在は東京と台北を往復しながら、
台湾のテレビ・ラジオへの出演、書籍・コラム執筆等を通じて、
日本の魅力を発信している。

CompanyProfile
株式会社ジーリーメディアグループ

住所 東京都渋谷区千駄ヶ谷5-20-11第一シルバービル5階
TEL 03-5925-8611
資本金 1000万円
売上高 2億円
従業員数 23名
http://www.geelee.co.jp/
www.letsgojp.com/(ラーチーゴー!日本)

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