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壁紙だけで年商20億円 事業を一本化してつかんだ成功

株式会社フィル

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壁紙だけで年商20億円を売り上げる株式会社フィル(大阪市)。2000年に日本で初めての壁紙専門店を大阪に開き、現在は銀座、恵比寿にも店舗を構えている。ネット販売では国内外からの注文が相次いでおり、その名は世界にも知られている。しかし、一時は億単位の借金に苦しみ、倒産の危機に瀕したことも。そこから這い上がってくる過程には、何度も決断を迫られる瞬間があった。社長の濱本廣一氏はどんな選択をし、成功を勝ち取ったのだろうか。

内装業には限界を感じ新規事業を着想

大阪のベイエリア、大正区にある株式会社フィルの本社。オフィスに隣接した店舗は、海を見渡せる絶好のロケーションだ。店内に入ると壁一面を洒落た壁紙が埋めつくしている。運営する壁紙専門のネットショップは、国内製品を扱う「壁紙屋本舗」と輸入品を扱う「WALPA」があり、二つ合わせて商品数は10万点を超える。

欧米の有名ブランド品も140種以上扱っており、壁紙専門店としては、日本一のシェアを誇っている。現在の年商は20億円。その8割がネット販売である。主な顧客は30代から50代の家族連れで、新築やリフォームに合わせて壁紙を購入する層だ。今は順風満帆の同社だが、社長の濱本氏の人生は決断の連続であったと言っても過言ではない。

濱本氏は中学卒業後、高校へ進学するも、性に合わず3日で辞めてしまう。

「15歳で雇ってくれるところはなく、選べる状況ではなかったんです。ようやく見つかったのが内装業でした」。

内装職人として仕事を覚え、23歳で独立。27歳の時に法人化を果たす。景気の波に乗り、最盛期には職人20名を抱えるまでになる。内装会社としては大阪でも大きな方だった。しかし切実な悩みもあった。

「仕事をするうちに内装業を一生続けるのは無理だと思い知りました。壁紙を貼るのは工事の最後です。どんな現場でも納期に追われるのが当たり前。徹夜の連続で1週間も家に帰れないこともザラ。こんな生活を続けていたら、40代で体を壊してしまうと思ったんです」。

そんな不安を感じていたある日、ひとつの出会いがあった。

「現場で知り合った電気工事の職人から『壁紙を売ってほしい』と言われたんです。聞けば、家の壁紙を自分で貼ってみたいと。そんな人に会ったことがなかったので驚きましたが、貼り方を教えてあげたら、もう大喜び。その笑顔が実によかったんですよ」。

その時、濱本氏はひらめく。壁紙を貼るだけでなく、売るという方法もありうる、と。

















独学で始めたネット通販事業で1億5000万円の負債

とはいえ、パソコン経験もネットショップの知識もまったくなかった。独学で必死に覚え、同時に資金もかき集めていった。

「当時は回線がISDNの時代、画像を1枚登録するのに1時間以上かかりました。昼間は内装工事をしていたので、作業はほとんど徹夜です」。

そして2000年にスタートしたのが「壁紙屋本舗」。雑貨や家具も扱うようになり、少しずつ軌道に乗っていく。毎月1000万円の広告費を使い、月商4000万円を超えるまでになった。しかし、ある程度まで行くと頭打ちになり、そこからはまったく伸びない。人件費などを差し引くと毎月の赤字は200万円にも。内装業の収入で赤字を補填していたが、いつの間にか借金が1億5000万円まで膨れ上がっていた。

当時の売上げは、内装工事が4億円、壁紙販売が3億円。社内には内装事業部と壁紙販売部があったが、部署を越えた社員たちの意思疎通がなかった。改善策をアドバイスしても、職人たちは誰もやろうとしない。内装業の売上げも、工事代金が徐々に下落して赤字を背負っていた。二つの部の両方を抱えていくのは難しい状態だった。濱本氏は悩んだ末、決断を下す。

「今後は壁紙専門店になる、サービス業としてやっていくと告げました」。

その結果10名いた職人は辞めてしまい、最終的に残ったのは、壁紙事業部のメンバーだけ。内装業で得ていた収入も無くなり、更なる苦境に立たされることになった。


















内装業はキッパリと廃業 壁紙販売に全力投球する決意

「自分は全力を出し切っていなかった。だから両方とも中途半端な結果になったんや、と気づいたんです。とにかく全力を振り絞って、それであかんかったらやり直せばいい、と腹をくくりました」。

3カ月やって損益分岐点を超えなかったら、キッパリ辞めると宣言。家具や雑貨の扱いを辞め、壁紙一本に専念していこうと決断する。まずは海外を回り、欧米の情報を集める。外国人スタッフも雇い、現地の状況をつぶさにリサーチした。

その結果、欧米では好みの壁紙を貼ってインテリアを楽しむのが当たり前になっていると知って衝撃を受ける。日本では壁紙を買いたければ、ホームセンターぐらいしかない。なんとか日本に欧米並みの壁紙文化を築きたいと奮起。

「やってあかんかっても、納得できるのは壁紙しかない。自分が本気で楽しめるのはこれやったとわかったんです」。

奮闘の末、3カ月後にはなんとか黒字を出すことができた。社用車に派手な壁紙を貼って、市内を走ったりもした。それが少しずつ話題になりメディアに取り上げられるようになっていく。宣伝が功を奏し売り上げも徐々に伸びていくようになった。

11年、輸入壁紙専門サイト「WALPA」をスタート。翌年には実店舗「WALPASTORE」を開店。

「今、お客の半分は賃貸住まいですが、メーカーと共同開発した〈ラクにはがせる特殊なのり〉を使用した壁紙なら、退去時に汚れや傷が残らないので賃貸でも貼れる。賃貸住まいは好きなようにリフォームできない、という常識を覆していきたいんです」。











現在は大学の商学部で「世界に向けてのネット販売」という講義も受け持っている濱本氏。

「10代20代の若い人は、壁紙そのものに興味がない。それは、壁紙を貼り替える楽しさを知らないからなんです」。

加えて、ネットを使っていない60代以上のシニア層にも壁紙の楽しさを伝えたいと構想を語る。今後はこの二つの層を開拓していく計画だ。市場を変えていける余地は非常に大きいと考えている。

「白くて安い壁紙を大量に発注してくれる業者よりも、好きな壁紙を一枚でもいいから自分で選んで買ってくれる一般の消費者に対して壁紙の楽しみを伝えたい。これが私の思いです」

と濱本氏は断言する。

決断のポイント
●迷ったら常に「おもろい方」を選ぶ
●市場を作れる余地があるのかを見極める
●お客さんが本当に喜んでくれる方向に進む





















株式会社フィル
代表取締役社長 濱本廣一氏

Profile
中学卒業後、内装職人となり、23歳で独立。2000年に
壁紙販売業を立ち上げ、現在はネットと実店舗を合わせて
日本一のシェアを誇る壁紙専門店を運営している。

住所 大阪府大阪市大正区小林西1-15-12
設立 2000年
TEL 06-6537-7121
資本金 1000万円
売上高 20億円
従業員数 79名
https://walpa.jp/

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