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創業直後の苦境に学んだ環境変化への対応力

株式会社ツナグ・ソリューションズ

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2007年に設立された株式会社ツナグ・ソリューションズは、アルバイト・パート専門の採用コンサルティング会社だ。 RPO(リクルートメント・プロセス・アウトソーシング)という新しいビジネスモデルを発案し、 それを軌道に乗せる過程でいかなる「学び」や「気づき」があったのかを、代表取締役社長の米田光宏氏が明かす。

現場スタッフの採用から定着をワンストップで支援

厚生労働省発表の2017年9月の有効求人倍率は1・52。生産年齢人口の減少に伴い、企業の求人難が深刻さを増すなかで注目を集めているのが、株式会社ツナグ・ソリューションズの採用コンサルティングだ。アルバイト・パートに特化したRPOに対する社会ニーズとは、いかなるものなのだろうか。

人口減少の影響をまともに受けるのはシェアが最も大きい第三次産業で、とりわけ逼迫しているのが、多くの人材をアルバイト・パートで賄う販売・流通・サービス業です。接客業スタッフの直近の求人倍率は約7倍。これは、1人の人材を7店舗が奪い合う状況を示します。

企業の本社人事部に代わって正社員の採用をサポートするするRPOは以前から存在していますが、その手法はそのままではアルバイト・パートの採用には適用できません。販売・流通・サービス業の現場スタッフは、本部ではなく各店舗の店長が状況に応じて募集しているからです。穴埋めをしたい特定の曜日・時間帯にふさわしい人材が学生なのか、主婦なのかといった細かな判断を本社・本部で行うのは難しい。

そこで現場である店舗で実施することとなるのですが、店舗の業績アップに奔走する店長にとって採用は間接業務です。ところが募集方法の検討や、複数の応募者からの電話対応、面接日の設定と、その業務は実に煩雑です。そこで当社は、このニッチなニーズに応え、店長の間接業務を代行するべく、採用手段の選定から応募者対応までを支援する仕組みを構築しました。

このビジネスに対する反響は大きく、現在の取引先は283社、7万5千店舗に及び、年間利用応募者数は80万名を超します(2017年9月期実績)。当社のRPOの強みは、蓄積された過去の応募者のデータベース「TSUNA-gram」と照らし、どのような人材を採用するにはどの求人媒体を利用するのが最も効果的かを提案できる点にあります。

近年はグループ会社とともに、店長にスタッフとの適切なコミュニケーションを促して定着化を図る支援アプリの提供や、外国人人材の登用、店舗スタッフの急な欠員を手当する人材派遣など周辺サービスも拡充し、アルバイト・パートの採用・活用に関する、より緻密なニーズにワンストップでお応えできる体制を整えています。

営業職時代の市場観察で社会の潜在ニーズを察知

独立する以前、米田氏は株式会社リクルートフロムエー(現リクルートジョブズ)で営業や営業企画に携わった後、株式会社リクルート(現リクルートホールディングス)に出向してアルバイト・パート領域の事業企画責任者を務めていた。その時代にアルバイト・パートの人材市場をつぶさに観察したことが、新たなビジネスモデルを立ち上げることにつながる深い学びとなったという。

それまで非正規雇用マーケットでビジネスをしてきた私が感じていたのは、この市場が「不安」、「不満」、「不安定」、「不信」など、非常に「不」の多い領域だということです。

アルバイト・パートの社会的地位は高いとは言えませんが、実は販売・流通・サービスを最前線で支えているのはその方々です。居酒屋のスタッフが快い対応をしてくれると、「明日も頑張ろう」って気になるじゃないですか。現場のスタッフが元気になれば、社会全体が元気になるのではないか。そんな思いを抱いていたところ、2006年に有効求人倍率が1を超え、アルバイト・パートの採用に対する不安が一気に広がったのです。

大手1社の力で十分な人材を供給することは不可能で、多様な手法やメディアを組み合わせて求人活動を支援しなければ、販売・流通・サービス業がもたないと思いました。それも求人という「点」だけではなく、応募受付や雇用後の定着支援まで含めた「線」としてアルバイト・パートの採用を包括的にコンサルタントしなければならないと痛感したのです。

前述したように多忙を極める店長の採用業務負担を軽減させ、スタッフのマネジメントに割ける時間を捻出させられれば、販売・流通・サービス業の「不」を取り除けるはず。そんな仮説を立てた私は、それを立証するべく起業を決めました。

私自身に独立志向はありませんでしたが、現場人材を管理する店長の業務負担軽減は社会的要請であり、なおかつ日本のマクロマーケットが将来深刻な人口減の影響を受けることが明らかなことをロジカルに捉えると、新規ビジネスの立ち上げは必然の選択でした。もちろん使命感だけで独立したわけではなく、それまで存在しなかったアルバイト・パートのRPOを大きなビジネスチャンスと確信したということもあります。


















志を貫くための絶対条件は会社を存続させること

創業後すぐに大手クライアント企業と契約した同社は順風満帆なスタートを切ったかに見えたが、思わぬ苦境が待ち受けていた。リーマン・ショックの影響で、創業時に1を超えていた有効求人倍率が0.47にまで落ち込んだのである。

採用市場は一転、求人広告を出すと求職者が殺到するという状況になりました。事業計画の遂行ができなくなって窮した結果、売上を得るためにクライアント企業の販促支援を行うなど、一時的に事業転換を図らなければなりませんでした。

販売・流通・サービス業の現場をサポートしたいという志を通し、自分の立てた仮説を立証するには、会社を存続させることが前提でしたから、なりふり構っていられませんでしたね。人材サービス企業としても私のポリシーとしても、従業員を“切る”という選択肢はないので、リストラも賃金カットもせず、当面売上の立つ仕事を強引に見つけたり、賃料の安いオフィスに移転したりすることで耐え忍んだわけです。

ただ、日本のマクロ環境がいずれアルバイト・パートのRPOを必要とするようになることはある意味で「決定事項」でしたから、先行きに不安はありませんでした。また、創業メンバーは自分を含め11人いましたが、その全員が当時の苦しい状況を我が事と捉えて事業存続に懸命に取り組んでくれたことも大きかったですね。創業時に抱いた私たちの志がブレなかったからこそ、メンバーがついてきてくれたのだと思っています。

やがて有効求人倍率は再び上昇し、2011年には本業のRPOが着実に成長し始めました。起業した直後に大きな困難を経験したことは、外部環境の突発的な変化への対応力を身につけるという意味で、当社に大きな収穫をもたらしてくれたと思っています。マクロの見地で勝算があるなら、目先の出来事に一喜一憂してはいけないということも、経営者として私が苦境から得た学びです。

米田氏の学びのポイント
・本業における深い観察から、新しいビジネスの種が生まれる
・成功するビジネスモデルとは、社会課題の解決に必要な仕組み
・ビジネスに大局観を持ち、目先のことに一喜一憂しない

株式会社ツナグ・ソリューションズ
代表取締役社長 米田光宏氏

1969年大阪府出身。93年株式会社リクルート
フロムエー(現リクルートジョブズ)入社。
営業、商品企画、営業企画などを経て、2003年株式会社
リクルート(現リクルートホールディングス)に出向、
アルバイト・パート領域の事業企画責任者となる。
07年株式会社ツナグ・ソリューションズ設立。


Company Profile
株式会社ツナグ・ソリューションズ
設立 2007年
住所 東京都千代田区有楽町1-1-3 東京宝塚ビル7F
TEL 050-3816-5566
資本金 5億1335万2千円
売上高 69億7600万円(連結)
従業員数 305人(グループ合計)
https://www.tsunagu.co.jp/

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