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製造 × 後継者による事業革新 倒産寸前からの復活
会社の再建は 社員満足の改善から始まった

株式会社オーザック

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1945年に溶接加工業を先代が創業し、現 在は橋梁、建設機械、クレーン等に装着され るワイヤーソケット・フックブロックはじめ、各 種吊り具製品を製造する株式会社オーザック。 かつて倒産の危機に瀕したが、その後、立ち 直り、事業を再生・発展させてきた。その秘 密は「社員満足」の追求にあったという。

倒産危機を脱して社員満足の重要性に気づく

1974年、岡﨑隆氏は大学卒業後すぐに同社に入社。いずれは、創業者の父から会社を引き継ぐつもりだった。入社後14年目の時点で、社員の平均年齢は54歳。岡﨑氏は愕然とする。

「6年後には、会社が消滅する、と自社の将来に不安を覚えました。大学卒の理工学部生の採用を目指し、新卒の人たちが働きたくなるような会社に変えるべく、1991年に本社工場を工業団地内に新築し、設備を導入。私の社長就任とともに、有限会社岡﨑製作所から株式会社オーザックに社名変更し、全てにおいて心機一転を図りましたが、2年後の93年にバブルが崩壊し売り上げが半減。新社屋への移転や身の丈を越える設備投資で5億円の借金を背負い、1日金利のみで9万円の返済に追われる日々が始まりました。当時、妻(現在の専務)が財務を担当、私は売り上げを上げ、収益の確保に集中しました。危機的状況を自分一人ではとても乗り切ることはできませんでした」と、当時を振り返る。

「時には資金ショート寸前となり、銀行の定期預金を解約し返済に充てました。一時、定期預金の凍結など厳しい状況もありましたが、その後、解除され、なんとか存続させることができました」。

その間、20人余りいた社員は岡﨑氏にとって「借金を返す道具」にしか見えていなかったという。

「社員に見捨てられたら会社は終わり。辞めずにがんばって働いてもらうしかなく、びくびくしながら社員に気を遣っていました」と岡﨑氏。

会社を維持するのが精いっぱいで、ついてきてくれた社員に我慢や苦労を強いるばかり。思うように利益も上がらなかった。岡﨑氏は無報酬、社員へのボーナスもすずめの涙程度しか払えなかった。それでも支出を最大限、切り詰めていった結果、10年後の2003年には営業利益で黒字化、債務返済の目処も立ってきたが、岡﨑氏はホッとする間もなく、疲弊した現場の状態に気づいたという。

社員たちの長時間勤務による生産性低下は顕著で、品質低下や事故のリスクの増大など、現場は問題が山積。そこで、岡﨑氏は、これまでの経営のやり方を改めようと決意した。

「ちょっとした事故でも起きれば、せっかく黒字になった営業利益もすぐに赤字に逆戻りになりかねない。安定的に成長するには品質を高め、生産性を上げることで顧客満足度を高めていかなければならない。しかし、そのためには、まず、社員教育の実施と社員満足度を上げることを始めなければならない」。

それまで「社員が大事」と口では言ってきたが、それが言葉だけで終わらないよう給与や休暇に反映させ、社員が満足する会社づくりに取り組み始めた。

「『社員は借金を返す道具』ではなく『会社は社員の生活を豊かにするための道具』。会社は自分のものと思っていましたが、会社というハードを社員に提供しているに過ぎないのだ、と分かりました」。

現在、社員数41名、売り上げは約8~10億円と経営危機に陥った24年前から倍増した同社だが、本当の意味での会社の再建は、この時、岡﨑氏が決意したことから始まったと言える。













中期経営計画の発表で社員と将来イメージを共有

同社では、創立60周年を迎えた05年から、5年ごとに中期経営計画発表の場を設け、社員はもとより客先や銀行の担当者の前で5年後の目標とそれに向けての取り組みを説明し、共有している。そのきっかけとなったのは、1人の男性社員から「会社の将来が見えない」と言われたことだ。

60周年を控えた04年、会社の先行きへの不安を告げられ、ハッとした岡﨑氏はすぐに行動に出る。

「社員の不安を払拭するため、5年後の売り上げや社員の収入、働き方はどうなっているかを、中期経営計画にまとめ、会社の将来像を具体的に可視化することにしたのです」。

既存顧客の過去3年間の売上平均値、新規顧客の獲得数など、具体的に数値化。その中には社員の平均年収も含まれる。目標の年収を得るには、会社の売り上げや利益はどれだけ必要か。その売り上げを達成するには今何をすべきか。全体化して社員自身に考えさせる。就業規則のようにいつでも閲覧でき、社員の誰もが実行に移せる計画でなければ意味をなさないからだ。

同社では採用計画も中期経営計画に含まれる。部下を必要とする社員自身が採用段階から関わり、自ら面接し、決定。入社後も部下として指導・育成する。採用された新人も面接した社員が直属の上司となるため、関係が密で成長も早い。以前は役員が主体になって採用活動を行っていたが、役員の意向で採用した人材は半年もすると指導する社員から文句が出るのが常だったが、今はない。むしろ、社員間のきずなが深まり、チームワークがとれている。

岡﨑氏が会社の行く末に不安を覚えた約30年前に54歳だった社員の平均年齢は、現在では約35歳。03年ごろからほぼ毎年新卒採用を行っており、社員数は20数名から42名に増えた。定着率は90%台だ。岡﨑氏が当初から欲しいと思っていた大学の理工学部卒の社員も多数在籍する。岡﨑氏が目指した「大卒の若者が働きたくなる職場」が実現したと言える。

採用以外でも岡﨑氏は社員に権限を与え、社員は責任を持って取り組む。「向かうべき行き先を社長が示し、どうやって向かうか社員が考える余地を残すことが大事」と岡﨑氏は言う。

「社員の将来を中期経営計画という形で可視化し共有することで、会社一丸となって取り組んで行こうと気持ちが一つになりました」。

残業なし有給フル活用で仕事と家庭を両立同社では07年と14年に工場を増設。設備の充実を図るのを機に全社を挙げてコストダウン、品質向上、短納期化に取り組んだ。顧客の要望にいち早く、可能な限りコストを節約して対応するために、工場でムダなものは一切取り除き、高性能なマシンを設置。清潔さや安全性にも気を配り、いつ誰が休んでも対応できる環境・体制を整え、工場の稼動率を上げていった。一方で、残業なしで定時に帰宅できるように生産性の向上にも取り組んできた。その対策の1つが社員の多能工化だ。

同社では機械部門の社員1人が複数の機械を扱える。中には1人で8つの機械操作ができる社員もいる。1つの機械を複数の社員が扱えるようにすれば、誰かが休んでも代わりの誰かが対応できる。

「仕事があるから休めない」のではなく「休んでも仕事が回る」仕組みを作るために、社員たちが勉強を重ね、たどり着いた仕組みだ。また、生産管理システムによる業務の見える化も推進。製品ごとに「加工指示書」を入力すると機械別の加工時間、加工原価、1人当たりの負荷時間等が分かるので、業務が平準化。業務が1人の社員に集中しないよう、互いにカバーし合う仕組みも作っている。

現在、同社の定時は5時10分。5時30分になると会社の電話は留守電に切り替わり、製造現場にも人の姿はない。07年に月平均8時間だった社員1人当たりの残業時間は、10年後の現在、月平均1時間に。12年からは完全週休2日制を導入。有給の消化率も平均月1回、年間12日以上と高い。

「社員には自分が住む町内会、学校のPTA活動への参加や役員は積極的に受けるよう勧めています。そのための有給休暇ですから」と岡﨑氏は言う。「会社を踏み台にして幸せになる」ことを社員には目指してほしい、という思いがあるからだ。

同社では以前、女性社員の多くが結婚退職していたが、結婚後も子育てしながら働き続ける女性社員が増えた。それは定着率の高さが物語っている。男女ともに育児休暇をフルに活用しており、仕事と家庭の両立が本当の意味で成り立っている。結婚後、本社に通うことができない地域在住となっても、テレワークでこれまで積み重ねてきた経験を生かせる道もできつつある。

社員満足度を高めた今、顧客満足に向けての取り組みにもぬかりはない。数百点におよぶ製品在庫状況を、インターネットで主要顧客に週2回開示し、加工進展状態をユーザーに随時画像提供するなど、スピーディーにきめ細かく対応。顧客の要望に応じた製品の企画、設計、提案も行っている。

「社員に任せることは信じること。失敗ももちろんあるが、それが改善につながります。『社員は家族』と言い切れる信頼関係があるからこそ、『オールオーザック』の掛け声のもと、一緒になって業務にも地域貢献活動にも取り組めます」と岡﨑氏の表情は明るい。

社員、顧客、そしてかつての自分自身が会社に抱いていた不安を取り去り、安心に変える取り組みが企業復活のカギとなったと言えるだろう。

株式会社オーザック
代表取締役社長岡﨑隆氏


「社員にとって私は1対1の存在。41人の目が常に私に向けられ
ています。言動も社員は見ている、と常に意識しています」




Company Profile
株式会社オーザック
広島県福山市鞆町後地26-229
創 業 1945年
T E L084-982-3258
資本金3000万円
売上高 9億6000万円
従業員 41名
http://www.auzac.jp/

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