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製造 × 後継者による事業革新 売り上げ半減の危機から復活したみそ製造業
一からマーケティングを 学び直し、ヒット商品をつくる

よしの味噌株式会社

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みその国内消費量が減少するなか、よしの味噌 (広島県呉市)三代目社長の野間雅則氏は次々 と新製品を繰り出すがまったく売れなかった。 業績はさらに悪化し、売り上げはピーク時の 半分にまで落ち込んだ。失意の日々から 微かなチャンスをつかみ、V字回復を果たした 同社のヒット商品づくりを紹介する。

失敗続きの商品開発で自信喪失の日々

今年、創業百周年を迎えるよしの味噌株式会社は広島県呉市のみそ製造業で最古参。現社長の野間雅則氏は三代目になる。長年、JAにみそを卸しており、バブル崩壊後もさほど影響もなく、経営は安泰に見えた。しかし、みその国内消費量は年々減少し、売り上げは1998年の1億5000万円をピークに、年を追うごとに5~8%ずつダウンしていった。

野間氏は東京の大学を卒業後、地元に戻り、85年に同社に入社した。みその売り上げ減を補うべく、96年頃からみそに代わる製品を模索。新商品開発に取り組んできたという。

しかし、思わしい効果は得られぬまま、2012年にはピーク時の売り上げの半分にまで落ち込み、社員にボーナスが出せない状況が3年続いた。ついには社員を1人解雇する事態に陥ったという。

「仕事も売り上げも減り、社員を辞めさせざるを得なくなったとき、経営者失格だと自責の念に駆られました。うつ状態に陥り、カウンセリングに通う失意の日々から私を救ってくれたのが1通のメールでした」と野間氏は振り返る。

ひろしま産業振興機構(以下、産振興)のメールマガジンの案内で知った「販売戦略塾」は、販路開拓の専門家による、マーケティングセミナーや個別商品のブラッシュアップ(開発・改良)を通して、「売れる商品のための仕組みづくり」を習得し、自社のマーケティング力を強化するという内容だ。野間氏は、藁をもつかむ思いで参加を申し込んだ。さらに受講企業200社の中からブラッシュアップ企業12社の審査選考にチャレンジ。

「補欠として選考に残り、そこからは開き直り、一から商品開発をやり直していきました」。

ここでの経験が、後の同社の復活に大きな影響を与えることになる。

間違いだらけの新商品開発に気づく

「販売戦略塾」の最初の講義で、自分が戦略を持たず、場当たり的な商品開発をしてきたことを思い知ったという野間氏。それまでは、自身の一瞬のひらめきや流行からの思いつきで、商品コンセプトもないまま商品化していたという。

例えば、B級グルメブームを意識した自信作の「ホルモンうどんのみそタレ」は、地元の食文化にはもともとない物語を無理やり作って販売した結果、不発に終わった。展示会でバイヤーには評判がよかった製品も市場に出すとさっぱり売れなかった。

「自分の感覚でつくるとどうしても男性目線のものになり、インパクトのある味やパッケージになりがちでした。しかし、実際の購買客の中心である女性たちには手に取ってもらえないパターンを繰り返していたことに気づきました」。

また、事前に戦略も立てず見切り発車で発売していたことも改善ポイントとして認識した。野間氏によると、それまでは「どこでもいいから売りたい」「なるべく多くの人に買ってもらいたい」という漠然とした思いだけで製品開発をしていたという。

みそというありふれた素材で普通の加工品を作っても価格競争に巻き込まれる。中小企業が大手と同じことをしても勝ち目はない。商品的にも価格的にも比較される対象のない新しいジャンルの製品にチャレンジすべきだと、野間氏はこれまでの自分のやり方を改め、戦略的な発想で取り組むことにした。

地元広島産レモンに活路を見出す

まず最初に手がけたのは、ターゲットの明確化と絞り込みだ。単に”女性向け”というのでは曖昧だ。

「既婚未婚を問わず女子会に気軽に集まり、800円のパフェをためらうことなく食べるような、流行に敏感で高感度な30?40代の女性をイメージし、ターゲットに受け入れられる商品を追求しました」。

次にそのターゲットに求められる商品づくりの素材を探した。

その頃、広島県による「おしい!広島県」の観光プロモーションがスタート。全国にあまり知られていない広島県の観光資源や特産品を掘り起し、アピールしていこうというもので、その中にレモンがあった。広島の特産品としては牡蛎が有名だが、レモンの生産量が日本一であることは当時、地元でもあまり知られていなかったのだ。

県はレモンの消費拡大に向け、有名料理家に地元特産品を使ったレシピを依頼。その中にあった「レモン鍋」にヒントを得た野間氏は、日本の家庭の食卓になじみ深い「鍋料理の素」の試作を始める。

自宅のキッチンで、夏場でも連日鍋をつくっては、家族に感想を聞いた。試作を重ね、「これだ!」と行きついたのが、さっぱりとしたレモンの酸味で、こってりした具材もあっさりとおいしく食べられる味だった。試行錯誤の末、13年10月、レモンを使った加工品「広島れもん鍋のもと」がついに完成する。

これも「販売戦略塾」で学んだことだが、それまで適当だった原価計算も見直し、スーパーで販売する家庭用180gの商品を本体価格400円に設定。当初、問屋の反応は「絶対、売れない」と冷ややかだった。同量の鍋の素の一般的な相場は200円前後。特産品のレモンが原料でも、相場の倍の値段では売れない、と言われた。

しかし、野間氏は諦めなかった。量販スーパーでは高いと言われる商品も、土産店なら500円でお釣りがくる商品はお手頃と歓迎される。また、同じスーパーでも高級スーパーや百貨店の食品売り場なら、特産品のレモンが原料のヘルシーな商品として客の注目を集める。

そこで、販売チャネルを高級スーパーや百貨店などに絞り、積極的にアタック。プロモーションに注力した。

「安売りせず高価格帯を維持するためにも、商品の価値と魅力をターゲット層に伝えていかなくてはなりません。広島といえば、お好み焼き、もみじまんじゅう、”広島れもん鍋のもと”と言ってもらえるように、自分でブームを仕掛けていくことにしました」と動きだす。

まず、取り組んだのが広島経済記者クラブへのプレスリリース。レモンの出荷時期とも重なり、テレビの情報番組で取り上げられると、新規の販売店から声がかかった。百貨店やスーパーでの試食販売では、レモンの被り物を用意。テレビで紹介されるときは野間氏自ら被り物姿で登場し、商品をアピールした。

その結果、広島の民放全4局16番組、ラジオ、新聞、情報雑誌等に取り上げられ、初年度の売り上げは約5万袋。売上高も前年比14%アップで、創業以来のヒット商品となった。



 
創業以来の大ヒットとなった「広島れもん鍋のもと」



 

今年発売したレモン100%果汁を加えた
 「広島れもん冷やし甘酒」




2年目からは全国展開をめざし、広島県外への提案を開始。それに伴い、パッケージのデザインもより女性向けの洗練されたデザインに改良した。デザイナーに丸投げするのではなく、ターゲットに訴求するようなイメージを自分で図に描いて伝え、プロの手で形にしてもらっているという。結果として約9万袋を販売。売上高は前年比24%アップに。

3年目からは積極的に展示会等へも出展。プロモーションの成果もあり、全国ネットのテレビの情報番組や雑誌で紹介され、約14万袋を販売。売上高は前年比20%アップした。






 デザインだけでなく商品のネーミングも
 野間氏自身が考案。
 店内のディスプレイにも工夫を凝らす





 


 個人向けのネット販売も
 全売り上げの
 1 割強までに成長








大量販売ではなくキラリと光る商品を

レモン関連の加工品として新たに開発した焼き肉のたれや甘酒も好調で、ピーク時を上回るまでになった。前年度はレモン関連の加工品が売り上げの6割を占め、みそよりも加工品が占めるウエイトが高まった。

「創業以来、みそという柱の商品があったから現在があります。当社の基本にあるのはこうじづくり。今後も発酵技術を生かした商品開発に取り組んでいきます」と野間氏は語る。

以前の野間氏は、やる気はあってもターゲットや売り方が分からず空回りの状態だったという。JAという先代から引き継いだ安定した客先があり、お金に困ることも将来への不安もなかった。適当な原価計算で、実際にどれだけ利益が出ているのかもあまり意識せず、もっと売ろうとして新製品を作っては失敗を繰り返していた。

「試行錯誤を経て実感するのは、今は大量に売るのではなく、キラリと光る商品を売る時代ということです。会社を大きくすることより、社員が喜んで働いてくれる会社でありたいという思いが強いです。社員とその家族の生活の向上を図るのが私の役割ですから」。

過去の失敗から一時は、経営者としての自信を失っていた野間氏。社員に辞めてもらうようなことは二度としたくないという強い思いが、同社の復活・再生につながったのだろう。




 1996 年に新築したおみやげ・贈答品販売用の店舗




 よしの味噌株式会社
 代表取締役社長野間雅則氏

 「会社も精神状態もどん底に落ち込んだとき、
 イチロー選手の『4000本ヒットを打つには
 8000回以上悔しい思いをしてきた』という
 言葉に励まされました。
 一歩踏み出して挑戦する勇気をもらいました」



CompanyProfile
よしの味噌株式会社
広島県呉市吉浦本町3-2-20
設 立 1938年
T E L0823-31-7527
資本金1000万円
従業員7名
http://www.yoshinomiso.com/

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