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地場特産ひと筋 グローバル市場に挑む三代目

有限会社かんずり

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戦国時代から豪雪地帯で体を温めるために 各家庭で作られていた伝統的な薬味「かんずり」が、国内外から注目されている。 その「かんずり」を製造する有限会社かんずりの代表に2016年7月に就任したのは、 三代目の東條昭人。営業責任者としてのこれまでの経緯と 経営者としての責務について語ってもらった。

24歳で後継経営者の道へ 時流を捉えた事業展開

9月某日、東京で開かれていた食品展示会のブースに、東條昭人氏の姿があった。東條氏は、熟成された唐辛子の旨味が特徴の香辛料「かんずり」を製造する有限会社かんずりの代表取締役社長を務める。

東條氏が社長になったのは、2016年の7月、代表になってまだ、1年半ほどだ。
「昨年社長になってからは、めっきり展示会などに出る機会が少なくなりました」と東條氏。今は新潟県妙高市にある本社工場にいることが多くなったと言う。展示会参加や取引業者への交渉は主に営業責任者に任せるようにした。

「会社の代表が、会社にいないで外回りばかりしていたら会社が回らない、社長以外に誰が会社全体を見るのか」という思いから、社長が本社にいることが「社長の責務」だと考えている。

東條氏は、大学卒業後、愛知県の漬物会社に入社、首都圏地域の営業担当として、卸・小売店などとの交渉に携わっていた。10年ぐらい、外の仕事を覚えてから、祖父と父親がやっていた同社に入ろうと思っていたところ、父親が県会議員に立候補するというので、わずか2年、24歳の時に、家業の後継者として実家に帰ることになった。

入社後は20数年、営業一筋でやってきた。東條氏が社長になることが決まった際は、経営方針で、前社長(父親)の「地元から全国に発信していく」という考えと、東條氏の「国内外に作った拠点から地元に注目が集まるようにしたい」という考え方の違いによる衝突もあった。

「社員は、その様子を見て、今後は新社長の方針で行くのだろう、と判断したようです」

これまで、新製品開発のため先行投資をする、販路拡大のため営業経費をかけるなど経営計画や財務状況をあまり考えずに、暴走することもあった。そのたびに、会計責任者から「コストかけ過ぎ」とか「経費使い過ぎ」と袖を引っ張られることもあった。社長になった今、自社の財務状況を知り、適正な経営手腕を振るうのが社長の責務と、財務の勉強に余念がない。

「かんずり」が、一躍注目されたのは、東條氏が27歳の時。グルメ番組が約1年にわたり、「かんずり」の製造工程を取材し、30分番組として放映されたことからだ。放映終了直後からは、同社の1本しかない電話回線が鳴りやまず、電電公社(現NTT)に特別に回線を増やしてもらい、なんとか対応したという。

「年老いたおばあさんが、やっと電話がつながった、と泣きながら注文をしてきたことが思い出されます」

それからは、いろいろなテーマでメディアが取り上げ、ますます「かんずり」の知名度が上がっていった。ウィンドウズ95が登場し、本格的なインターネットの時代になろうとしていた時期でもあった。同社がある新潟県新井市(現妙高市)では、市のウェブサイトを立ち上げた。東條氏もいち早くネットショップに取り組んだ。

「市のウェブサイトに、弊社のオンラインショップへのリンクを張ってもらいました」。

今では、日本国内のみならず、東南アジア、アメリカ、EU諸国で「世界一辛い香辛料」と知られ、食されている。




 有限会社かんずりの本社。
「全国に販売店が400 あり、弊社は製造会社に徹している」(東條氏)






地場特産品の消滅危機を憂いて、ビジネス化へ

社名にもなっている「かんずり」は、そもそも「寒ずり」と称されていた。そのルーツは「上杉謙信から拝領した唐辛子を原料に、農民が冬の間、寒さをしのぐために各家庭で作られていたと聞き及んでいます」(東條氏)。

いわゆる味噌や醤油、漬物と同様に、各家庭の自家用として作られ、味も各家庭で異なっていた。その後昭和30年代まで、地元で取れる唐辛子を原料に「かんずり」は香辛料として作られ続けていた。ところが、生活スタイルや食生活の変化から、消滅の危機に陥る。

地場特産の「かんずり」がなくなると憂いた東條氏の祖父と父親は、「かんずり」の名前を残したい、全国に発信し、広めたいと考える。周囲の反対を押し切り、ビジネス化に乗り出したのが66年。1966年には、類似商品が出回ることを恐れ、商標登録をした。

「一時、同じ商品名で出回ったことがありましたが、商標登録をしていたおかげで、守ることができ、今ではオンリーワン商品となっています」


「かんずり」の製品群






 雪国の風物詩となった「雪さらし」
(1月~3月)






営業責任者として、国内外へと販路拡大

専務取締役(営業責任者)として、国内外の展示会や見本市に出向き、販路拡大を先頭になって行ってきた。その間、アメリカ、中国、韓国、台湾、シンガポール、そしてEUでも国際商標登録を取得した。一方で、大手食品メーカーとのコラボ商品や、山菜やキノコ類を漬けた新製品も開発してきた。

「食品関係者やメディア、そして消費者に飽きられずに、つねに注目してもらえるようにと作り続けてきました」と、強い思いを話す東條氏。

生来ポジティブな性格の東條氏が今最も懸念しているのは、原料となる唐辛子を生産する契約農家の減少だ。最盛期40軒あった生産農家は現在7軒に、生産者の年齢も90歳前後と高齢化の一途。また、異常気象など気候の変動により生産量が減少、味にも影響が出ると言う。製造工程で樽に詰め、3年がかりで熟成させ製品化するが、その樽の置き場所によっても熟成度合いが変わるという。














「毎年、購入いただく方から、今年のかんずりは辛くないね、とお叱りを受けたことがありました。実は、人間の舌というのは辛さに慣れていきますので、辛さが弱く感じるようになってしまうのですね」

こうした商品の微妙な味の変化や消費者の声に対し、味は、その年その年によって微妙に異なり、樽によっても違うと、あえて説明している。「工場で大量生産された単一商品ではない、地場特産らしい魅力をPRにつなげています」と東條氏。「食材あっての薬味という脇役的な存在ではなく、かんずりに合うメニューは四季を通じてこれだといったものを提案していきたい」と意気込む。

有限会社かんずり
代表取締役社長 東條昭人氏(写真左)

写真右にいるのは東條氏の長男で4代目候補だ













CompanyProfile
有限会社かんずり
設 立 1966年(昭和41年)
資本金 300万円
売上高 2億円
従業員数 15名
新潟県妙高市西条437-1
TEL 0255-72-3813
URL http://kanzuri.com/

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