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製造 × 後継者による事業革新 新規事業に挑む三代目社長
女性向けのDIY商品を開発し 新ブランドを創り出す

平安伸銅工業株式会社

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収納用品「突っ張り棒」で知られる日用品メーカーの平安伸銅工業株式会社。主力 商品の突っ張り棒では、長らく日本のトップシェアを誇っている。その三代目社長 は新聞記者という異色のキャリアを経て、家業を承継した竹内香予子氏。主力商品 に依存しすぎる収益構造を変革しようと新製品開発に乗り出した。試行錯誤の中で、 新規事業をいかに軌道に乗せることができたのか。三代目の挑戦に迫った。

病に見舞われた父に代わり突如事業を承継

1952年、大阪市で銅を加工する町工場として始まった平安伸銅工業。高度成長期にアルミサッシの製造技術を輸入し、全国の住宅にアルミサッシを普及させていった。住宅への供給が一段落した後、次に手がけたのが収納用品「突っ張り棒」。

創業者の笹井達二氏と二代目の康雄氏が、海外でシャワーカーテンをつり下げる道具として使用されていたポールをヒントに、ネジや釘を使わずに収納場所を増やす道具として開発し、大ヒット商品となった。現在も、突っ張り棒では日本のトップシェアを誇るメーカーである。

三代目を継いだ竹内香予子氏は、異分野からの転職である。大学でジャーナリズムを専攻した後、大手新聞社で記者として活躍していた。しかし、入社3年を過ぎた頃から会社の方向性に疑問を持ち、転職を考えるようになる。ちょうどその頃、社長の父・康雄氏が心筋梗塞を発症し、体調を崩してしまった。

「それまで、父から会社を継いでほしいと言われたことは一度もありませんでした。父は家族を会社に入れない方針でしたし、後継者は社員の中からと考えていたようです。しかしその父が病気を機に"今後の方向を定めるため、知っている人に近くにいてほしい"と言ったのです」。

2人の姉はすでに医療職に就いていた。自分にも記者としての職があるが、記者には代わりがいても、後継者には代わりがいないと承継を決意した。2010年に新聞記者を辞めて入社。開発部に所属し、中国の工場に赴き生産現場の状況を勉強した。

何年もかけて事業を受け継いでいくつもりだったが、入社後1年にも満たない11年1月、父にガンが見つかる。深刻な状態だった。衝撃を受けつつも選択を迫られた竹内氏は、腹をくくるしかなかった。

「資金繰りや銀行との折衝など経理関係は父が行っていたので、すぐに総務部の経理担当へ異動しました。企業の信用に響くので、周囲には父がガンであることを隠し、社員にも良性の腫瘍と告げていたのです。幸い手術は成功しましたが抗ガン剤治療を続けていたので、出社しても半日で帰るような状態でした」。

生き残りを賭けて新規領域の拡大に挑戦

こうした急展開の中で竹内氏は社を率いていくことになる。主力商品の突っ張り棒は、売れてはいるものの、1995年をピークに価格は下がり続けていた。そのため、海外生産に切り替えコストダウンを図ったり、既存の商品をマイナーチェンジして発売するなど、苦肉の策を取り続けていた。

主要取引先であるホームセンターは近年、店舗数は増えている反面、店舗当たりの売り上げは減少している。この業界はいわゆる「棚取りビジネス」の世界。売り場に置ける商品には限りがあり、いかに棚を広げるかが成否を決めてしまう。こういった状態を打開するには新たな分野を開拓し、新規の売り場を獲得することしかなかった。

少しずつ社内体制を変えながら、消費者目線でものづくりができるように試行錯誤を重ねる。月に2回、開発と営業の全スタッフが集まる会議も始めた。社員には、日常生活上の困りごとを挙げてもらい、新商品への糸口にしようと奔走した。

「マーケットインの手法自体は間違っていませんでしたが、社員は新しいアイデアを生み出すプロではないので、どうしても既存品の改良でしかなく、革新的なアイデアは出てこなかったのです」と竹内氏は振り返る。














それまで無かった女性向けDIY商品を開発

地道な改善を重ねつつ、15年に社長に就任した竹内氏だが、思ったような結果が出ない日々が続いた。転機が訪れたのは、ある女性プロダクトデザイナーとの出会いだった。

「それまでは私の考えばかりが先行していましたが、ようやく、考えを具体的なプランにしてくれるデザイナーと巡り会い、商品という形にできたのです。初めての成功体験でした」。

彼女の入社を機に開発を進めたのが、「ラブリコ」という新ブランドである。ホームセンターで市販されている木材を、工具を使って加工し、インテリアや生活用品を自分で作ることをDIYと呼ぶが、多くの女性にとって専門の工具は扱いにくいものだった。それを女性でも手軽に扱えるようにと工夫されたDIYのシリーズである。

「16年7月に販売を始めましたが、反響が大きくて驚いています。DIY売り場といえば武骨な道具が並べてあるだけ。何を買えばいいのか女性の私にはわかりませんでした。そういう状況の中でラブリコは、これまでのDIYにはなかったデザイン性と機能性を兼ね備えた商品を提供できたと思っています」。


新ブランド「ウィークエンドワークショップ」の
テーブル



 
女性でも簡単に扱えるDIYパーツ「ラブリコ」。
昨年の発売以来、ブログSNSで情報拡散され、
ヒット商品になっている




お客様に使い方をイメージ
してもらうために、社員自
らが使用例のサンプルを
作り、ホームセンターの売
り場に設置している






商品をPRするために、DIYの記事を書いている女性ブロガーにも商品を提供。彼女たちは使ってみて本当によいモノでなければ、ブログで取り上げないが、ラブリコは多数のブロガーが紹介してくれ、雑誌や口コミで広がっていった。現在の売り上げ比率は、突っ張り棒や突っ張り棚などの既存商品が9割、ラブリコが1割である。

今後は新商品を伸ばし、売り上げの半分を占めるまでにしたいと竹内氏。今年10月には、「ウィークエンドワークショップ」という新ブランドも発売する予定だ。こちらは木材だけでなく、テーブルの脚や棚の支柱に金属を使ったシリーズで、ラブリコと違いカジュアルな意匠が特徴だ。

「今思えば、突然の事業承継という修羅場を若くして経験できたのはよかったのかもしれません」と竹内氏。父の康雄氏はガンを克服し、今は引退して老後の生活を楽しんでいるという。今後はファミリービジネスの良さは残しながら、意思決定のプロセスを公開するなどして不透明さは解消し、家族以外の人でも引き継ぐ価値のある企業にしていきたいと語る。

「ユーザーファーストの商品こそが消費者に選んでもらえると考えています」という竹内氏。ブランド名で誰からも認知してもらえる企業になることを目標に、これからも挑戦は続く。

平安伸銅工業株式会社
代表取締役社長 竹内香予子氏

「日用品のメーカーとして、常にユーザーファーストの
気持ちで仕事に臨んでいます」










CompanyProfile
平安伸銅工業株式会社
設 立 1977年(創業1952年)
資本金 4900万円
売上高 22億円
従業員数 35名
大阪府大阪市西区江戸堀1丁目22-17
西船場辰巳ビル4階
TEL 06-6228-8986
URL http://www.heianshindo.co.jp/

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