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「生涯顧客」「人財共育」を理念に スタッフの“やりたい”“なりたい”を実現

株式会社 玄

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従業員の主体的なキャリア形成を積極的に支援している企業を表彰する 「キャリア支援企業表彰2015~人を育て・人が育つ企業表彰~」にて、 一流企業と並び、理美容業界では初となる厚生労働大臣賞を受賞した株式会社玄。 その「キャリア支援」の理念や取り組みについて、うかがった。

厳しい業態環境の影響で店舗数・理容師数が激減

理美容業界で初の厚生労働大臣賞を受賞した株式会社玄にふれる前に、少し理美容業の現状についてふれておこう。

厚生労働省が2016年11月に発表した平成27年度衛生行政報告によると美容所数は約24万店、美容師数は約50万人で、ここ数年増加の一途だ。一方、理容所数は約12万5000店、理容師数は約22万7000人で、店舗数は1999年以降、理容師数は2004年以降減少が続いている。

また、理美容学校への入学者数を見ると、文部科学省の最新の調査では、理容学校へは661人(前年比マイナス26%)、美容学校へは約1万8900人と、前年比微減ではあるものの2000年以来1万9000人を割り込んでいる。理容学校への入学者数が減る一方で、少子化の影響はあるとしても、業態存続の危機が続いていると言わざるを得ない。美容学校への入学者数も微減に留まっているからといって油断はできない。

「美容学校を卒業しても、美容師になる人はかなり少なくなっている」と語るのは株式会社玄の会長、井出隆夫氏。さらに、「美容室に就職後1年以内に4割の人が離職していく」(美容組合関係者)という。

人材教育とサロン営業を同時に行う仕組み

「理容師や美容師は一生の仕事ではないのか?」という大きな疑問は、「キャリア形成支援」に取り組むきっかけでもあり、同時に、井出氏自身の経験からでもあった。

井出氏は、神奈川県平塚市で、椅子3台という小さな理容室を両親と3人で営んでいた。ごく普通の理容室だったが、将来への不安を募らせていた。ヘア技術コンテストに挑戦するも、入賞どころか下位に甘んじていた。一念発起し、技術を研鑽。29歳で、ついに全国チャンピオンになった。

それからは「講習に来てくれ」「スタッフとして雇ってくれ」とわずかな報酬でも入店希望者はやって来る。ところが、入店してくるスタッフは理容店の二代目、三代目ばかり。修業が終われば辞め、次のスタッフも同様で、定着しない。

一方で、低賃金、営業時間外の技術習得、休日も講習や練習に明け暮れるというスタッフの生活を見た井出氏は「これでは理容の将来はない」と奮起。人材教育とサロン営業が同時に行なえるビジネスモデルを打ち立て実践に乗り出した。
















そのスタートとなったのが、職業訓練校「湘南ヘアスタイリスト学院」の設立、そしてライオンファミリーグループの形成だ。いわゆる理容業だけではなく、トータルビューティを網羅する事業展開への拡大を行っていくというものだ。それは、「生涯雇用」から事業展開していった結果だ。

「例えば、シャンプーで手荒れをしやすいスタッフがいれば、シェービングスタッフに配置転換し、あるいは子育てや家庭の事情で日曜や祝日には働けないということがあれば、そのような雇用形態に、また、理容師をやっていたが美容師になりたい、ネイルやエステなどの仕事をしたいというような、スタッフのやりたい、なりたいというニーズを形にして事業を展開してきたら、現在のグループ形態になっていった」と語る井出氏。

日本国内だけでなく、海外のサロンで働きたい希望があれば、現在、台湾やベトナムにも出店しているサロンで働けるような仕組みを作っている。サロン営業だけでなく、ベトナムの理容師・美容師になりたい人たちへの教育指導も行っている。

これにより、「多年に亘って理美容業界に深く係り、これからの業界を支える人材の確保とその育成のために、外国人の登用にも積極的に取り組まれ、技能実習生などの制度を活用し、国際循環型教育として技術者の底辺拡大に尽力されている」として2017年「東久邇宮国際文化褒賞」を受賞した。
















ヘアスタイリスト養成校の卒業式記念写真。ヘアはもちろんメイク、エステなどの専門的
で現場に活かせる技術を、現役のスタイリストが少数精鋭で教育する



















「業績アップよりうれしい」一流企業に並ぶ高い評価

「玄」は1907年に創業、今年で110周年を迎えた。代表取締役の井出隆夫氏(61歳)は三代目にあたり、この9月に催された同社の「感謝の集い」では、会長に就任し、後任の社長に長男の真太郎氏が就任した。

「玄」の受賞に先立ち、厚生労働省は平成24年度から、従業員のキャリア形成を積極的に支援して他の模範となる企業を讃え、その取り組みを広く周知・普及させる目的として表彰制度を設け、人材育成の推進を目指す職業能力開発促進月間の毎年11月に表彰式を実施している。

「玄」が受賞した2015年度は、他に、東京海上日動火災保険、三越伊勢丹、三菱東京UFJ銀行、リコーなど知名度の高い一流企業が受賞している。「玄」の功績は、理美容業という業態を超えたものと言える。

なぜ、業態を超えた功績といえるのか、業態の現況を解説しつつ、同社の取り組みの経過を井出氏に語ってもらった。

「後付けかもしれないが…」と前置きしながら、「これまで理美容業界というマーケットのなかで競ってきたが、厳しい経営環境のなか、採用難や高い離職率、将来性も少ないなか、人材育成、キャリア支援の分野で評価を受けたことは、業績が上がったことよりもうれしく、誉れ高い」と受賞の喜びを語る。

同制度へ応募する前提条件として「高齢者を雇用し活躍の場を提供」「法定以上の女性管理職登用」「法定以上の障害者の雇用」「非正規雇用社員のリーダーへの登用」などが制度化され、実践されていること、なおかつ他の模範となっていることが重要だとされている。

「玄」は、前提となる条件をクリアし、実践を続け成果を挙げていたのはいうまでもない。しかし、それまで一朝一夕で結果を出せたわけではない。「来るものは拒まず」で、その背景には「人財共育」体制が確立していることにある。最後に、井出氏は「お客様あっての仕事であり、そこに従事するスタッフの資質も変わる。お客様の変化、スタッフの変化に対応するシステムを変えていくことが責務」だと締めくくった。

株式会社玄 代表取締役会長 井出隆夫氏
創業100周年を記念して「ライオンのシコウ」を一冊にまとめた井出氏。
「シコウとは
『志向:意識が一定の対象に向かうこと』
『試行:まずは試しにやってみること』
『思考:頭を働かせること』
『指向:ある方向・目的に向かうこと』
『嗜好:好み。親しむこと』
の四つのシコウです」


CompanyProfile
株式会社玄
創 業 1907年(明治40年)
設 立 1994年(平成6年)
資本金 300万円
売上高 約6億4000万円
従業員数 83名(パート・アルバイト含む)
神奈川県平塚市四之宮5-8-20
TEL 0463-53-1023
URL http://www.lion-gen.co.jp/

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