サービス・IT × イノベーションによる成長 シェアリング・エコノミーを切り拓く革新的企業 空き駐車場とドライバーをつなぐ新ビジネスを生み出す akippa株式会社 ツイート 空き駐車場と、それを必要とするドライバーをつなぐWEBサービスで急 成長を遂げているのが、akippa株式会社である。大阪で始まったこ のサービスは、わずか4年で全国1万2000拠点の駐車場をカバーする までになった。成功までの道のりを金谷元気社長に聞いた。 駐車場を時間単位で予約可能大手企業や自治体とも契約 「akippa(アキッパ)」はスマートフォンで目的地を検索し、周辺の空き駐車場を予約できるウェブサービスである。月極駐車場やビル、マンション、個人宅の空いている駐車スペースを活用して、時間単位で利用できる仕組みになっている。 現在、全国に1万2000カ所の駐車拠点を構築。コインパーキング業界に当てはめると、業界第2位の企業に匹敵する数字だ。akippaは30日前から予約ができ、料金も一般のコインパーキングの相場より安く設定されているという。 支払いはアプリ上でのクレジット決済で、手数料として40%を引いた金額が駐車場オーナーに支払われる仕組みだ。大阪ではすべての鉄道会社が所有する高架下の駐車場と契約。大阪市も市営の月極駐車場を貸し出すなど大手企業や自治体からの信頼も厚い。 2014年に始まったサービスだが、現在、利用者は法人にも拡大しており、駐車場のないコンビニや来客の多い飲食店など数多くの企業も利用。まさに急成長の名にふさわしい躍進を見せている。 このサービスを生み出したのが、社長の金谷元気氏。今でこそ成長企業のオーナーだが、これまでの人生は波瀾万丈に富んでいた。 少年時代からサッカーで活躍をしていた金谷氏は、高校卒業後、社会人リーグで活動。その傍ら、母校の非常勤講師としてサッカー部のコーチも務めていた。 「07年にJ2の練習生になりましたが、プロの壁は厚かった。あきらめて別の道を行くことにしたのですが、一般企業のことは何も知らない状態。求人情報で研修制度がよさそうな企業を見つけて、思い切って飛び込みで訪問したんです。すると、ちょうど空きがあったらしく、運よく採用してもらいました」。 資本金5万円からスタートした創業時売れるモノは何でも売る 情報通信会社に入社し、関西支社へ配属された金谷氏は、そこで会社員としてのスタートを切ることになる。当時から、いずれは起業すると決意を固めており、2年後に退職。その翌月には、早くも会社設立という驚異的なスピードで起業を進めていった。 「株式会社は設立に費用がかかるので、最初は合同会社でした。資本金は5万円。自宅のワンルームマンションに机やイスを置いて事務所にしました。失うものが何もない状態ですから、起業の怖さはなかったです」。 当初は、会社員時代に扱っていた携帯電話の販売代理を行っていた。1年後には社員が7名に増え、初めて新卒も採用。さらに広告業も始め求人サイトを立ち上げて、ひたすら営業の日々を送る。売り上げも社員数も増え、11年には東京オフィスを開設。右肩上がりとはいかないまでも、順調に成長していた、 まさにその時期、金谷氏は疑問を抱くようになる。 数字しか見ていなかった時代何のために働いているのかと苦悶 「その頃はお客さんからのクレームも多くて、うちの会社には目的がないことに気がついたんです。数字の目標はあっても事業の目的がない。社員の顔を見ても、あまり幸せそうではなかった。どこか無理して売っていたのです。自分は何のために働くのか? それを必死で考えていた時に突如、停電になったんです。そうだ電気だ! 電気のように生活に必要なモノを売りたい。そうひらめいたんです。それで翌日、会社に行くなり社員に理念を告げました。“世の中になくてはならないものをつくる”と」。 さっそく社員に「世の中の困りごと」を書き出してもらうと、200もの事例が集まった。ある社員が外出先で駐車場がなくて困ると書いており、それを見た別の社員が「そういえば実家に使っていないスペースがある」。 「なるほど、面白いと思いました。私も小さい頃、祖父に連れられて甲子園球場によく行ったんですが、いつも駐車場がなく、歩いて30分ぐらいかかる場所に車を止めていた。それで、甲子園の周辺の状況を調べてみると、空いている月極駐車場がたくさんある。これを活用できないかと思いついたのです」。 すぐに事業化のプランを進めた金谷氏は行動に移す。当時社内にはウェブシステムをつくれる技術者がいなかった。初期投資を抑えるためにシステム会社ではなく、コワーキングスペースに行き、開発ができるフリーランス技術者を探したという。 「akippaの立ち上げには、それまでの事業で蓄積した資金には、一切手をつけなかったんです。というのも、既存の事業で売り上げが上がっているのに、なぜ新事業に乗り出すのか?と疑問を持つ社員が少なからずいたからです」。 そのため、新たに資金調達で得た費用をもとに開発を進めていった。システムがある程度できた段階で、社員と2人で営業にまわったところ、1日に70軒もの駐車場で契約を取ることができ、手応えを感じたという。 akippaのビジネスモデル ネット上で駐車場を予約することができ、支払いは携帯電話のキャリア決済とクレジットで行える ネット事業コンテストでの優勝を機に知名度が一気に高まる こうして14年、新サービス「akippa」をスタートさせる。始動後の資金調達に関しては、複数の法人と個人投資家にプレゼンテーションを行い、5000万円の出資を受けることになった。 「14年は、ちょうどシェアリング・エコノミーがブームになり始めた頃。おかげでメディアに取り上げられて注目度が高まったんです。でも、まだまだ資金は足りないし、知名度もない。そこをなんとか打開したいと悩みました」。 そして決意したのが、インフィニティ・ベンチャー・サミット(IVS)への出場。インターネット関連のカンファレンスでは国内最高峰と言われ、国内外の著名な経営者にプレゼンをする大会である。絶対に優勝する!と必死の思いで練習を繰り返し、みごと優勝を果たす。 IVSでの優勝をきっかけに、大手企業から次々と出資を獲得していったakippa。これまでの出資総額は16億円。同時に、著名なIT企業から転職してくる社員も増えた。給料は前職の3分の2程度になるものの、理念に共鳴して、あえてakippaを選んでくるのだという。 20代、30代の若い社員が多く、活気あるオフィス 「なぜここまで来られたのか?とよく訊かれるのですが、私が頭の良い人間じゃなかったからだと思います。理論ではなく、生活の実感を基盤にして仕事をしていたからです。関西からは、時価総額1000億円を超えるベンチャー企業がまだ出ていないんです。私たちがロールモデルになろうとがんばっています」。 「なくてはならないものをつくる」という理念を貫き通した金谷氏。現在、世界進出計画を進めている。まずはアメリカでの展開を模索しており、忙しい日々を送っている。しかし、どんなに成功しても大阪から離れる気はないと同氏は断言する。"大阪から日本を代表し、いずれは世界に冠たる企業になる。" 今もその目標を追い続けている。 代表取締役社長金谷元気氏 高校卒業後、サッカーの社会人リーグに所属する傍ら 非常勤講師として母校のサッカー部のコーチを務める。 その後J2の練習生になるも、プロとの実力の違いを知り、 サッカーの道を断念。情報通信会社へ入社し、2年間の 勤務を経て2009年に起業。 「無くてはならないものをつくる」を理念に掲げ、 空き駐車場とユーザーをつなぐスマホアプリ「akippa」を 2014年に開発。現在、急成長を遂げている。 CompanyProfile akippa株式会社 大阪府大阪市西区西本町1-2-1AXIS本町ビル9F 設 立 2009年(2015年より現社名) T E L06-4390-1600 資本金13億円6973万円 売上高非公開 従業員数 105名 http://akippa.co.jp/