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製造 × イノベーションによる成長 大阪で生まれたユニークな家電メーカー
デザインとユーザビリティを融合しトップシェアを獲得する

スリーアップ株式会社

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今、多くの家庭にある超音波加湿器のシェアトップメーカーであるスリー アップ株式会社(大阪府柏原市)。創業は2003年、当時、代表取締役の 辻野真介氏はまだ25歳だった。資金もコネクションもない状態でのスター トから、いかにしてトップに駆け上がったのか、その軌跡を訊いた。

知られてない業種だからこそ成長の可能性がある

近年、急速に普及している家庭用の超音波加湿器。国内の市場規模は年間約190万台といわれている(推計)。そのうち約40万台超が大阪に本社を置く、社員数わずか35名のスリーアップブランドの製品だ。シェアは約21%で、もちろんトップ。

「圧倒的なナンバーワンを目指します。市場規模の半分は取りたい」。

そう話すのはスリーアップ代表取締役の辻野真介氏。同社は他にヒーター、扇風機、クリーナーなどを手掛ける家電メーカーだ。社員数が少ないのは製造を外部に委託しているファブレス企業のためだ。



大阪オフィスのショールーム




辻野氏は1977年生まれの39歳。大学卒業後、化学品商社、家電メーカーを経て、25歳の時に起業した。今は廃業しているが両親はプラスチック成型の町工場を営んでいて、子どもの頃からその背中を見て育った。その影響もあり、高校生の頃から会社を設立して商売をしたいと考えていたという。

前職で営業を経験し、1年目から実績を上げることができたが、自分が本当に欲しいと思える家電をつくりたいという気持ちが高まり、起業に踏み切った。

「もともとサラリーマンらしくないというか、企業に属すタイプではないんでしょうね。30歳までに会社をつくろうと決めていました」。

起業の意思を両親に伝えたとき、母親は「同じ苦労をさせたくない」。と反対したものの、父親は「人生一度きりや。自分のやりたいことを後悔のないようにやりきれ」。と背中を押してくれたという。とはいえ、最初から順調にいったわけではない。

「六畳一間の小さなオフィスからスタートです。何もありません。あるのは根拠のない自信と気合いだけでした」。と辻野氏は当時を振り返る。

同社では製品開発に徹底的にこだわり、一つの商品が完成するまで企画・開発に1年から1年半かかる。それは創業当初も同じだ。企画・開発が終わっても、生産には3~4カ月必要となる。つまり、最初のうちは売る商品すらない。一方で、金型代などの先行投資も発生するため、金融機関から調達した資金は減るばかりだった。

苦しい状況にも関わらず、辻野氏は販路にもこだわった。問屋を通すことをせず、直接、販売店へアプローチしたのだ。「商品に込めた想いをバイヤーにしっかりと伝えたかったから」。という。しかも、量販店、スーパーなど、それぞれのチャネルのトップ企業に絞って売り込みをかけた。

創業間もなく知名度が低く、信用もない。チャネル毎でトップを取っている企業といったん取引ができれば、他の企業も追従するからだ。とはいえ、その敷居は高く、容易なことではない。

「何度断られてもしつこく通い続けました。起業家に必要なのは、折れない心と転んでもただでは起きない執念ですね」。

創業時は、事務作業から営業まですべてを一人でこなす日々。起業してからの最初の3年間は朝7時から夜24時まで、1日も休むことなく働き続けたという。大手企業へ積極的な売り込みを続ける一方で東京や大阪で開催されるインターナショナル・ギフトショーなどの展示会にも積極的に出展して、業界内での知名度アップにも努めた。

そんな努力が実を結んだのは、起業から数年後のことだった。「水で空気を洗う」という新発想の空気洗浄機「NAGOMI」が大ヒット商品になったのだ。「NAGOMI」は現在までにシリーズ累計150万台以上が売れ、同社の代表的な商品の一つとなっている。





初期のヒット商品となった空気洗浄機(NAGOMIシリーズ)は
これまでに累計150万台を出荷。同社の代表的な製品だ




徹底的にこだわりユーザー視点で開発する

同社の製品が人気を集めるのは、インテリアとして部屋に置きたくなるようなデザイン性とユーザビリティの高さだ。開発コンセプトは創業時から一貫して「自分たちが欲しいと思えるものをつくること」――。

こういった言い方をすると独りよがりで偉そうに聞こえるかもしれないが、けっして「顧客の声を聞かない」という意味ではなく、スリーアップ自らがユーザーの視点で開発をしているからこそ、作り手の思いと使い手の気持ちが共鳴し、感動体験を提供できると辻野氏は考えている。

「単に売れそうなものをつくるだけのことはしません。自分たちにしかできないことをして、人の暮らしを良くしていくために世の中から必要とされる企業であり続けたいと思っています」。

開発製品が日の目を見るまでは相当な時間を要する。企画段階でのマーケティングから始まり、プロダクトデザイン、内部の構造設計、使用部材の選定、金型設計、仕様・機能の決定など、“仮説?検証”のプロセスを繰り返し、製品のクオリティを高めていく。そんな試行錯誤の繰り返しがデザイン性とユーザビリティの高さとして結実し、消費者の人気を集める要因となっている。

また、家電製品であることから、特に品質・安全面には最大限の注意が図られており、製造を委託している中国の工場にもエンジニアを常駐させ、万全を期している。


生産委託先の中国の工場。
辻野氏自ら頻繁に現地に訪れ、各工程をチェックする




世界中に知られる家電メーカーを目指す

今や同社製品を扱っている店舗は全国で1万店を超える。チャネル別売上構成比は家電量販店が30%、GMS・HC・DSが25%、テレビ・カタログ・ネット通販が20%、専門店が15%などだ。

しかし、辻野氏は現状に満足していない。昨年の売上高は25億円だったが、これを2020年には50億円にする計画だ。その一環として今年から海外事業もスタートさせ、世界でスリーアップブランドを販売していく。

この数年、売上を大きく伸ばしているのが
デザイン性の高いヒーター。






現在、同社の出荷台数で最も多いのが加湿器。
1シーズンで約40万台を販売している。



「10年後の25年には日本国内に住んでいる人であれば誰でも知っているようなメーカーにしていきたい。同時に20年後には世界規模でスリーアップが認知されるようにグローバルで勝負してきたいですね。そして、その過程で社員がスリーアップで仕事をしていることを誇りに思い、社員自身が周りの人たちに自慢できるような会社にしていきたい」。

同社の社名は近江商人の心得を表した「三方良し」にちなんだもの。三方良しとは「売り手良し」「買い手良し」「世間良し」のことで、売り手も買い手も満足し、世の中や社会に貢献にもなるのがよい商売という意味。その社名の通り、地元である大阪を元気にしていきたいと話す。大阪から世界へ。スリーアップの大きな挑戦はまだまだ始まったばかりだ。

東京・大阪インターナショナル・ギフトショーの
コンテストで受賞。同社の社名、製品の認知
度向上に役立ったという



代表取締役社長辻野真介氏

1977年大阪府生まれ。帝塚山大学卒業後、
化学品商社に就職し、その後家電のファブレ
スメーカーに転職。
2003年、25歳の時に起業。
2007年スリーアップ株式会社を設立する。





CompanyProfile
スリーアップ株式会社
大阪府柏原市国分西1-1-17 幸喜ビル2F
設 立 2007年(創業2003年)
T E L072-978-0033
資本金3000万円
売上高25億8000万円
従業員数 35人
http://www.three-up.co.jp/

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