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製造 × イノベーションによる成長 アパレル業界の環境問題に挑むベンチャー企業
廃棄寸前の繊維をデザインやITの力で再活用する

株式会社ウィファブリック

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一見、華やかに見えるアパレル業界だが、その中で大量に廃棄される繊維製品が問題となっている。株式会社ウィファブリックは、そうした廃棄処分寸前の繊維を活用し、インテリア製品を開発。その質の高さが評判を呼んでいる。同社を率いる福屋剛社長に起業の経緯を取材した。

廃棄寸前の布地を買い取りインテリア製品をつくる

高級コットンで織った今治タオル、ヨーロッパ向けの極上デニムを使ったバッグやエプロン。洒落たセレクトショップに並んでいてもおかしくない上質なインテリア製品が、ウィファブリック(大阪市)の看板商品である。

これらはすべて、未使用のまま廃棄される運命にあった素材を使用している。2015年に設立された同社は、未使用の糸や布地を再活用するアイデアで業績を伸ばしており、アパレル業界から注目を集めている企業である。

なぜ、この事業を始めるに至ったかは、社長の福屋剛氏のキャリアと深い関係がある。福屋氏は、学生時代にアパレル企業でのアルバイトを経て、ニューヨークへ留学。現地でバイヤーのアシスタントを務めるなど若い頃からファッションの世界を志望していた。

大学卒業後、大阪の大手繊維商社に入社。入出荷部門へ配属された後、企画営業部に転じ、素材の仕入れから商品企画、販売までを幅広く担っていた。ところが数年後、順風満帆だった福屋氏に転機が訪れる。

繊維商社で目の当たりにしたアパレル業界の"闇"

「入社するまでは、アパレル業界は華やかな世界だと思っていました。でも社歴を重ねるにつれて、業界の"闇の部分"が見えるようになってきたんです」

その闇こそが、使われずに廃棄される素材や商品だった。

「モノをつくれば必ず資材や商品が残ります。そうなると滞留在庫を抱え、倉庫のコストがかさみ、固定資産税も支払う必要がある。ですから在庫処分業者に二束三文で叩き売るか、廃棄処分にするしかないわけです。自分たちが苦労してつくったものをゴミとして捨てることに、罪悪感が芽生えました」。

業界のあり方に疑問を感じた福屋氏が調べてみると、世界中で年間8000万トンもの衣類が廃棄されているという、驚くべき事実がわかった。確かに繊維製品はシーズンごとに次々とつくられる一方で、大量の廃棄品を生み出している。消費者の環境問題への意識が高まっている昨今、まったく改善されていない現状を目の当たりにした。

「商社にいた頃、売れない商品は返品でドッと戻ってくるんですが、それを社内販売で8割引き9割引きで売ると、飛ぶように売れる。つまり、ここには市場ニーズがあるということに気付いたのです」。







廃棄される寸前の未使用の糸や布地を活用したRDFの商品。
高級素材を使用した今治タオルは、福屋氏の商社時代の人脈により
商品化が可能になった。


廃棄素材を活用できないか?社会問題の解決に取組む決意

大量の廃棄繊維は個々の企業努力で解消できる問題ではない。社会の構造も含む根深い問題だ。「何か糸口はないのか?」そう考えた福屋氏は、協力者を集め、週末に事業計画を練るなど、独立への準備を少しずつ重ねていった。

事業構想が固まったところで、10年勤めた商社を退職。15年にウィファブリックを設立した。当初は社員3名でのスタート。会社は小さいながらも、廃棄寸前の繊維のリメイク商品を扱う「RDF(アールディエフ)」というブランドを立ち上げた。「エシカル=倫理的」というコンセプトを掲げ、次々と質の高いインテリア製品を生み出していった。

「商社時代に取引のあった繊維メーカーに糸の状態で大量の在庫が残っていたのです。RDFの話をしたら、安値で引き取らせてもらえました。メーカーは余剰在庫を抱えても、ブランドの価値が下がるのを嫌って値引きをしません。ですから高級布地でも廃棄処分しなくてはならない。そんな廃棄寸前の未使用品を次々買い取っていきました」。

設立時、大量に取材を受け、取り上げてくれるメディアは多かったが、勢いは長くは続かなかった。ひたすら百貨店や小売店をまわり、地道に営業を続けていく日々が続いた。

「最初は自分の貯金を切り崩してスタートさせましたが、資金はどんどん減っていくばかり。言い知れない不安に襲われる毎日でした。大手百貨店のポップアップショップ(期間限定の店舗)にも何度か参加しましたが、採算が合わない。東京など他の都市にも行くので、経費がかさむ割には営業利益が伸びない。こんな状態で大量廃棄問題が解決できるのかと悩んだこともありました」。

しかし、地道な営業活動の成果が少しずつ出るようになり、各種の補助金も獲得することができたことから、初年度に赤字だった収支は、2年目からはなんとか黒字に転換することができたという。

現在は、RDFの商品の製造、販売を中心に、他の服飾品メーカーのブランディングも手がけている。コンセプトワークからウェブサイトや店舗のデザイン、映像制作なども事業化。売り上げは、RDFの商品販売が4割、ブランディング事業が6割といった状態だ。

現在、年商は数千万円規模。通販でも広く販売しており、RDFブランドの今治タオルはギフト商品として人気となっている。しかし、これで廃棄の問題が解決したわけではない。



現在、社員は外部の協力スタッフを含めて10名。
商品開発の他に、他のアパレルメーカーの
ブランディングも手がけている。


企業間の取引にも着手世界的な問題解決へ一歩前進

次に着手したのは企業・法人間での売買サービスだ。

「設立時から構想していた事業なのですが、企業が抱えるデッドストックを資源に変えていく仲介サービスです。個人間の取引だけでは繊維の廃棄問題を解決するにはほど遠い。企業が大量に抱える余剰在庫に着手してこそ、解決の糸口があると思っています」

このサービスは「SMASELL(スマセル)」という名のウェブサイトで、百貨店、量販店などのバイヤーが、商社、アパレル企業、問屋などの余剰在庫をオンラインで売り買いするネットフリマ的なもの。代金の支払いは、三井住友銀行の信託サービスを用いるので、即時に入金が反映される。

同様のBtoBサービスは他に類がなく、世界初の試みだ。すでに大手繊維商社や量販店など50社近くが参画しており、試験運営を行っている。設立3年目にして、次なるステップへと踏み出すウィファブリック。5年後には「SMASELL」の売買額65億円を目標にしており、将来的には株式上場を目指している。

「まずは国内の廃棄170万トンをゼロにすることを目標にしています。ここまで来るには苦労もありましたが、大量廃棄という社会問題を世の中に問うていったことに、お客様が共感してくださったのだと思います。仲間をつくる上でも企業と連携していく上でも、共感というのは非常に大事なポイント。そういう時代になってきたと思います」。

参加してくれる企業にとっても環境にとってもプラスになる事業を目指すという福屋社長。廃棄ゼロという大きな目標に向かって挑み続けている。
























法人間での余剰在庫の売買サービス「SMASELL(スマセル)」


代表取締役社長福屋剛氏

関西外国語大学在籍時、40カ国以上を単独で旅する。
同時期に「URBANRESEARCH」にてショップスタッフ、
ニューヨーク留学時にアパレル関連のアシスタント
バイヤーとしての経験を積んだ後、繊維商社に入社。
約10年間、勤めた後退職。多くの課題を抱える繊維
ファッション業界の現状を変えるため2015年3月に起業する。




CompanyProfile
株式会社ウィファブリック
大阪府大阪市西区京町堀1丁目14-24
設立2015年
TEL06-6459-7420
資本金2500万円
売上高非公開
従業員数10名(外部スタッフ含む)
https://www.wefabrik.jp/

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