3分で読める「現場を変えた社長の一工夫」

ビジネスサミットOnline » 現場を変えた社長のひと工夫 » 困難な時期に就任した 畳店新社長の一大改革

製造 × 後継者による事業革新 企業理念の構築で社員を一つにまとめる
困難な時期に就任した 畳店新社長の一大改革

株式会社勝手

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

ユニークな畳製品を次々と開発して注目を浴びている会社がある。 株式会社勝手だ。同社を率いる勝手孝英氏は2年前に社長職を 父親から引き継いだばかり。それまでは主に現場で職人としての 経験を積んできたため、最初は経営者という立場に戸惑ったという。 しかし、未来塾と出会ったことで、自社の状況を冷静に分析し将来展望 を構想するようになったという同氏。従業員たちの不安も解消し、 今、着実に成長を続けている。

一歩先を行く経営で成長してきた畳店

畳、襖、障子などの製造販売を手掛ける株式会社勝手(長崎県大村市)は、1966年の創業、現在の代表取締役である勝手孝英氏の父親(現会長)が、勤めていた畳店の店主が亡くなったことをきっかけに独立・開業したのが始まりだ。

当時としては珍しい投げ込みチラシや折り込みチラシを活用して一般客の開拓に努めたり、中国から畳表が入ってくるようになると低価格の商品を開発して需要を掘り起こすなど、常に他社より一歩先を行く経営を実践、会社は次第に大きくなっていった。その結果、大村本店のほかに長崎市内にも支店を開設することができた。

「父は真面目に商売に取り組む人で、資金に少しでも余裕ができると設備投資に回していました。子どもの頃は寝る間も惜しんで働く姿をよく見ました。経営者として尊敬できる人です」と勝手氏は振り返る。

そんな父親の背中を追って、を切り替えて頑張るしかないと思ったという。とはいえ、何をどうしたらいいのか分からない。そんな時に出会ったのが「たちばな未来塾」だった。参加してみると、すべてが新鮮だった。

たとえば、「自社の強み、弱みを明確にする」という内容の講義があったのだが、それまで考えたこともなかった。同氏は中期経営計画についても学び、今は実際に作成した経営計画を実践している。

様々な畳製品を生み出す製造現場勝手氏が同社に入社したのは1987年、18歳の時。以来、職人として腕を磨いてきた。バブル崩壊後、畳業界はかつてない不況に陥った。かつて大村市にあったという15店の畳店も、現在は7店だ。同社もピーク時に比べると売り上げは半分以下になってはいるが、その中で生き残りを図り、地域一番店として、新たなことに挑戦し続けてきた。

勝手氏が取り組んだことの一つが、ネット販売。2005年のサイトオープンは同業界では全国的にも早いほうだろう。商圏外への販売を広げるネット通販は、地元で減っている畳生産の分を補っており、今では同社の柱の一つとなっている。
様々な畳製品を生み出す製造現場

困難な時期に事業承継未来塾に出会い目覚める

勝手氏が経営を引き継いだのは15年4月のこと。本来、長男である勝手氏の兄が社長を継ぐ予定だったが、経営方針の違いから独立・開業。この時期、経営者一族の緊張関係に従業員は不安を募らせていたという。

財務面でも問題を抱えていた。売り上げ自体は、維持・微増を続けていたが、「利益率の改善が急務でした」(勝手氏)という。さらには父親の体調不良もあり、急遽、勝手氏が新社長として就任することになった。勝手氏は入社以来、現場一筋。営業や交渉の経験は少なく、本人曰く「職人気質が強く表に出るのが苦手。正直途方に暮れました」。

しかし、当時、16名いた従業員を守るためにも気持企業理念も未来塾で学んだことがきっかけでつくったものの一つだ。

商いには「心」
人には「愛」をもって
お客さまにはより良い製品と
より多くの満足を
あなたにはより良い豊かさと
より多くの幸せを
社会にはより良い創造と
より多くの貢献を与え続け
感謝し 歩み続けること

この理念は、会長の意見も入れて、考え抜いてつくったもので、社長になってから半年後の15年9月に掲げた。以来、毎日の朝礼時、全員で唱和しているほか、月一回のミーティングでも理解を深めるための時間を設けている。

「代表が交替したことで不安を感じる従業員もいました。彼らをまとめ、同じ方向に向かわせるにはどうしたらいいか悩んでいました。理念を掲げたことで、自分たちが何のために仕事をしているのかが明確になり、全員がそれに向かって一緒に頑張れるようになりました」。

結果、従業員の誰一人辞めることなく、困難な時期を乗り切ったという。また、それまでは家族経営ということもあり、あまり従業員のことを考えていなかったのだが、未来塾をきっかけに、会社の成長のためには、従業員が頼りということに気付かされたという。今では従業員にとって楽しい、やりがいのある会社にすることを常に考えている。代表になってからすでに3回にわたり賃上げも行った。

オリジナルブランドを開発畳のよさをアピール

近年、マンションや一戸建て住宅ではフローリングの部屋が増え、畳の需要は低迷気味だ。そんななか勝手氏の第一の成長戦略は、オリジナル商品の充実だ。デザイン性や機能性に優れた畳や畳を活かした家具を開発、販売している。

「カステラ畳」はその一つ。厚さ15ミリメートルと薄くつくられていて、フローリングの上に敷くマットタイプのものだ。長崎県内では同社にしかないホットプレス機で、フィルムで接着させる技術により生まれた。プレーン・抹茶・チョコの3色があり、組み合わせることで部屋のイメージを自由に変えることも可能。

ダニ・カビに強く、撥水加工も施されており、色あせもほとんどないといった利点が購入者から好評を得ている。また、洗うことができ、防炎加工が施された「洗防畳」も人気商品の一つ。一般家庭だけでなく、県内外の介護施設や保育園・幼稚園などから受注している。


長崎名産のカステラをイメージして「カステラ畳」と名付けたという





畳素材でつくったカステラ形の雑貨。
カステラ畳の販促用品として使用されている




「長崎デザインアワード2016」で奨励賞を受賞した「畳和椅子」もユニークだ。これは和室でも洋室でも使える全面畳張りの椅子。和室が減っていくなかで、フローリングの部屋でも使える商品として現在売り出し中だ。勝手氏の考える成長戦略は、総合リフォーム・リノベーション事業への転換だ。すでに一部、取り組み始めているという。


長崎デザインアワード2016で奨励賞を受賞した「畳和椅子」




「新築は減っていく一方で、リフォーム部門はまだ成長の余地があります。従来、畳業界では工務店の下請けが一般的ですが、リフォーム業に進出することで、元請けになることを目指しています。すでに室内にあるものはほとんど自社でできる体制を構築しています」。

リフォームやリノベーションなど家全体を扱うなかで、施主に畳のよさを理解してもらう提案をしていこうと考えていると勝手氏。業界全体としては厳しい環境にあるが、こうした新しい取り組みにより、進化を続ける株式会社勝手。勝手氏の視線はさらなる高みを見据えている。

代表取締役社長勝手孝英氏

1968年長崎県大村市生まれ。
1987年株式会社勝手入社。
2015年代表取締役就任(現職)。
たちばな未来塾第5期生

「従業員にとって楽しい、やりがいのある会社にすることを常に考えています」












CompanyProfile
長崎県大村市松山町236-3
設立1966年(昭和41年)
TEL0957-52-3360
資本金800万円
売上高1億2700万円
従業員数19名(パート・アルバイト含む)
http://www.tatami-tsuuhan.net/

記事の絞込

■業種
■カテゴリー

業種

カテゴリー