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製造 × 後継者による事業革新 創業224年の和菓子店でチャレンジする七代目社長
老舗の伝統を守り ヒット商品を作り続ける

株式会社 菓秀苑森長

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創業224年の老舗和菓子店、菓秀苑森長(長崎県諫早市)が開発した 「半熟生カステラ」は累計30万個を超える大ヒット商品。 長崎土産の新たな定番となっている。その立役者となったのが7代目社長の森 淳氏。 老舗の伝統を守りつつ、新たな商品を次々と生み出す森氏の挑戦を追った。

学習塾の経営から縁あって老舗の跡継ぎに

株式会社菓秀苑森長(長崎県諫早市)は、寛政5年(1793年)創業、米菓の「おこし」で有名な老舗和菓子店だ。1975年から長崎カステラ、和洋菓子も製造販売している。同社の代表取締役社長、森淳氏(48歳)は七代目にあたる。同氏は佐賀県有田町の出身で、約20年前に学習塾を経営していた頃に、後に妻となる珠子さんに出会った。彼女が菓秀苑森長の六代目、森長之氏の娘だったため、結婚翌年の99年春、同社に入社した。








「おこし」の製造現場で1年間修業した後、2000年9月、同社がJR長崎駅の駅ビル「アミュプラザ長崎」に出店した際、店長として立ち上げを担当した。「何か手土産になるような新商品を開発したい」と考えた森氏は、カステラの原型と言われる「パォン・デ・ロー」というポルトガル菓子を作ることにした。

パォン・デ・ローには、レア(生)からウェルダン(よく焼いたもの)まであるが、あえてレアを作ることにした。卵をふんだんに使ったレアの商品なので日保ちはせず、製造日がイコール消費期限。約半年間、1日20?30個を販売していたが、夏季は持ち帰りする間に味が落ちてしまうおそれがあるため、イベント時のみの販売に切り替えた。このパォン・デ・ローが、後に同店の大ヒット商品「とろける生カステラ」につながるのだが、当時はまだ「日保ちしない」という流通上の課題の解決方法が見つからなかった。

その後07年に、福岡の菓子メーカー、株式会社石村萬盛堂のFC加盟店として「いしむら諫早店」をオープン。周辺の道路が交通渋滞するほどの人気店となり、オープン3日間で1000万円を売り上げた。翌08年、森氏は代表取締役に就任した。

長年の課題が一気に解決大ヒット商品に

この頃同社では、新商品を出すための開発会議を開いていた。生キャラメルが当時ブームとなり「生カステラ」ともいえるパォン・デ・ローも、販売すれば売り切れとなるほどの人気。売り上げをさらに伸ばしていきたいところだが「日保ちがしないため売りにくい」という課題が解決できない。

そんなある日、同業他社が販売している生カステラの存在を知り、分析するために注文してみると、冷凍した状態で送られてきた。森氏と社員たちは意表を衝かれたが「そうか。冷凍するだけでよかったのか」と気づき、一気に課題が解決した。商品名を「とろける生カステラ」とし、生キャラメルを意識して「今度の生はカステラです」というキャッチコピーを付け、当初はプレーンのみ、その後、メープル、Wチーズ、ショコラの4種類の味で販売することにした。

08年11月、大手インターネット通販サイトでの販売を開始すると、注文を知らせる着信が止まらないほどの人気に。日産300個の製造体制にもかかわらず、連日450?500個の注文が続いた。09年1月には、大阪の百貨店からの「目玉商品として催事に出てほしい」という依頼を受けて出店。テレビ番組で紹介されたことがきっかけで大ブレイクし、6日間の期間中全日、用意した1日分の販売個数240個がわずか15分で完売した。

ネットショップでも店舗でも販売に対応できない状態で、同商品を求めるお客様を1カ月半以上、待たせる事態に陥った。「せめて1日1000個の生産体制にしたい」と感じた森氏は、同年3月に製造体制を整えた。その後、商品名を「半熟生カステラ」と変更したが、発売から16年1月末までに30万個を売り上げた。16年7月には「生カステラmini版」も発売。こちらは、プレーン、チーズ、黒ゴマの3種類となっている。




















毎年1個の新商品で攻め続ける

09年の「生カステラ」の大ブレイクでは、「商品がヒットすることの楽しさを、スタッフが実感できたのがよかった」と森氏は振り返る。さらに次の展開として、新商品開発と営業に力を入れることにした。

新商品としては、12年に、森長の原点回帰を目指した、新食感のおこし「ぷちおこしー(PuchiOKOc)」を発売開始した。同年「カステラざんまい(参枚)」も発売を開始。この商品は箱にも工夫を凝らし、カステラそのものに見えるようにプリントした化粧箱に、食べきりサイズのカステラ3個を収めた。「すぐ食べる分だけ買いたい」というニーズに応え、発売3年で50万個を売り上げている。

14年には、出島のカフェレストランとのコラボ商品「出島珈琲カステラ」を発売した。同商品は、バリスタが挽いたコーヒー豆をその日のうちにカステラ生地に練りこむという本格派志向の品。包装紙の図柄には寛永年間の出島屋敷の古版画を使った。16年には「国産黒ごまカステラ」を発売。国内で使用されているごまのうち、国内産はわずか0・1%だが、その国内産のなかでもさらに貴重な長崎県産の黒ごまを贅沢に使用している。

そのほかにもフィンランドのサンタクロース財団がアジアで初めて認定した「サンタクロースカステラ」、糖分を控えた犬用の「わんこカステラ」、歌舞伎や大相撲とのコラボカステラなど、ユニークな商品を続々と発売している。創業224年の歴史を持つ同社において、カステラは42年と比較的新しい商品だが、今やおこしよりも売り上げが多い。13年からは海外展開のための調査を開始し、タイ、バンコク、カナダ、シンガポール等に輸出を開始している。
























同社の企業理念は「伝統を守り革新を追い求める」。「たちばな未来塾でヒントを学びました。新しいチャレンジを行っているときに、学んだことが響きます」と森氏は言う。未来塾で同期生だった杵の川(酒造業/諌早市)の瀬頭信介社長とは同い年でもあり意気投合。同社とのコラボによって製品化した「伊木力みかん酒のカステラ」は人気商品となっている。「中小企業が生き残るにはアクションを起こすのみです。急がず、慌てず、攻める。攻め続ける。1年に1個の新商品を出すぐらいのペースでやっていきたい」と語る森氏。今後は、営業の強化と海外進出に、さらに力を入れていく方針だ。

代表取締役社長森淳氏
1969年生まれ。早稲田大学卒業後、電力会社に入社。3年後退職し、帰京後学習塾を開く。99年、縁あって、菓秀苑森長に婿入りする。2008年に代表取締役就任。1年後、空前のヒット作「半熟生カステラ」を販売開始。近年では輸出(間接輸出)も手掛け、日々邁進している。

「アクションを起こすのみ。急がず、慌てず、攻める。攻め続ける」

CompanyProfile
株式会社菓秀苑森長
本社工場:長崎県諫早市幸町38-30
TEL0957-21-2121
八坂町本店:長崎県諫早市八坂町3-10
TEL0957-22-4337
設立  1950年(創業1793年)
資本金 600万円
売上高 3億7600万円
従業員数 50人(正社員22人、パート28人)
http://www.kashuen-moricho.co.jp/

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