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製造 × イノベーションによる成長 福祉施設を一軒一軒訪問して顧客開拓
自社製品で下請け脱却を図る

島崎電機株式会社

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島崎電機(島根県出雲市)は、大手メーカーからの依頼でさまざまな製造装置をつくる 下請け専門の町工場だった。ところが不況で仕事が減少したため、思い切ってオリジナル商品の 開発に挑戦すると、今までにない製品を創り出すことに成功。洗剤なしで衣類の汚れを落とし、 除菌もする水をつくる装置だ。しかし、開発に成功したものの営業では苦労も多い。 同社の現在進行形のチャレンジについて訊いた。

自社製品を開発し新市場に挑む

洗剤を使わずに衣類の汚れを落とし、除菌までできる。そんな”水”を生成する装置がある。島崎電機(島根県出雲市)の「我電創水クリッパー」という製品だ。

同社独自の技術により洗浄水と除菌水を生成するというもので、洗浄水には衣類についた皮脂や脂肪分を分解する力があり、除菌水には衣類の除菌、脱臭、漂白をする力がある。この2つの水を使うことで、洗剤を使うことなく衣類の汚れを落とし、なおかつ除菌もできる。全国の特別養護老人ホームを中心とする福祉施設でこれまでに約80カ所で導入されている。水だけで洗浄、除菌ができるため手荒れ、炎症が起こらない、残留物が残らないという利点が主な導入理由になっている。

福祉施設では洗濯物が多く、スタッフの手荒れや炎症は大きな問題だ。また洗剤や除菌剤の場合、洗濯物をすすいでも有害物質が残留し、それを身に付ける人に悪影響を与える危険性もある。そのため法規制により使用が制限されたり、処理にコストがかかったりするという、施設側の悩みに応えられる装置といえる。

実際、同製品を使用している施設からは「排泄物などのついたオムツを安全に洗濯除菌ができ、使い方も簡単なので管理面でもとても楽になった」「除菌水をトイレに流したら悪臭が消えた」「施設全体の悪臭が消えた」など、称賛の声が数多く寄せられているという。

もともと同社は下請けの町工場だ。大手メーカーからの発注を受けて、コンデンサ製造装置、スイッチ製造装置などを製造していた。ところが、1998年くらいに転機が訪れた。バブル崩壊後の長引く不況の影響で、得意先である大手メーカーの生産設備の縮小、撤退が相次いだのだ。同社代表取締役の濱村圭一氏は当時をこう振り返る。

「このままでは仕事は減る一方。自社オリジナル商品を開発するしか活路はないと思いました」。

訪れたピンチをチャンスに変える、という思いで最初に開発したのが「洗車用洗浄水生成装置」だった。装置自体はビジネスとして発展しなかったものの、その技術が地元の研究機関の目に留まり、共同開発を行うことになったという。その後、「出雲市新ビジネス創業事業」にも選ばれ、約3年の歳月をかけて2001年に完成させたのが、「我電創水クリッパー」だ。



感染予防、除菌効果の高い水を生成する装置
「我電創水クリッパー」。
下請けを脱却するために開発した同社オリジナル製品






導入第一号となった同製品は、同社近くの福祉施設に設置されている



全国の福祉施設を直接訪問して売り込む

現在、同製品の販売台数は年間約10台。価格は1台500~600万円。今では同社の事業を支える筆頭商品になっている。

「下請けで作ってきたような製造装置は、一台作れば簡単にコピーされてしまうようなものですし、単価も安い。メーカーの都合で突然仕事がなくなることもある。やはり、オリジナル製品を作るほうが利益率も高いし、経営も安定します」(濱村氏)。

しかし、どんなに優れた自社製品を開発しても、それが売れるかどうかは、また別問題だ。下請け専業の時代には経験したことのない営業活動に、濱村氏も苦労してきたという。

濱村氏の営業の進め方は、まず東京などの大都市で開催される展示会に出展する。その展示会の期間終了後、そのまま製品を車に積み、名刺交換した企業担当者のほか、各地の特別養護老人ホームを順々に回っていくというものだ。

多くの場合、各特別養護老人ホームとは面識がない。事前に用意した地図とリスト頼りに、アポイントも取らずに直接訪問して売り込みを図るという。

「事前にアポを取ろうとすると会ってくれないケースが多いので、敢えて飛び込みで訪問します。すぐに決裁される価格でもありませんし、そもそも今までにない商品のため理解してもらうのに苦労します。何度も足を運んで、信頼関係を築かないと売れない製品なんです」と濱村氏は笑う。

特別養護老人ホームの場合、11月が予算決定の時期となる。その時期まで契約が取れないと、翌年の11月まで契約が望めないことがほとんどだ。したがって例年10?11月には、特に全国を飛び回ることになる。そんな苦労もあるが、販売台数は確実に伸びている。「一度使えば、そのよさを実感してもらえる」(濱村氏)からだ。

既存客の施設からは、増床や新しい施設の建設が決まると、必ずといっていいほど注文が入るという。系列の別施設にほしいというケースも多い。徐々にユーザーが増え、いつの間にか、全国の特別養護老人ホームから支持を得るに至った。

地方企業の情報格差をネットワークで克服する

「”島根から来ました"というと、たいていの人は、"わざわざ遠方からご苦労様です"とあたたかく迎えてくれます。商談がしやすいのは確かですね。そのため、多くの施設の理事の方と親密な関係をつくることができました。地方企業のメリットといえるかも知れません」。

逆に地方ならではの悩みも多い。もっとも大きいのは情報格差という。インターネットで、たいていの情報が入手できる現代社会だが、真に役立つ営業情報となるとフェイス・トゥ・フェイスでないと入ってこないものが多いと濱村氏は言う。

「例えば、ある福祉施設が新しい施設の建設を検討しているようだ、改築・増床が決まりそうだ││などの情報は、当社の営業活動において有益な情報になります。東京にいると業界内の人脈ネットワークも構築しやすく、いち早くキャッチしやすい。一方、島根にいると、そうした情報が入ってきにくいし、入ってきたとしても、その頃には施設を訪問するタイミングを逸してしまう。情報格差は歴然です」。

また、全国が相手となると急な問い合わせに対応するのも難しい。東京で行われた展示会に出展した際、すぐに問い合わせに対応できなかった苦い経験がある。

「これからすぐに来て説明してほしいといわれても、遠方だと難しいこともあります。交通費も馬鹿になりません。そうしたことで売上機会を逃したこともあります」。

そこで今、考えているのが代理店ネットワークを構築し市場開拓する方法だ。すでに北海道と関東の2社と契約しているが、さらに全国に広げていきたい考えだ。「当社製品の長所をよく理解してくれる企業と提携していきたい」と濱村氏は言う。

製品の長所をどう伝えるかが同社にとって長年の大きな課題だが、そのための取り組みの一つとして新製品を開発した。「我電創水クリッパー」の効果を手洗い洗浄に活かした製品「ハイジア」だ。小型化・低価格化し、顧客も比較的導入しやすい製品となった。

「まずハイジアで製品のよさを実感してもらい、次に、我電創水クリッパーへとつなげる営業プロセスを確立していきたい」。

現在、全国に約9600の特別養護老人ホームがあるが、そのうち「我電創水クリッパー」が入っているところは約80施設。

「まだ1%にも達していません。まだまだこれからです。5年後には20%に、と考えています」。

濱村社長を中心に、島崎電機の挑戦はまだまだ続く。



代表取締役社長
濱村圭一氏

「普通に考えて、島根県から
全国を営業して回るのは時間
も経費もかかります。しかし、
その不利な状況の中で、お客
様を何度も訪問するからこそ
誠意が伝わるのです」







本社社屋





CompanyProfile

島崎電機株式会社
島根県出雲市江田町283番地
設 立    1988年(創業1985年)
T E L  0853-21-8889
資本金  3000万円
従業員数 4人
http://www.shimazaki-denki.co.jp/

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