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製造 × 後継者による事業革新 特集 強みを活かして新分野に挑む
新分野への挑戦が 会社のレベルアップにつながる

株式会社矢崎製作所

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中小製造業が成長するためには、得意とする製品と、得意先の存在が欠かせない。しかしその事業にあまりに依存しすぎると、環境変化に対応できなくなってしまう。矢崎製作所は時代に合わせ、次々と新分野に挑戦し、自社をレベルアップさせることで、新たな事業の柱を構築してきた。今では、極めて高い品質が求められる航空機用部品にも進出している同社の挑戦の軌跡を、社長の矢崎孝弘氏に伺った。

新たな事業の柱として航空機分野に踏み出す

株式会社矢崎製作所(長野県飯田市)はアルミの切削を得意とする精密金属加工会社だ。これまで自動車のアルミホイールや半導体製造装置の部品などを主力製品としてきたが、今、新たな事業の柱として注力しているのが航空機分野。航空機の補助翼を動かすアクチュエーターに使う部品などを手掛けている。

同分野進出のきっかけは南信州・飯田産業センター主催による、地元航空機装備品メーカー社長の講演だったという。

「時代が変われば必要とされる産業も変わる。これからは航空機の時代が来るといった内容でした。当時は半導体事業が好調でしたが、それもいつまでも続くわけではない。新たな柱をつくる必要がありました」。

と話すのは社長の矢崎孝弘氏。大学卒業後は東京の大手メーカーで通信機器の設計に携わっていたが、子どもができたのを機に、2004年Uターンして矢崎製作所に入社。一社員として経験を積んだ後、15年、父親である先代社長の跡を継いだ。講演の後、06年5月には、長野県飯田地域の中小製造業有志による地域一貫生産体制を可能とする共同受注体制「エアロスペース飯田」が発足。同社も参加し、仲間の地元企業とともに、航空機分野を目指す一員となった。

航空機分野への進出は容易ではない。航空機の部品に求められる品質レベルは高いからだ。しかし、同社は以前、自動車のアルミホイールから新たに半導体分野に進出した時も、同様の経験をしている。

「半導体製造装置の部品は、検査時に製品に触れて生じるようなわずかな傷も許されません。苦労はしましたが、その先には取引先からの信頼がありました。また、そこまでの品質のものが作れるということが会社の看板にもなりました」。

より高品質が求められる航空機の部品が製造できるほどの技術・品質レベルに到達すれば、さらなる会社のレベルアップにつながる。他の分野の仕事にもプラスになる。これが航空機分野進出を決断した動機だった。

ネットワークを活用して航空機分野に切り込む

新事業挑戦を決断後、同社では様々な体制整備を行った。航空機部品で求められる精度での加工を行うために、最新の工作機械や3次元測定機、さらには3次元CADCAMを導入した。数年間にわたる新設備への投資は会社設立以来、最大のものとなった。

その一方で社内の品質管理システムを一から見直し、2010年には航空宇宙および防衛産業の品質マネジメントシステムの規格認証AS9100を取得した。一方、営業面では、南信州・飯田産業センターのバックアップを得て、エアロスペース飯田の仲間たちとともに、売り込みを図った。

「産業センターの存在はありがたかったですね。センターがアポイントを取ってくれて、エアロスペース飯田の仲間と三菱重工や川崎重工などの航空機メーカーに出かけていきました」。

もちろん、最初からうまくいくはずもない。展示会に出展したり、見学会などに出かけたりすることで人脈は得たものの、商談にまで漕ぎつけることはなかなかできなかったという。しかし、こうした活動を根気よく続けていくうちに、比較的簡単な仕事を受注することができるようになり、実績を積み重ね、次第に重要な部品を任されるようになってきた。

その結果、現在、同社の売り上げの割合では、自動車部品25%、半導体20%に次ぐ15%にまで成長してきたという。航空機分野に参入できたのは、やはりエアロスペース飯田の存在が大きいと矢崎氏はいう。このアライアンスには、現在、地元の部品メーカー十社が参加しているが、互いに得意分野が違い、ライバルというよりも仲間という意識が強いという。

「互いに仕事を取り合うことはありません。飯田という山に囲まれている土地柄かもしれませんが、何かというと集まるのが好きな地域です。飲み屋も多い」。

航空機の部品も、得意な部分を分担し合う形で対応している。定期的に勉強会を行っているほか、互いの会社に社員を派遣し、技術や仕事のやり方を教え合ってもいる。そんな良い関係があるからこそ、高度な仕事も受注できているのだ。


5軸マシニングセンター






3次元 CAD/CAM



新分野への挑戦を繰り返し事業の柱を増やしてきた

同社の創業は1973年。NC旋盤をいち早く導入し、当初は顕微鏡の部品などを製造していたが、評判を聞きつけた地元のメーカーから自動車のアルミホイールの仕事が舞い込むようになる。ちょうどアルミホイールが市場に出始めた頃で、最初はカー用品店で売られるオプション品から始まり、次第に大手自動車メーカーの純正品も手掛けるようになっていった。

その後、アルミホイールは同社の売り上げの8割を占める太い柱になっていた時期もある。その後シェアを下げていったものの3割を占めていた頃に、当時の主要顧客であった自動車部品メーカーがアルミホイールから撤退。新たな顧客が見つかるまでの約2年間、厳しい経営を余儀なくされた苦い経験がある。

先代社長の代では、自社製品の開発に活路を見出そうとした時期もあった。農家向けの「花糸取り機」や旋盤機に取り付ける「タック爪」などを開発・販売したという。様々な試行錯誤の末、たどり着いたのが、新事業としての半導体部品であり、航空機部品だったのだ。

「一つの製品、一つの取引先に依存しすぎると、ちょっとした環境変化にも適応できなくなってしまいます。どれほど好調な産業でも衰退することはあります。だからこそ、安定的な成長を目指すのであれば、事業の柱を複数持っていなければなりません」。

同社は6年後の2023年に創業50周年を迎える。その頃には従業員を現在の15人から30人に、売り上げも現在の2億円から5億円に伸ばしたいと考えている。そのために、さらに新たな分野を開拓する予定。すでにロボットや医療分野にも事業のフィールドを拡大させ始めている。同社の挑戦は終わらない。


会社外観






株式会社矢崎製作所
代表取締役社長矢崎孝弘 氏





株式会社矢崎製作所
長野県飯田市羽場権現1172番地

T E L0265-22-6564
資本金300万円
売上高2億1000万円
従業員数 15人
http://www.yasaki.co.jp/

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