3分で読める「現場を変えた社長の一工夫」

ビジネスサミットOnline » 現場を変えた社長のひと工夫 » 障がい者雇用を “強み”に変える

製造 × 強い組織づくり 社員自ら仕事のやり方を改善する印刷会社
障がい者雇用を “強み”に変える

株式会社ニシキプリント

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

創業間もない時期から障がい者雇用を続けてきたニシキプリント(広島市)。障がい 者就労支援を目的とするサポートセンター(就労継続支援A型事業所)を立ち上げ、 本社と合わせて38人の障がい者を雇用している。障がい者を戦力として活かす成 功例として、官庁や企業からの注目が集まる。

障がいの有無に関係なく、互いに助け合う職場

「物心のつく頃には、健常者と障がい者が会社で一緒に働くのは、ごく普通のことでした」と語る、ニシキプリント(広島市)の宮﨑真社長。今年で創業50周年を迎える同社は、文字主体のモノクロ印刷・製本を得意とする印刷会社である。企業や官公庁の冊子・広報紙、大学の学術文献などを手掛けている。同社では現在関連する事業所(後述)に38名の障がい者を雇用している。

ハンディがある人を補助するのは当たり前。逆にハンディがあるからといって甘えたり依存したりすることもない。企業として利益を追求する上で、社員それぞれが戦力として会社に貢献することを目指し、自分の役割を全うし成果を出すという、雇用者・被雇用者の健全な関係を築いてきた。






障がい者の能力を引き出す

創業者である宮﨑氏の伯父、故・宮﨑忠氏が職業安定所の紹介で初めて視聴覚障がい者を採用したのは創業から6年後の1973年。今ほど障がい者雇用が広く普及していない時代だ。その社員は健常者に引けを取らない仕事ぶりで、会社に貢献した。その姿に心打たれた忠氏は、「職場においてハンディを感じさせることなく、その能力を発揮できる人は、企業にとって宝」という認識を持つ。以来同社は、障がい者雇用を社是のひとつに掲げてきた。

91年に労働省(現・厚生労働省)認定の重度障がい者多数雇用事業所として、本社から車で1時間ほどのところにある東広島市に東広島工場を設立。工場新設にあたり、忠氏は障がい者、健常者の区別なく"当たり前"の環境で働けるようにという考えから、2階建ての社屋にエレベーターを設置し、障がい者用トイレ、バリアフリーの床、広い通路を完備。社員22人のうち、障がい者14人の体制でスタートした。その後、変動はあったものの東広島工場では、10人の障がい者が操業時から継続して現在も勤務する。

東広島工場では、障害のある社員を役員(すでに定年退職)に登用し、障がい者と健常者間の意思の疎通を図ってきた。現場で働く、障がいのある社員自身の声を会社に伝えてもらい、それを社員教育に活かしてきた。

「サポートセンターめばえ」の社員に
よる封入作業。事業所外就労として、
ニシキプリントで作業を行う



働く意欲と技術がある人に職場を提供するという信念

忠氏から経営を引き継いだ宮﨑氏の父、潔氏(忠氏の弟、故人)も、障がい者雇用を継続した上で、さらに雇用環境の改善などに力を入れた。宮﨑氏は2001年に社長に就任。斜陽産業と言われる印刷業界で、生き残る道は険しい。仕事量が減り一般社員の確保も難しく、創業時から続けていた障がい者の雇用維持が困難な時期もあったが、創業者が目指した「働く意欲と技術がある人への職場の提供」という思いで、これまで取り組んできた。

13年、宮﨑氏は東広島工場内に就労継続支援A型事業所の「サポートセンターあゆみ」を、続いて翌14年、広島市西区に「サポートセンターめばえ」を開所。就労継続支援A型事業所とは、国の法律に基づく就労継続支援のための施設で、一般企業への就職が困難な障がい者と雇用の契約を結び、働く機会を提供するとともに、生産活動を通じて、知識と能力の向上に必要な訓練を提供する場である。


東広島工場内にある
「サポートセンターあゆみ」
外観

「あゆみ」で行っている業務は、ニシキプリント本社の印刷業務に付随する、パソコンを使った伝票処理や電話応対などの事務作業をはじめ、印刷物のデータ作成などのDTP作業、印刷物の発送に伴う宛名シール貼りや封入・封緘などの軽作業。「めばえ」では、知的障がいのある社員が、印刷物の封入・発送業務を担当している。今では知的障がいのある社員も活躍している同社だが、最初に「あゆみ」と「めばえ」を設立し、知的障がい・精神障がいのある人材を仕事仲間として受け入れる際には、身体障がい者雇用の土壌が根付いていた同社内でさえ、不安や反対の声が上がったという。

しかし間もなく社員皆、そうした不安が杞憂であることに気付いた。印刷した製品には何より精度が求められるが、枚数や冊数を数え、重さを量るといった一見、単調な作業に、知的障がいのある社員は真摯にていねいに対応した。作業に慣れてくると過信や慢心から数え間違いなどのミスが起きがちだが、一つひとつの作業に妥協せず取り組む彼らに任せると、むしろ精度はアップ。心配していたようなクレームもない。知的障がいのある社員の仕事の確かさに、それまで懐疑的だった健常者の社員たちは皆「とてもかなわない」「教えられた」と感嘆し、障がい者への見方ががらりと変わったという。

宛名シール貼りのずれを
防ぐための工夫として、
シールの位置が同じにな
るよう台紙を当てる

「できないならできるように教える。ていねいに作業する分、時間がかかるのなら、時間配分を含め調整する。障がいのある社員の能力を引き出し、仕事をスムーズに進めるための仕組みやノウハウを構築してフォローするのが他の社員の役割です。知的障がいのある社員と一緒に働くようになってから、仕事のやり方を自ら考える職場になりました」と宮﨑氏は語る。

宛名のシール貼りは、障がい者に限らず、誰もが同じ位置にシールが貼れるよう、位置を決めた台紙をつくる。シールの位置がずれるミスを防ぐには、ずれを防ぐ共通の手順やルールを考える必要がある。現場の作業に応じたこのような工夫は、仕事のやり方を根本的に見直すきっかけとなった。「あゆみ・めばえの2つのサポートセンターとニシキプリントは、互いの事業になくてはならないパートナー。ゆっくりでも確実に歩み続け、障がい者が自立できる支援体制を充実させていきたい」と宮﨑氏は言う。

同社では、創業の精神として「愛・信・恕」の三文字を掲げる。「人として相手も自分もいつくしみ、人としてお互いがお互いを信じ合い、人として最高の行為である恕し合う気持ちを持つ」という意味が込められている。この精神は半世紀にわたり、しっかりと同社の社員に根付き、成果として表れている。

社内には「愛」「信」
「恕」の三文字を収
めた額が飾られている




株式会社ニシキプリント 代表取締役社長 宮﨑真氏


「印刷業務の中にはDTPや校正、製本など、
障害のある人材の適性を活かせる業務が幾つもある。
適材適所で各自の持つ能力を戦力として活用している」







所在地 広島市西区商工センター7-5-33
TEL  082-277-6954
設立  1967年
資本金 5000万円
売上高 4億7200万円(2016年度)
従業員 36名
URL  http://www.nishiki-p.co.jp/

記事の絞込

■業種
■カテゴリー

業種

カテゴリー