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製造 × イノベーションによる成長 石川発 革新し続ける老舗企業
匠の技を活かした蒔絵アクセサリーが工房を支える柱に成長

漆工芸 大下香仙工房

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何十年、何百年という単位で事業を継続し地域経済に貢献している老舗企業は、その存在自体が地域資源といえる。しかし老舗企業といえども、押し寄せる時代の環境変化に対応できなければ存続することはできない。そのためには、時に、過去の成功モデルを否定する必要もある。伝統と革新が共存する石川県を舞台に、今を生きる「老舗企業」の時代の環境に対応し続ける”強さ”の神髄に迫る。

蒔絵の百年以上の伝統を現代のアクセサリーに

大下香仙工房は120年余りの歴史を持つ加賀蒔絵の工房である。10年前から蒔絵で培った技術やデザイン力を活かしてアクセサリーを制作し、それらの商品が今では実に70%を占める主力商品に成長。同工房の成長を支える原動力となっている。

アクセサリーのベースとなるのは白蝶貝や黒蝶貝といった天然素材。これに金粉や銀粉を蒔いたり、漆を塗り込んだりして絵柄を描いた後、丁寧に磨き上げ、チェーンなどの金具を組み合わせてネックレスや指輪、ピアス、ブローチなどに仕立てる。

「Classic Ko」というブランド名で展開し、年2回、それぞれ5~10種類の新作を発表している。熟練した職人の手で一つひとつ仕上げられていくアクセサリーは、現代のライフスタイルに合うモダンなデザインながら、アンティークジュエリーのようなシックな雰囲気を併せ持つ。

販路の中心は東京の伊勢丹新宿店、松屋銀座をはじめ、首都圏や関西圏の百貨店の催事や、セレクトショップなどでも販売している。徐々にブランドが定着してリピーターも増え、近年では出店を待ちわびた女性客が催事の初日にどっと押し寄せることもあるという。



蒔絵を施したアクセサリーは2万円台から。
天然素材を組み合わせて制作するので、
同じデザインでも一つひとつ表情が異なる




蒔絵を日常の暮らしに取り入れてもらうために

大下香仙工房では創業以来、主に棗などの茶道具に蒔絵を施す仕事を手がけてきた。しかし、茶道具の売り上げが減り、このままでは存続が危ぶまれるとの危機感から新事業への挑戦が始まった。器や照明器具など、さまざまな商品を試すなかで、気付いたのは「高価な商品の価値をさらに高める」という蒔絵の特性だった。

そこで同工房では、平成21年度に採択を受けた「活性化ファンド」(いしかわ産業化資源活用推進ファンド)を利用し、蒔絵を施した万年筆の制作をスタート。売り上げの30%を占めるまでに育っている。ただし、万年筆の場合は本体を自社で作ることはできず、修理にも対応できない。これでは自社ブランドとして展開するには限界があると感じ、取り組んだのがアクセサリーだった。

「ふだんの暮らしに蒔絵を取り入れてもらうにはどうしたらいいか。そう考えてたどり着いたのが、アクセサリーでした。アクセサリーなら蒔絵の工房が主導権を持って制作できますし、まだ見えていない蒔絵の未来をたぐり寄せられるのでは、と思いました」(大下香征専務)。

制作にあたっては、デザインはもちろん、サイズや重さ、金具の使いやすさなど、装身具としての機能性にも十分配慮した。現代の装いに違和感なく取り入れることができるよう、蒔絵を過剰に施さないようにし、蒔絵に合わせて高級感のある金具を採用したりするなど、試行錯誤しながらアクセサリーとしての完成度を高めていった。


天然の白蝶貝に、蒔絵や螺鈿の技術を駆使して
ブローチに仕上げる様子



活性化ファンドを活用し展示会に出展、販路開拓

アクセサリー事業の成長をサポートしたのが活性化ファンドだった。同工房では平成24年度に再び採択された活性化ファンドの助成金を活用してファッションとデザインの合同展示会「rooms」に出展。こうした展示会への出展が百貨店の催事への出店やアパレルメーカーからの受注につながっていった。

松屋銀座(東京)でのイベントに
出店時のディスプレイ





展示会を通じてジュエリーメーカーの人脈が増えたことも成果の一つで、アクセサリーに使う金具やパーツを供給してくれる協力企業の拡大に役立った。販促に向けては、ブランドの認知度をアップさせるため、助成金を使ってパンフレットやダイレクトメールなどの広報ツールを制作。

また、ブランドの持つモダンでシックな世界観をお客様に感じてもらうため、売り場にはフローリストの協力を得て植物を飾り付けるなど、ディスプレイにも工夫を凝らした。さらに、ブローチやペンダントの制作を体験してもらうワークショップを渋谷ヒカリエで開催するなど、蒔絵についての理解を深めてもらうための取り組みにも力を注いでいる。

他産地とのコラボや海外の市場にも挑戦

アクセサリー事業の可能性をさらに広げようと、他産地との連携にも積極的に取り組んでいる。その一つが山梨県の伝統工芸「甲州水晶貴石細工」とのコラボレーションである。水晶に蒔絵を施すなどして、これまでにない高付加価値のアニバーサリー・ジュエリーの開発を目指すもので、平成28年度の活性化ファンドにも採択された。

海外市場への挑戦も今後の目標だ。手始めとして、今年10月から半年間、パリ市内に開設されている日本製商品のショールーム「maisonwa」に蒔絵アクセサリーを出品。11月には大下専務も渡仏し、今後の本格販売を視野に協力者を探した。

さらに「将来的には地元にも、工房で作り手が作業する様子を見学し、伝統的な技術の良さを実感したうえで商品も購入してもらえるようなショップを整備したい」と話す大下専務。蒔絵の魅力が存分に発揮できる市場を求めて、これからも挑戦が続く。(編集協力/石川県産業創出支援機構)





「ただ置いておくだけでは売れない。世界観を演出して、
しっかりと説明することが重要」(大下専務)








Company Profile
漆工芸大下香仙工房
代表者 大下元行
創業 明治27年(1894年)
従業員数 6人
住所 加賀市二子塚町103-2
TEL 0761-77-5250
http://www.classic-ko.jp/

 

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