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製造 × 強い組織づくり 「ひとづくり」という顧客志向
年間200時間を未来に使う

水上印刷株式会社社

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歴70年の水上印刷株式会社は、斜陽といわれる印刷業界において売上高と利益率を伸ばし注目を浴びる。その職場は「日本一勉強する」を目標に掲げ、向上心あふれるスタッフたちの熱気に満ちている。

業績好調の背景には過去の「崖っぷち」があった
 
正社員、パート、アルバイトを合わせて365名の水上印刷株式会社が、「中小の印刷会社」に対する固定観念を覆すような快進撃を続けている。直接取引が100%で下請け仕事はせず、業界でもトップクラスの利益率を誇り、5期連続で最高売上をマーク。2014年には「国際市場の開拓に優秀な実績があり、ニッチ分野において高いシェアを確保し、良好な経営を実践している企業」として経済産業省が選定する「グローバルニッチトップ企業100選」に、オフセット印刷会社として唯一選ばれた。

このような業績について同社の河合克也社長は「自分たちの戦略が、お客様から高い評価をいただいている」と受け止める一方で「単発の打ち上げ花火ではダメ。お客様が成長するプロセスに中心的に関わり、ともに永続的に成長し続けることが理想です」と目標を高く掲げる。そうした信念は、デジタル化やIT化が進むなか「衰退産業」などとみなされがちな印刷業界において、勝ち残るための真摯な取り組みから生まれた。

 
 
「印刷だけでは先がない」視察先の英国にヒントを見出す
 
70年もの社歴を持つ水上印刷は、ピーク時で売り上げの約3割を占めた主力製品として、アナログカメラのフィルムパッケージを印刷していた。ところが06年頃にはカメラのデジタル化が進み、フィルムの需要が激減。「高品質を追求するだけの印刷業のビジネスモデルではダメだと皆が気付き始めた時代です。当社も売り上げの約3割が消えることに危機感をもちました」(同氏)。

ビジネスのヒントを求めて海外視察した英国には、顧客のデータベースの管理と販促物の在庫管理、配送までやっている印刷会社があった。「コンビニなら店舗面積だけでなく、タバコや薬の取り扱いの有無、ポスターを貼れる窓の枚数まで印刷会社が把握しているのです。そうした総合的なサービスを行う印刷会社の姿に触発され、マーケティングやデザイン、物流など、印刷の前後のプロセスまで引き受けることにしたのです」。

 
 
勝ち残りを賭けた「フルサービス」戦略
 
「外食、アパレル、コンビニ等、当社のメインの顧客が必要とされる販促活動の全般で『面倒なこと全てを引き受け』、フルサービスを行うことが当社の信条です」と語る河合氏。こうした取り組みにより同社の経常利益率は、印刷業の業界平均の5倍という。

「日本経済は縮小しているから高付加価値化を目指せとよく言われますが、ただ単価の高い印刷物を作っても、顧客のニーズに合わなければ売れない。当社は印刷物の単価を上げるのではなく、顧客と広い接点を持ち、より深く関わることでトータルの仕事量を増やそうとしています。他社が受注していたマーケティングやデザイン、製作した印刷物を店舗に届けるまでの配送といったサービスも提供します。今ではデザインの売り上げが1割、印刷は5〜6割、配送が3割くらい。とくに配送・物流が伸びています」。











ロジスティックセンター(上)多摩工場(下)










こういった「フルサービス」こそが、河合氏の考える「サービスとものづくりの融合」、つまり「お客様の視点に立ったものづくり、提案、価値の創造」である。「こうしたフルサービスを提供できる人材の育成こそが経営の土台」(同氏)とする水上印刷は、「日本一勉強する会社」というキャッチフレーズを掲げ「MICアカデミー」という教育部門をつくり、人材育成に取り組んでいる。

「会長である水上光啓の信念でもありますが、会社づくりはイコール〝ひとづくり〞。人を育てる会社が伸び、そうでない会社は伸びない。人は会社そのものです。スタッフには『全社員がディレクターになろう』と言っています。ディレクターとは、お客様のことをお客様以上に把握していて、全ての工程において主体的に指示ができる人。スタッフ全員がそうなれば、顧客の視点でのものづくりが実現すると思います」(同氏)。

 
「スタッフ自身による教育」で未来に投資する
 
水上印刷では就労時間の10%を未来への投資ととらえ、年間200時間の勉強を目標としている。130もの講座は、財務、マネジメント、物流など、多岐にわたる。この教育システムのユニークな点は、スタッフ自身が講師になり、互いに自分の専門分野を教えあうこと。これは講師の報酬を節約するためではなく、スタッフ自らが先生役になって他の人に教えることで、その分野の指導者としての経験を積んでほしいからだという。

「講師役がいちばん勉強するし、その分いちばん伸びますからね」と河合氏は断言する。講座を受け「マーケティング解析士」の資格を取得した工場スタッフが6割もいるという。「工場のスタッフがマーケティングの資格を取っても営業に行くわけではありませんが、『顧客のため』というマインドを持っていることは、単なる効率主義に陥らないものづくりをするために非常に重要なのです」。






全社のレベルアップのための学校であるとともに外部からのセミナー依頼にも対応している





同アカデミー内の「印刷大学」には、印刷の歴史から方式・種類・工程などの概要といった基礎教育を受ける「印刷技術基礎研修」を設け、外部からの研修依頼にも対応している。「当社の本業である印刷技術を担える人材は、自分たちで育成するしかない。主体的に技術を継承していく意義と義務があります」。以上のような人材育成・教育システムは、将来的なグローバル展開においても有益なはず、と同氏は考えている。

「発展途上国からの研修生を当社の印刷大学で研修させ、自国で印刷業を担ってもらうようなことも将来的にはありえます。昨年も政府の要請を受け、インドネシア、バングラデシュ、ベトナム、ミャンマーなどからの視察を当社で受け入れました」。印刷産業の日本国内での勝ち残りだけでなくグローバルな発展のために、同社の〝ひとづくり〞への期待はいっそう高まりそうだ。





水上印刷株式会社
代表取締役社 長河合克也氏
「正社員のうち女性は35%、異業種からの中途入社は約10%、少数ですが外国人メンバーも。多様・多彩な人材の集う革新的な会社を目指しています」








Company Profile
水上印刷株式会社
設立 1946年
資本金 1000万円
売上高 非公開
従業員数 365人
東京都新宿区西新宿5-14-3
03-3372-2431
http://www.mic-p.com/
 

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